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産業再生機構の社長になるべきか、大和証券SMBCに残るべきか−。清田瞭氏の悩みは深く、ハムレットの心境だという
産業再生機構のトップとして突如、浮上した大和証券SMBCの清田瞭(あきら)社長(57)。不振企業の生死を判定する「閻魔大王」の憎まれ役は、「財界の重鎮」が適任とされただけに、経済界も驚きを隠せない。一番ビックリなのは、ご本人のようだ。大和証券SMBCに出資する三井住友銀行の取引先を判定する場合もあり、「情実やインサイダー取引は大丈夫?」とうがった見方も出そう。総合デフレ対策の一翼を担う再生機構をとるか会社に残るか、悩みはハムレットの心境で深い。
産業再生機構は、国の総合デフレ対策に基づき、今春にも設置される「官民共同出資」の株式会社である。
金利減免などの経営支援を受ける貸付先企業のうち、再生可能と判断した企業について、非主力銀行などからその債権を買い取り、金融と企業の一体再生を目指す。
手順はまず、主力銀行と貸付先企業が一緒に再生機構に買い取りを申請する。判断は機構内に設置される産業再生委員会(再生機構の取締役3−7人で構成)が行う。買い取り資金は公的資金枠10兆円が使われる。
外資系アナリストは「再生機構に持ち込まれる企業は、取引銀行が再生の道筋をつけられなかった、いわゆる落第生」と前置きして説明する。
「自らの体力低下が著しい銀行がサジを投げた格好だけに、再生機構に買い取ってもらえればその企業はとりあえずセーフ。拒否されたらアウトで、破綻(はたん)の可能性も出てくる」
そんな再生機構の社長は、買い取り企業の選別を行う再生委員会の委員長も兼務する。だから、「閻魔大王」と揶揄(やゆ)される。
社長の人選は昨年11月からスタートし、当然ながら難航をきわめた。政府・与党側は財界からの人選を要請した。
「実業界でさんざん苦労した人が望ましい」(塩川正十郎財務相)
「企業再生の経験がある民間人がいい」(麻生太郎自民党政調会長)
対する財界側は「国務大臣が就くべき」(片田哲也日本経団連副会長)と主張し、「憎まれ役」を押し付け合った。
結局、政府・与党に押し切られる形で財界からの人選となったが、浮上してきた人物はいずれも財界の重鎮ばかり。
その1人が片田経氏(71)。コマツ取締役相談役でもあり、建機メーカーの印象が強かったコマツの事業多角化を成し遂げたほか、金融再生委員会(現金融庁)の委員なども歴任している。
藤井義弘・日立造船相談役(77)は、元三和銀行(現UFJ銀行)副会長で、造船不況で経営不振に陥った日立造船に派遣され、復活させた。
日立製作所の経営テコ入れにも携わった経歴の持ち主である。
このほか、経済同友会副代表幹事で産業再生に詳しい渡辺正太郎・花王特別顧問(67)、今井敬経団連名誉会長(新日鉄会長)(73)らの名前も次々と挙がった。
「いずれも財界活動が長い重鎮ばかり。いまさら、企業の生死を握る憎まれ役など引き受けたくない−というのが本音だろう」(財界筋)
そこで、企業再生ビジネスなどの経験があり、57歳と若い大和証券SMBCの清田社長に白羽の矢が立った。
政府が最終調整を進めているが、それにしても、なぜ清田氏なのか。永田町筋は解説する。
「何人かの財界の大御所に再生機構の社長就任を打診したが、強く難色を示された。そうした過程で、経団連の奥田碩(ひろし)会長が、大和証券グループ本社の原良也社長に持ちかけ、同じグループで企業再生を手掛ける清田社長が急浮上したと聞いている」
企業再生を手掛ける企業群のなかから、大和証券グループ本社に持ち掛けられた背景には、「うかがい知れない深い事情があるようだ」(金融庁関係者)という。
その清田氏は昭和44年に早大政経学部を卒業後、大和証券に入社。平成9年に常務を経て副社長となり、11年から現職。大和証券時代は債券の営業部門などを統括している。
大和証券SMBCは、持ち株会社の大和証券グループ本社が60%、三井住友銀行が40%を出資する証券会社である。
グループ内では、大和証券がリテール(個人)部門を、大和証券SMBCが社債発行や株式公開、企業合併のM&Aなどのホールセール(法人)部門を担っている。
「旧三井、旧住友系の企業を中心に強い顧客基盤を持っており、ホールセールの証券会社としては、国内第2位にランクされている」(金融アナリスト)という。
清田氏の起用を大和証券グループ内では、どう受けとめているのか。
グループ幹部は「清田氏を(再生機構社長に)起用する方向で最終調整しているという話はまったく寝耳に水だった。グループ内では、そのようなウワサすらなかった」と驚きを隠さない。
別の幹部は「もし清田氏を起用することになったら、大和証券SMBCにとって、マイナスに働く可能性がある」といってこう指摘する。
「産業再生機構が買い取った不良債権は、買い取り後3年以内に民間の企業再生ファンドなどに売却する段取り。企業再生ビジネスを手掛ける大和証券SMBCがこうした案件に絡めば、『インサイダー取引では』との批判を受けるのは目に見えており、商売がやりにくくなってしまう」
清田氏は、再生機構が買い取る企業を選別する段階でも大きな壁にぶつかる可能性がある。
「大和証券SMBCに40%出資する三井住友銀行の取引先企業が仮に、再生機構に買い取り申請された場合、選別をめぐって周囲からあらぬ疑いをかけられる可能性がある」(大手銀幹部)
清田氏もこうした不都合が生じる恐れがあることを危惧(きぐ)してか、「浮かない様子」(関係者)という。
難航の末、政府・与党や財界から指名されただけに、ムゲに断ることもできない。
先の金融庁関係者が証言するように、金融界には「大和証券グループの断れない深い事情」を指摘する声もある。
だからといって、再生機構の社長就任を引き受けると、大和証券SMBCの商売に少なからず影響する可能性がある。
「前門の虎、後門の狼」状態の清田氏。悩みはかなり深そうだが、さてハムレットの判断は?