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(回答先: 「財政」「円安」以外にない=短期デフレ脱却策−日銀議事要旨 [時事通信] 投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 19 日 20:43:26)
東京 2月19日(ブルームバーグ):「現状、短期間にインフレ率をプラスにする手段としては、大幅な財政出動か、為替誘導を考えざるを得ない」(何人かの委員)−−。19日に議事要旨が公表された1月の金融政策決定会合。政府・与党などから投げられたビーンボールまがいのインフレターゲット論に守勢一辺倒だった日本銀行が、久々に政府に対してモノを言い始めた。
この委員らは「財政・為替政策は財務省の所管であり、日銀単独で物価目標を定めてもクレディブル(=信認される)となり得ない」、「仮に国全体の政策として特定期間内のインフレ率のプラス転化を優先するのであれば、そのために政府がどのように財政・為替政策を運営するのかが示されることが重要」と指摘した。さらに注目すべきなのが、山口泰副総裁、植田和男審議委員、須田美矢子審議委員のいずれかとみられる委員が発した次の問題提起だ。
この委員は「仮に政府が『財政・為替政策も日本銀行にゆだねる』、『日本銀行のリスク資産購入によって生じる損失は政府が補填(てん)する』とした場合に、インフレターゲティングの是非をどう考えるか」という論点を提起。そのうえで「こうした問題を考えることは、海外の学界などからなおインフレターゲティング採用論が聞かれることに対し、われわれとしてどのような情報発信を行うべきかを考えるうえで有益だろう」と述べた。
財務省の深層心理
現実には、政府が日銀に財政・為替政策をゆだねることは考えにくいだけに、これはあまりに大胆な問題提起と言える。こうした声が日銀から出始めた背景には、財務省出席者が過去数回の決定会合で日銀に対して、為替介入で放出した円資金を日銀当座預金に積み上げる非不胎化や、長期国債買い切りオペの月2兆円への増額を提案するなど、一段の金融緩和を迫っていたことがある。
財務省をはじめ政府・与党がこのところ日銀への圧力を強めていたのは、国会の予算案審議中は新たな財政刺激策に言及するのはタブーのため、年度末を乗り切るためには金融政策頼みにならざるを得ない、という事情もあった。しかし、そこには、98年の日銀法改正で独立性を手にした日銀を再び支配下に置きたい、という財務省サイドの深層心理も見え隠れする。
興味深いのは、昨年12月の会合で、谷口隆義財務副大臣とみられる財務省出席者が要請した内容だ。国債買い入れの増額や上限の一時撤廃については「個人的」意見としているが、為替介入の非不胎化の要請についてはこの表現がなく、財務省の公式見解の形になっている。財務省としては、自分の商品である国債を露骨に買ってくれ、というのははばかられるので、副大臣の「個人的」意見という衣を着せたうえで、じわりと圧力を加えているわけだ。
統合政府と側面支援
問題は、為替介入の非不胎化という「公式見解」の方だ。金利のある世界では、円売り介入とともに日銀が当座預金残高を増やせば、銀行間市場に余剰資金が溢れて金利は低下する。しかし、ゼロ金利下で介入を非不胎化するということは、介入のたびに当座預金残高を増やす、つまり金融政策を為替政策の支配下に入れよ、と言っていることに等しい。「個人的」な国債の買い入れ増額要請とともに、日銀がそうした財務省の深慮遠謀を感じ取っても不思議はない。
1月の会合は、次期日銀総裁の人事と絡められ、インフレターゲット論がピークを迎えつつあったころだ。「政府が『財政・為替政策も日本銀行にゆだねる』とした場合」を前提とする問題提起は、こうした政府の圧力に対する反発、と読むこともできる。ただ、こうしたやり取りを単なる当局間のボールの押し付け合いとみるのは、やや過小評価の誹(そし)りを免れないだろう。
そもそも、海外の学界などでインフレターゲット論が根強いのは、政府・日銀を一体(=統合政府)とみなす経済学の考え方が背景にある。日銀はこのところ、植田委員(昨年12月6日のブルームバーグ・ニュース)、山口副総裁(1月24日付朝日新聞)、福間年勝審議委員(1月30日付東京新聞)と、立て続けに財政政策に対する「側面支援」の可能性を示唆している。
政府代表の「個人的」意見
1月の会合でも「不良債権処理や雇用対策のための財政支出は経済の硬直性を取り除くためのものであるのに対し、旧来型の公共投資は資源の再配分をむしろ遅らせる可能性がある」(ある委員)、「需給ギャップを埋めるための財政出動や減税が適切なやり方で実施されるとともに、これを金融面から支援することは政策オプションの一つとして考え得る」(別の委員)といった声が出た。
財政、金融の一体化、つまり統合政府に向かうことが不可避であるならば、中央銀行にとってはタブーだった財政の中身に対してもモノを言っていく必要がある、という判断が、日銀のなかから出始めたことには注目に値する。決定会合の議事要旨は従来、通常は眠気を催す議論の連続で、政策変更が行われたときだけ不自然に緊張感が高まる、というパターンを繰り返してきた。
1月の決定会合は政策変更がなかったにもかかわらず、珍しく緊張感に満ち満ちていた。対照的に、「個人的」意見を繰り返す政府代表。何度も「個人的」意見を繰り返すことが、政府代表の役割だろうか。竹中平蔵経済財政・金融担当相は「日銀はマネーサプライを増やせ」と繰り返すが、この会合ではそれへの反論も出された。真っ当な議論ができる政府「代表」の出席が待ち望まれている。
東京 日高 正裕 Masahiro Hidaka