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ロンドン 2月3日(ブルームバーグ):英国の豪華客船タイタニック号の乗客は、新しい船で胸躍る処女航海に出るものとばかり考えていたはずだ。乗っていたのが今にも沈没事故を起こしそうな船だったことが判明したのは、数年が経過してからだった。自分の置かれた状況は終わってみなければ分からないというのは、歴史的事件の多くに当てはまる教訓だ。
この3年間、銀行家や投資家は、株式相場がインターネット・バブル後の調整局面にあると考えてきた。だが今月は、市場参加者の多くが2000―2003年の大弱気相場に入っているという結論を出すことになろう。欧州株式相場は1 月も低迷が続き、ダウ欧州株価指数は6%下落。構成600銘柄の株式時価総額は年初来で約3500億ユーロ(約42兆円)減少した。
こうした株価相場を理解するには、歴史をひもとく必要があろう。英有力シンクタンク、国民経済社会研究所(NIESR)はこのほど、今回の弱気相場と1970年代の弱気相場を比較したデービス英ブルネル大学教授の研究を発表した。その結果を見ると、酔いもさめるような内容だ。それによると、株価はさらに下落する可能性があり、実質ベースでの株価回復には10年を要するかもしれず、そして過去3年間の弱気相場は金融の世界を根底から覆してしまうという予測が示されている。
悪化はこれから
1972―1975年の3年間と比較すると、2000年以降の弱気相場はさらに悪化の恐れがあることが分かる。FT100種指数は2000年の水準から約半値に下落し、ダウ工業株30種平均も過去3年間で3割強値下がりした。1972−1975年の株式相場は、英仏伊で約8割、米独で約6割の大幅下落を演じている。
確かに、今の世界は1970年代よりも健全に見える。今われわれは対イラク戦争の問題に直面しているが、30年前は中東紛争に加えて、原油相場の激しい変動やブレトンウッズ体制崩壊による為替相場の混乱、ベトナム戦争、米ソ間の緊張の渦中にあった。
それでもデービス教授は、2つの弱気相場は類似していると分析する。だとすれば、株式相場が2000年の水準を回復するには極めて長い時間が必要になることを意味する。1970年代の株式相場は、弱気相場入り前の水準に比較的早く戻った。英国株は1977年9月までには、1972年8月の高値を回復したし、米国株は1980年10月に1972年12月の高値に戻している。
インフレの10年
しかし、1970年代はインフレの10年でもあった。このため、価格を実質ベースで考えれば、株式相場の回復はもっと時間がかかったことになる。実質ベースでみると、英国株の回復は15年後の1987年5月、米国株の回復は21年後の1993年8月となる。
一方現在は、物価安定が続く見通しであるため、株式相場がインフレに救われる可能性は低く、相場回復は10年以上先の2015−2020年までは多分なさそうだ。
デービス教授はまた、過去3年間の株価下落が金融市場を根本的に変革するだろうと指摘している。1970年代の弱気相場入りは、個人投資家の後退と年金などの機関投資家の台頭をもたらした。現在も、個人投資家が株式市場から引き揚げているが、今回は年金や生命保険の資金も一緒に退散し始めている。わずかに残った買い手はヘッジファンドだが、株式市場に永久に残る勢力に成長するかどうかは不透明だ。
この点だけは、まず間違いがないだろう。前回の弱気相場が金融市場の構造を根本的に変えたのだから、今回もそうなる公算が大きい。(マシュー・リン)
(リン氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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