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「勢い、もし使い尽くさば禍必ず至る」(古い日本の諺)。勢いがあるからといって調子に乗りすぎると、力は衰え、必ず転落せざるを得なくなる、という意味。今の小泉首相の姿が象徴的である。2003年に入って小泉首相の勢いは急速に落ちてきている。
第一に、首相個人に元気がない。2月12日の政府与党首脳会談に出席した与党幹部の一人は「どうしたんだろう。声が小さくてマイクがないと聞き取れなかった」と語った。小泉首相に何事にも消極的な姿勢が目立つ。
第二に、世論調査の数字が悪化した。2月8、9両日の共同通信調査では、小泉内閣支持率は前月より5.8%落ち48.8%になった。不支持率は1月より5.4%上がり36.2%。他の報道機関の世論調査も同じ傾向を示している。かつては最大の応援団だったテレビのワイドーショーも小泉首相に冷淡になった。新聞各紙も小泉批判を強めている。
第三に、ワシントンの小泉首相に対する空気が変わってきた。最近来日した米国の政府系研究機関で働く研究者は私にこう語った。
「ワシントンがポスト小泉を意識し始めたのは昨年の春頃。昨年6月に菅直人民主党幹事長をワシントンへ招待したのはポスト小泉の有力者の一人と見たからだ。しかし菅氏は民主党代表選で敗れてワシントンの信用を失った。次に招待したのは熊谷弘衆院議員(元官房長官・通産相、現保守新党代表)。熊谷氏は米政府高官と主として日本経済再生について突っ込んだ議論をした。熊谷氏が景気回復のために与党入りを決断したのはこの時だったようだ。さらに今年に入って自民党前政調会長の亀井静香衆院議員を招待。小泉首相はブッシュ大統領に大変忠実かつ従順であり、小泉内閣はブッシュ政権にとって非常に都合のよい内閣だが、頼りなくて長続きするとは考えていない。亀井訪米の結果、ワシントンは亀井氏の実力を認め、同氏をポスト小泉の有力候補者と見るようになった」
小泉首相は、ブッシュ政権のイラク攻撃を支持し、その戦費の一部をも負担することによって、ブッシュ大統領の信頼をつなぎ止めようとする。だが、この結果、小泉首相は日本国民の支持を失う。大多数の日本国民は米国の対イラク軍事行動に反対だ。
今、小泉首相の前には三つの壁がある。
第一は、03年4月からの医療費引き上げの凍結問題。医師会が立ち上がり、これに呼応して野党四党が凍結法案を提出。橋本元首相をはじめとする自民党の厚生関係議員が決起した。小泉首相・山崎幹事長体制は追い詰められている。
だが、この壁を乗り越えたとしても、この先にもう一つの壁がある。4月に行われる統一地方選と衆参統一補選だ。医療費問題はこれらの選挙の中心テーマになる。小泉首相の引き上げ路線の支持者が苦境に立つことは避けられないだろう。4月以降、小泉内閣支持率が急落することは不可避である。
第三の壁は経済の3月危機だ。不況はさらに深刻化し、倒産・失業は増大する。最近、マスコミ報道はイラク・北朝鮮問題のみに集中していて経済問題を軽視しているが、実はイラク・北朝鮮フィーバーの陰で不況は一段と深刻さを増しているのだ。金融界・産業界では、地方だけでなく中央においても小泉・竹中金融改革に対する怨嗟の声が充満している。企業家の間に「竹中金融相は日本の金融・経済の破壊者だ。竹中大臣を一刻も早く辞めさせろ」との声が広がっている。
だが、政界は経済情勢には鈍感だ。とくに野党第一党の民主党の若手議員が竹中路線を支持しているのは救いがたい経済音痴と言わざるを得ない。経済の実態を知らない議員があまりにも多すぎる。猛省を促したい。
小泉首相の勢いは衰退しつつある。三つの壁を乗り越えることは困難な状況だ。政策転換の時が近づいている。それができなければ九月末までに政局転換が起こるだろう。
【以上は2月15日付け四国新聞に「森田実の政局観測」として掲載された小論です】