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株式市場が大西洋の両岸で下落している。世界経済の鈍化、下落するドル、イラクでの軍事紛争の可能性の高まり、が原因である。英国のFTSE100は10日続落して3603と、7年ぶりの低水準に落ち込んだ。欧州の株式市場も6年ぶりの安値に近づいている。米国の株価は、欧州ほど弱くはないものの、ダウ平均が2000年に付けた市場最高値から29%、ナスダックが73%の落ち込みとなっている。「戦争の脅威と弱い経済とが株式市場を覆う暗い雲となり、不透明感を高めている。投資家は何よりも不確実を嫌うのだ」と全米投資協会会長ケン・ヤンケは語っている。
米欧株式の3年連続の下落に今年は終止符が打たれることを期待していた世界の投資家も、積みあがったキャッシュを社債や貴金属へと振り向け始めている。90年代にはほとんど忘れ去られていた資産であるコモデティ(商品)が数年来の高値をつけるなか、突然の投機熱が高まっている。金価格は6年ぶりの高水準である。最近の統計では、米国のマネーマーケット・ファンドに眠るキャッシュは2兆7000億jと、記録的高水準に達している。
あらゆる企業は厳しい投資環境に、設備投資のカットで対応している。多くのセクターが依然として、過剰設備を抱えており、企業は格付け改善のため、借金返済を急いでいる。これは、企業収益改善の足かせとなるだろう。だが、多くのアナリストは依然として今年20%といった大幅増益を予想している、とステートストリートグローバルアドバイザーのクリストファー・ウッズは指摘する。
メリルリンチは本当に価格決定力を持っているのはエネルギーと医療保険の分野の企業だけだとしている。企業部門は依然として、40年ぶりの財政刺激にほとんど反応していない。ホワイトハウスは、配当課税減税を含むブッシュの景気対策が株式市場を7%押し上げると試算するが、景気対策の発表を受けて、期待感からそれまで上げていた株価は反落した。国民はブッシュ減税は金持ち優遇と捉えており、ウォール街もブッシュ減税案をそれほど歓迎していない。配当課税廃止に企業は戸惑っており、それによる地方政府の配当課税税収の急減という逆効果を懸念する声も高まっている。
ヨーロッパでもアメリカと同様に、経済の悪化と金融市場の不透明感が高まっている。ドイツ経済は停滞し続け、ユーロ高や欧州安定協定の財政赤字制約はさらにドイツ経済の重石となっている。イングランド銀行は住宅バブルをさらに刺激することになることを懸念して、製造業者が要求している利下げを躊躇している。イギリスの株価は英国債に対して、67年以来初めて割安の水準となっているが、投資家はこれを買いのシグナルとはみていない。投資家が株式市場に戻るには、イラク危機の早期解決、あるいは一段の債券利回りの低下といった材料が必要なようだ。昨年25%も上昇した住宅価格もまた、英国株式市場の頭を抑える要因である。過去3年、消費は世界経済を下支えしてきたが、住宅価格の下落、あるいは失業の増大かをきっかけに、家計が消費をカットすれば、世界経済は景気後退に逆戻りしかねない。
イラク戦争の結果も世界の株式市場の見通しを左右する要因である。国連のイラク査察報告とブッシュ大統領の一般教書を控えていたことが、今週の株価乱高下の一つの理由である。株式市場にとってのベストシナリオは、もちろん早期の戦争終結である。これが達成できなければ、すぐに株式市場が上昇に転じる見込みはほとんどない。あるファンド・マネージャーが今週いみじくも語ったように、20世紀における最高の株式のリターンを上げた年は、大恐慌後の1933年であった。この年に米国の株価は54%上昇した。これは投資家にとっては魅力的な考えだが、逆に1964〜81年の17年間、S&P500株価指数は横ばいだった、という経験則もある。株式投資家は歴史が良い方向で繰り返すことを希望することができるだけであろう。
(英フィナンシャル・タイムズ1月24日)