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戦略的経営法務
第2回「時価会計と減損会計」
(弁護士・鳥飼総合法律事務所代表
鳥飼 重和氏)
最終更新日時: 2003/02/12
会計ビッグバンにより、すでに、金融商品に関しては時価会計が導入されている。固定資産に関しても、減損会計が導入される予定になっている。
グローバルな競争社会になっているとすれば、グローバルな会計基準の導入もやむを得ないともいえる。しかし、導入の時期をいつにするかは、日本自体における国策であると同時に、日本の経済状態は世界経済全体に影響を与えることを考えると、慎重にすべきである。
経済成長期に、時価会計や減損会計を導入しても、企業はダメージを受けない。経済成長期の金融商品の時価は上昇傾向にあり、貸借対照表の簿価より高いのが通常であるが、この場合には含み益が顕在化するだけで、経営を悪化させる要因にはならない。
また、固定資産についての減損会計に関しても、経済成長期であれば、土地等の時価も上昇傾向にあるし、固定資産からの将来予測のキャッシュフローも高く見積もれる。ここでも、企業は減損による債務超過に陥るおそれはない。むしろ、この段階での減損会計の導入は、企業の採算無視の土地等の固定資産への投資を適正に抑制してくれる機能を持つ。
いずれにしても、経済成長期に時価会計や減損会計を導入しても、経済全体に悪い影響を与えることは考えられない。しかし、土地等の価値は下落し、全体的に企業の収益が落ち込むデフレ期に、時価会計や減損会計を導入すると、企業ばかりか、日本経済自体に致命的な影響を与える可能性がある。
株価が下降し続けている時期に、金融商品に時価会計を導入すれば、企業は金融商品、特に、株式において評価損を出さなければならなくなる。しかも、日本の上場企業は株式の相互持合い構造を常態としていたため、各企業が保有する相互持合い株式の額は巨額であるから、時価会計による株式の評価損は巨額になる。
さらに、減損会計を導入すると、下落し続けてきた土地の時価と企業収益力の不十分なことから、固定資産の将来キャッシュフローの見積もりも小さくなり、その分、固定資産の帳簿価格を減損し、企業によっては巨額の特別損失を計上しなければならない。
特に、土地本位制で経済を動かしてきた日本が、経済全体にがたが来ているときに、従来の中枢の土地評価を抜本的に改める減損会計を導入すれば、債務超過企業を続出させることになりかねない。
ある意味では、デフレ期における減損会計の導入は、効率の悪い企業をあぶりだすことが出来るから、弱い企業の経営資源を強い企業に移転させることを可能とする。それは、日本全体から見れば、日本における経営資源の適切な配分につながり、日本の国際的競争力を回復する妙薬にもなりえる。
反面、減損会計の導入の時期の悪さからして、倒産企業を不要に増加させ、その分、金融機関の再建もままならず、かえって、デフレの循環に陥る危険もある。減損会計の導入は仕方がないとしても、その導入の時期及び減損会計の運用には、慎重であってほしいものである。