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東京 2月10日(ブルームバーグ):3月の年度末を前に、株式市場では金融機関からの持ち合い(経営安定化のために株式を保有し合う仕組み)解消売りなど、相場全般の上値を抑える売り圧力に警戒感が強まっている。特に今年は、2004年に公的年金の財政再計算が行われる関係上、年間を通して年金制度改革の動きが継続するとみられ、その一端としてすでに事業会社などは、これまで国に代わって管理、運用してきた厚生年金の代行部分を国に返上するため、保有株式を現金化する動きを加速。市場の新たな懸念として浮上しつつある。
市場関係者の間では、株式の売却規模は最大で3兆円との見方も出ており、国内外景気、企業業績の不透明感で積極的に買い上がる投資家が見当たらないだけに、こうした現金化の動きが今後も継続すれば、株式相場の需給環境の悪化に拍車を掛けることは必至だ。
信託銀が売り越し転換
株式市場で、代行返上売りへの警戒感が強まったのは、東京証券取引所が毎週公表する投資主体別売買動向で、年明けから信託銀行の売り越し姿勢が鮮明化したことがきっかけだった。株式相場が下落基調を強めた際、公的年金資金の買い支え観測が折に触れて広がるが、これらの資金は信託銀行を通じて市場に流入するとみられており、安値圏では信託銀が買い越すという見方は市場関係者の一致したところだった。実際、日経平均株価は昨年5月27日に高値1万2081円を付け、その後12月末の8578円まで29%下落したが、信託銀は昨年6月から12月まで7カ月連続で買い越し、買い越し額は1兆7900億円に達している。
昨年11月から12月にかけては年明け以降の証券税制変更に伴い、個人投資家が処分売り姿勢を強めた。個人は2カ月で9000億円という大量の売りを出したが、信託銀はこれを吸収する貴重な買い主体であった。 しかし年明け以降はその構図も一変。6日に発表された1月月間の統計では、信託銀は1447億円の売り越しと、持ち合い解消主体の長銀・都銀・地銀の 1027億円、生損保の765億円を抑えて金融機関では最大の売り越し幅を記録。こうした動きを、コスモ証券の佐藤博商品部長は「下期3兆円とも言われる持ち合い解消売りが2月に入ってから一気に出てくる可能性が高く、現金化を迫られるファンドマネジャーとしては、売れる時に前倒しで売っておきたいと思って当然」と解説した。
代行返上が進む背景
厚生年金基金連合会の公表によると、基金数は今年1月末現在で1695。これに対し、国内格付け機関の格付け投資情報センターの調べでは、昨年4月から今年1月までに代行返上の認可を受けた基金数は321件に上った。連合会が昨年10月に調査したところによれば、基金全体の約30%が代行返上を検討しており、今後も認可を受ける基金数は増えつづける可能性が高い。 そもそも代行返上が可能になったのは、昨年4月1日に確定給付企業年金法が施行されたため。これまで企業の厚生年金基金は、厚生年金の一部を国に代行して管理、運用してきたが、これは「一体化することによるスケールメリットが生かせたため」(東海東京調査センター・中井裕幸投資調査部長)だった。しかし株式市場の低迷や金利低下など運用環境が悪化し、景気不況の影響で企業の収益成長力も低くなるなかでは、予定利率に達しない部分は企業側が穴埋めしなければならず、企業にとってはむしろ代行部分が経営上の大きな負担となっている。
こうした実態を受けて法改正が昨春実施されたが、現在返上できるのは、今後積み立てなければならない将来分のみ。過去分に関しては、今年4月にも公布される政省令でルール化され、現金あるいはTOPIX連動のインデックス型での現物物納が可能になるもようだ。現在株式市場で起こっているのは、こうした将来分を現金化する動きが中心とみられるが、メリルリンチ日本証券の菊池正俊シニアストラテジストは「3月末を控えて株式保有リスクを負いたくない事業法人などが、株式売却を依頼している面はあるようだが、本格的に加速するのは夏、秋以降」との見方を示す。 また、東海東京調査センターの中井氏も「現在凍結されている特別法人税の2003年度以降の取り扱いや、過去の返上に関する実務の詳細が決まっていないため、まだ代行返上に動くことを決めた企業は少ない。しかしルールの詳細が明確になれば、代行業務返上に踏み切る企業年金の数は、さらに増加してくる」と指摘している。
最大で3兆円
大和総研が試算したところによれば、代行返上に伴う現金化の売り圧力は、最大で3兆円に達する可能性がある。すでに代行返上の認可を受けた基金の資産総額は10兆円と推定され、このうちの半分が代行資産として国に返上され、資産構成比率に従って売却されると仮定すると、1兆5000億円が売却規模となる。一方、厚生年金基金連合会の調査では、基金全体の約30%が返上を検討していると言われ、1月末段階の321件から500件以上に実施基金が増加した場合、1兆5000億円のほぼ倍の規模が売却されるとの見方だ。
すでにこれらの一部は、法改正を受けて代行返上の第1弾が起こったとみられる昨年5月から6月、そして昨年末から今年初にかけて顕在化した部分もあるようだ。市場では「足元は代行返上売りが過大に懸念され過ぎている面があるように感じられる」(メリルリンチ証券の菊池氏)との声もあるが、売却規模の試算を行った大和総研投資戦略部の壁谷洋和氏は「既認可分に対応する売りの多くが、3月末までに顕在化する可能性は否定できない。本体企業にしてみれば、返上で得た特別利益を失わないためにも、株式での運用リスクは極力抑えたいところであろう。今後の株価上昇による利益機会を放棄してでも、損益を確定させたいという意向が優先される可能性はある」とみる。
トヨタ株にみる代行返上売りの痕跡
新光証券の瀬川剛エクイティストラテジストは、代行返上売りの対象となっている代表銘柄として、日本を代表する製造業で、TOPIXに占める時価総額ウエイトで上位のトヨタ自動車株式の動きに注目している。
トヨタの1月の前日比騰落を勝ち負けで示すと、4勝15敗。昨年末を基準としてTOPIXとトヨタ株を比較すると、TOPIXがほぼ横ばいの状態となっているのに対し、トヨタは下落傾向が続き、騰落率の格差は1月24日に直近最大の8.5%(TOPIXは2.1%上昇、トヨタは6.4%下落)に達した。
こうした動きについて、瀬川氏は「ポートフォリオの売りがおう盛であった局面」と分析。そのうえで、代行返上の第1弾があったとみられる昨年5月から6月にかけての株価動向との類似性を指摘する。
投資主体別売買動向でみると、信託銀行は昨年5月第2週から6月第2週まで6週連続で総額約5300億円を売り越した。昨年5月末を基準に、この間のトヨタ株とTOPIXの騰落率を比較すると、騰落率格差は6月11日に8.9%(TOPIXは1.8%上昇、トヨタが7.1%下落)に拡大した。
市場では騰落率格差が昨年の水準に近づいたことで、売りもそろそろ最終局面との見方が出ているものの、「持ち合い解消、年金代行返上売りが出てくると言われるものを買うことはない」(ちばぎんアセットマネジメント・大越秀行運用部長)との声も根強く、こうした時価総額上位の優良株にとっては、厳しい局面が続きそうだ。
東京 院去 信太郎 Shintaro Inkyo、山崎 朝子 Tomoko Yamazaki