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98年以降、マクロ経済全体で見て、名目賃金の下落が確認されるようになった。ただ、BNPパリバ証券会社・経済調査部チ−フ・エコノミストの河野龍太郎さんは、こう指摘する。「名目賃金の下方硬直性が取り除かれたといっても、調整スピードは依然として緩慢であるため、ゼロインフレやデフレ下では、実質賃金の伸縮的な調整は難しい」。プラス・インフレ率の下では比較的スムーズに行える実質賃金の引き下げが、 ゼロインフレやデフレの下では困難になるため、小さなショックが加わるだけで、 日本経済は簡単に低成長、あるいはマイナス成長に陥る。統計データを見ると、ゼロインフレやデフレは、その害悪が顕在化してきた90年代後半以降だけでない。「それ以前の90年代前半から日本経済の停滞の要因であった可能性が高い」
<景気低迷下、10年間で実質賃金は累計で11%も上昇> 1986年〜2001年での名目賃金と実質賃金の推移をみると、90年代後半(96年〜2001年)には、名目賃金上昇率は年率マイナス0.1%まで抑制されたが、物価は同0.9%下落したので、実質賃金は同0.8%の上昇になっている。この結果、「91〜2001年の10年間で、実質賃金の上昇は累計で11%にもなった」と言う。景気が低迷し、労働生産性の伸びが鈍化しているにも関わらず、二桁で上昇している状況は、「企業収益を著しく圧迫するだけである」と言う。このことが、企業による設備投資が本格回復に至らない原因の1つになっている。
<実質賃金の高止まりは、高失業率を持続させる> 98年以降、マクロ経済全体で見て、遂に名目賃金の下落が確認されるようになった。では、名目賃金の下方硬直性が取り除かれた日本経済は、実質賃金がスムーズに調整されるようになっただろうか? 生産性に見合う水準に実質賃金を抑制できれば、企業は雇用を維持しつつ収益を上げることができる。雇用を増やす企業も出てくるだろう。しかし、河野さんは、「今の雇用情勢を見れば、『賃下げ』によって事態が改善しているとはとても思えない」と言う。既存の企業の大半はデフレによって相対的に高い賃金となった労働者を多数抱えているため、新規の採用を抑制、場合によっては削減する。景気回復局面でも失業者はなかなか職を見付けることはできないし、新卒者は就職先を見付けることができない。それが、「経済全体で高い失業率が持続する原因になる」と言う。