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大手銀再び窮地、会計士が大甘査定ノー 「税効果会計を厳格に監査」の通牒 [株ZAKZAK]
http://www.asyura.com/2003/hasan21/msg/627.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 12 日 16:14:01:


メガバンクに、また難問。竹中路線に合わせ、自己資本の税効果会計について、日本公認会計士協会が厳格監査の異例の会長通牒を出す
 外資も頼りに、やっと国有化回避策の資本増強にメドをつけたのに再び、大手銀行が再び大窮地−。「自己資本の水増し」批判が強い税効果会計に関し、従来の大アマ査定が「ノー」と言われそうなのだ。日本公認会計士協会は銀行の監査法人に対し、異例の「会長通牒(つうちょう)」を出し、大手銀の平成15年3月期決算を監査する際、税効果会計資産を厳格に監査し、過剰に資本計上しないように求める。資本政策の仕切り直しは必至の情勢で、UFJホールディングスによる「世界のトヨタ」、三井住友フィナンシャルグループによる親密取引先への追加増資要請に発展する可能性も出てきた。

 「税効果会計」は、会社が支払った税金が将来戻ってくることを想定して、あらかじめ「繰り延べ税金資産」として自己資本として算入することができる制度である。

 赤字決算となるなど経営状態が悪化する大手銀行は、本来は1年分の算入しか認められない。

 だが、13年度の金融庁による特別検査などの「やむを得ない理由」で赤字に陥ったとされているため、5年分の算入が認められている。大手銀の自己資本のうち、2−3割が繰り延べ税金資産で占められている。

 ただ、銀行の経営不振が低金利やデフレ不況のマクロ的な要因に加え、高給やリストラ、ビジネスモデル転換の遅れなど経営の未熟さに起因していることは明らか。

 このため、「税効果会計を5年分も認めることは、自己資本の水増し、カサ上げではないか」(金融アナリスト)との指摘がある。

 この批判を受け、金融審議会(首相の諮問機関)は、繰り延べ税金資産を自己資本の10%以下に制限する方向で検討に入っている。審議会メンバーの主流は10%以下に傾いているという。

 日本会計士協会は金融審議会に歩調を合わせる形で、繰り延べ税金資産の算入期間を合理的に見積もるように徹底する方針を固め、算入期間が2−3年に短縮される可能性が出てきている。

 大手銀は「奥山章雄会長名の会長通牒が出されれば、大方の監査法人が指示に従い、銀行への監査は厳しくなる」(都銀幹部)と戦々恐々だ。

 大手銀に吹きつける逆風はこれだけではない。昨年末の4大メガバンクの株式含み損は、低迷する株価の影響を受けた結果、3カ月前より約1兆4000億円も増えて、約3兆6000億円に達した。

 このままの株価水準が続くと、15年3月期決算で自己資本がさらに目減りして、銀行経営が窮地に追い込まれる。

 公的資金による金利負担の上昇も銀行にとっては難問である。

 大手銀が国から受けた公的資金は、3月までに償還しないと金利負担が一気に重くなる規定になっており、「公的資金は少しでも早く返済したい」(大手銀幹部)という状況になっている。

 みずほホールディングスは、公的資金のうち3500億円、UFJは2500億円を今年度中に返済する方針。三井住友FGも、2000億円を償還することにしている。

 だが、公的資金を返済すると当然、自己資本が減少することになる。

 株価低迷や公的資金返済の逆風に、税効果会計の厳格監査まで加わると、「国際業務が認められる自己資本8%のハードルをクリアできなくなる可能性もある」(大手証券)との見方もある。

 そうなると、世界レベルのメガバンクを標榜(ひょうぼう)する大手銀にとって、「公的資金の再注入−国有化」という耐え難い屈辱が待ち受けることにもなる。

 そこで、大手銀は「決死の覚悟」で、増資による資本増強に躍起となってきた経緯がある。

 子会社の地銀・わかしお銀行を存続銀行とする合併や、あおぞら銀行の買収といった奇策に手を出す三井住友FGは、米証券大手のゴールドマン・サックスに年利4.5%もの高配当を払うことと引き換えに1500億円の出資を取りつけた。

 さらに、親密な取引先を中心に1000億円規模の増資を検討している。

 米大手証券のメリルリンチから約1000億円の出資を受け入れるUFJの場合、トヨタグループへの500億円規模の出資要請を一旦は取り下げていたが、再度増資に出る可能性も出てきそうだ。

 公認会計士協会の会長通牒を待たずして、すでに監査法人から通告を付きつけられたみずほの場合、約8000億円の繰り延べ税金資産の資本計上の放棄を発表している。

 この結果、約2兆円もの赤字を抱え、前代未聞の1兆円増資を打ち上げざるを得なかった。

 取引先や第一生命など親密生保だけでは賄いきれず、メリルリンチから1500億円の出資を受け入れる方向で最終調整しているとされる。

 みずほ、三井住友FG、UFJの3グループは、「国有化されるぐらいなら、外資に頼る方がまし」というなりふり構わない姿勢で、巨額増資に取り組んできた。

 だが、増資計画の発表後も、銀行株の大幅な上昇はみられない。

 金融庁は金利の水準や、主力銀行の立場を利用した圧力的な増資要請がなかったかなど、増資計画の適切性を点検する方針を公表する始末だ。

 要するに決死の覚悟で資本増強に臨んでも、「本当に銀行経営は大丈夫か」という市場の疑念は一向に払拭(ふっくしょく)されていない。

 結局、メガバンクのうちで余裕があるのは、3500億円を公募増資で調達することを決め、竹中平蔵経済財政・金融担当相から「こういう動きが広がってほしい」と評価された、「独り勝ち」の三菱東京フィナンシャルグループのみ。

 その三菱東京FGでさえ、株価上昇につなげられないのが現状だ。

 税効果会計の妥当性をめぐる論議は、銀行経営に向けられる「不信の土壌」が背景にある。

 竹中担当相と劇薬コンビを組む日銀OBの木村剛氏によるハードランディング路線が吹き荒れた昨年10月以来、大手銀行に突きつけられた「最大の課題」である。

 昨年は、大手銀のトップ7人が異例の共同記者会見を行うなど大逆襲に出て、「問題先送り」の結果を引き出すことに成功したが、金融庁と公認会計士協会によって外堀は埋められつつある。

 金融庁の「恐怖の特別検査」も再び始まり、税効果会計の厳格査定が前進して、大手銀の本当の経営状態が明らかにされる「審判の時」が近づいているともいえる。


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