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ロンドン 2月5日(ブルームバーグ):どんな商売でもそうだが、仕事の場で赤裸々な真実を語ることは賢いことではない。資産運用会社スレッドニードル・アセット・マネジメントのサイモン・デービーズ最高経営責任者(CEO)には、この微妙さが分かっていなかったようだ。
同氏の言動は今週、ロンドンでちょっとした波紋を起こした。金融街のバーではよく聞かれる話だが、通常、勤務時間中に耳にすることはない発言をしたからだ。同氏は、顧客である投資家を「愚か者」と呼んだのだ。
同氏は英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「人間は愚かな判断をするものだ。3年前にはハイテク株を買いまくり、今は不動産市況のピークに大きな家を買っている」と語った。さらに、ファンドマネジャーが投資家の愚行をあおったことは認めながらも、「火種は既にあった。われわれは水をかける代わりにちょっと油を注いだだけ。火事の元は個人投資家のどん欲さだ」と、自分たちの責任を認めようとはしなかった。
想像に難くないことだが、この前代未聞の正直さは、平凡な市民の愚かさを擁護するのが仕事である消費者団体の逆鱗(げきりん)に触れた。「何様だと思っている」と消費者協会が突き上げれば、「あきれ果てた」と何人かのファンドマネジャーがこみ上げる笑いを押し殺しながら調子を合わせる。
慌てたデービーズ氏は、こんな場合のお手本通りに、発言がねじ曲げられ誤解されたと弁解した。本当は、お客様は一人残らず第一級の頭脳の持ち主と信じていますというわけだ。
もちろん、同氏は恐らく、多くの投資家の知能レベルは低いと思っているし、彼の同業者の多くもそう思っているだろう。
大きな罰
この騒動について、次の3点が指摘できる。@デービーズ氏の言う通り、投資家の大半は愚かであるAファンドマネジャーがそれを認め始めたということは、彼らがひどいストレスに悩まされていることの表れであるBデービーズ氏は失言をした。
ここ10年の市場を見てきた人なら、人間の愚かさについて語ることに不自由はしない。投資家はバブルに踊ってインターネット株や通信株をばかげた高値にまで押し上げた挙句、相場が底を打とうとしている今、株を捨てて不動産や債券にカネを注ぎ込んでいる。
多くのファンドマネジャーは、自分の力の及ばない出来事について大きな罰を受けている。ストレスがたまることだろう。正しい判断力を失う者が出てくるのも無理からぬことだ。
そうではあるが、デービーズ氏の発言は愚かだった。たいていの人間は、物を買うときに合理的な判断をしてはいない。速い車を買えば女性にもてるとか、洗剤のメーカーを変えれば子供が服を汚さなくなるとか、投信を買えば金持ちになれるとか、そういう願望を込めて買うのだ。
かなわぬ願望
しかし、車や洗剤を買うときの願望がかなわないのと同様に、投信を買ってもウォーレン・バフェット氏のように投資で儲けて大金持ちになることはできない。投資家がファンドマネジャーに対してせいぜい期待できることは、相場上昇時に財産を増やしてくれ、下落時には財産の目減りを最小限に抑えてくれることくらいだ。
ただ、この事実を投資家に告げるファンドマネジャーは愚か者だ。顧客の「どん欲さ」や「愚かさ」を口にするのはもっと愚かだ。そんなことを正直に言ったところで得られるものは何もなく、失うものは大きい。(マシュー・リン)
(リン氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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