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X-Day + 0day 0hour 5min.
午後二時を過ぎたあたり、見積書を一通り仕上げ終わったところで、携帯が小さく震えた。
開けると狙っていたA商会の株がどうやら売ろうと思っていたラインに達したようだ。そのままブックマークを切り替える。先月までは端末に証券会社のクライアントが常駐していたのだが、「私用でのネットワーク利用禁止について」なんて同報メールが全社に回ったのでは仕方ない。面倒だがコイツに頼るしかなぁ。
『この銘柄については、お取り扱い出来ません。詳しくはコールセンターにご連絡下さい』
へ?
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超近未来小説 「失速の日」
この小説はあくまでフィクションです。誰が言おうとええフィクションですとも。
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X-Day + 0day 0hour 15min.
ほどなくコールセンターのお姉ちゃんが電話に出た。
『A商会でございますか?』
「うん」
『午後2時をもちまして売買停止となっております。理由については「子会社の事業に株価に重大な影響を与える事態が生じたという報道があったため、事実確認のため売買を確認が出来るまでの間停止」とあります。当社でも現在調査中ですので』
「はぁ?」
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X-Day + 0Day 4hour 0min.
夕方のTVニュース
「スクープです。『この機械を接続するだけで、携帯電話が掛け放題になる』というサービスを開始すると発表して話題になっていたP社が、実はサービスを行える見込みもないのに加入者を集めていた詐欺商法であることが確認出来ました、東京、内幸町のNTT前から原田記者、お願いします」
「原田です、当番組ではこの会社のシステムに疑問を抱き、NTTに確認を・・・」
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X-Day About - 4month.
都内某所での会話
「是非とも私どもに投資をしませんか?」
「しかしウチは再建中ですし・・・」
「これからは通信事業です。御社と我々が手を取り合えば・・・」
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X-Day About - 3month
東京証券取引所記者クラブ「兜クラブ」書類箱
「・・・新株引受権を、某投資会社に無償で提供することになりました。行使価格は一株あたり**円となります」
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X-Day About - 10Week
租税回避地(タックス・ヘイブン)某投資会社
「支払いを始めて良いと判断します」
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X-Day + 0Day 6hour
都内某所
「俺の財産紙くずかよ・・・」
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X-Day About - 11 Week
都内某所
「どうするんだ! このままだと我が社は倒産だぞ!」
「押し切るしかありません、社長」
「え?」
「とりあえず我が社は決算を乗り切ることが先決です!」
「全く・・・あんなビジネスモデルに乗っかったのが悔やまれる・・・」
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X-Day About + 2 Week
都内某警察署会議室
「で、代理店の契約書と営業資料がこちらですね?」
「はい」
「ではこれで聴訴に必要な情報は頂きました。調書をこれから作成しますので2時間ほどお待ち願えますか? 署内でお待たせするのは何ですので、準備ができ次第携帯電話でお呼びしたほうが宜しいですかね?」
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X-Day + a Day AM 9:05
ラジオたんぱ
『先日報道のあったA商事ですが、やはりストップ安で推移しております・・・』
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X-Day about - 1 Week
都内某所・電話
「こちら**法務部です。当社の電話機に接続するアダプターを開発中とのことで、適合検査のために技術情報の開示を頂きたいのですが?」
「はぁ、開示頂けませんか」
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X-Day - 1 Day
都内某所、P社本社、某放送局テレビクルーと
「カメラ回りま〜す!」
・・・・
「社長、つまり御社ではこの技術を利用することで回線利用料を固定化出来ると仰られるわけですか」
「はい、自信を持ってそう断言します」
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X-Day + about a month
テレビニュース
『先日来詐欺商法として報道致しましたP社とその親会社であるA商事について、警視庁生活安全部と証券取引等監視委員会はそれぞれ書類送検ならびに証券取引法に基づく告発を東京地検に行いました。東京地検では本件を「重大な事件」と認識し、特捜部所属の検事に捜査指揮にあたらせるとの発表を・・・』
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X-Day + about ? month.
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::::: \ 社長の両腕に冷たい鉄の輪がはめられた
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\::::: _ヽ __ _ 外界との連絡を断ち切る契約の印だ。
ヽ/, /_ ヽ/、 ヽ_
// /< __) l -,|__) > 「刑事さん・・・、俺、どうして・・・
|| | < __)_ゝJ_)_> 手錠かけられてみたい・・・何ていっちゃったのかな?」
\ ||.| < ___)_(_)_ >
\| | <____ノ_(_)_ ) とめどなく大粒の涙がこぼれ落ち
ヾヽニニ/ー--'/ 震える彼の掌を濡らした。
|_|_t_|_♀__|
9 ∂ 「その答えを見つけるのは、お前自身だ。」
6 ∂
(9_∂ 社長はハァハァ声をあげて泣いた