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約2兆円赤字、1兆円増資を発表したみずほの経営改善策。約8000億円の税効果資本計上が見送られ、前向きと評価されたが、実はこの裏に監査法人の最後通告があった
約2兆円もの巨額赤字を出し、1兆円増資を取引先などに要請したみずほフィナンシャルグループ。3月期決算を前にした国有化回避の自己資本増強策だが、お目付け役の監査法人から「資本を充実させないと、決算でハンコを押せない」と最後通告を突き付けられていたことが31日、分かった。その結果、みずほは自己資本の計算法である税効果会計への約8000億円の資本計上を見送った。竹中プランを先取りする前向きな経営改善策には、実はそんな裏があった。「幻の資本」との批判もあるなか、自己資本への大幅計上を見送る動きが他のメガバンクにも広がりそうだ。
みずほは今月21日、第一生命や安田生命など親密取引先や外資系金融機関などを対象に、国内企業では過去最大の1兆円増資を柱とする経営改善策を発表した。
2003年3月期に、不良債権処理の加速による処理損失が約2兆円に拡大、最終赤字が国内企業最大の1兆9500億円に達する見通しとなったことに伴う措置。
併せて、今下期の不良債権処理で生まれる税効果会計(繰り延べ税金資産)資本に約8000億円の資本計上を見送った。
発表資料には大略、「金融再生プログラムの趣旨を踏まえ、一層の財務の健全性を図る観点から、繰り延べ税金資産の財務上の計上については、約8000億円の放棄を行う予定です」とある。
「国際業務の自己資本比率8%割れ−公的資金注入」で銀行国有化も企(たくら)む竹中平蔵金融・経済財政担当相の意向を受け、金融審議会で税効果会計の見直しが始まった。
貸出資産の米国流厳格査定「ディスカウント・キャッシュ・フロー」(DCF)導入に加え、約8000億円の資本計上の見送りは、昨年10月に公表した竹中プログラムを先取りした前向きな改善策と受け止められた。
だが、金融庁幹部は今回の資本充実策の衝撃的な「裏側」を明かす。
「資本の質を高めるため、自ら進んで税効果資本の資本計上を見送ったように受け取られているが、実際は違う。監査法人に『資本を充実させないと今期決算でハンコを押さない』といわれ、見送らざるを得なくなったのが本当のところだ」
みずほを担当する新日本監査法人に事実確認をすると、予想通り、「会計士法の守秘義務があり、個別クライアント(顧客)のことについてはお答えできません」(広報室)との回答だった。
銀行は融資先の破綻(はたん)などでカネが回収できなくなる事態に備え、貸し倒れ引当金を積む。一定の枠内であれば税金がかからないが、一定枠を超えた部分は利益とみなされ、法人税などを払う。
この時に払った税金は、破綻などで回収不能となり、損失確定時点で損金となり、銀行に戻ってくる。引当金を積んだ時に納めた税金のうち、将来、回収不能で戻ってくる可能性が高い部分は、先取りで自己資本に組み入れることができる。
これが「税効果資本」である。計上額には制限があり、向こう5年間に見込まれる納税額の範囲内となっている。
ところが、銀行が税効果資本を過大に自己資本に組み入れ、資本が「水ぶくれ」状態にあるとの批判が強い。
金融担当アナリストは「銀行が収益見通しを甘くして、向こう5年間の納税額を多く見積もれば、それだけ多く税効果資本を計上できる」と前置きして解説する。
「不良債権処理の加速や株安で赤字に転落する銀行が続出するなか、非現実的な収益見通しを立てて、税効果資本を過大計上する銀行も多い。向こう5年間ではなく7年間分を計上していた銀行もあったと聞く」
そうまでして税効果資本を過大に自己資本に組み入れ、資本を水ぶくれさせる背景には、不良債権処理加速と自己資本比率のBIS(国際決済銀行)基準クリアという2つの要因が絡み合う。
別の金融アナリストは説明する。
「大手銀行の2002年3月期決算をみると、本業のもうけである業務純益が約3兆円なのに対して、不良債権処理損失は2倍以上の約8兆円におよぶ。もうけで補えない部分は、自己資本を取り崩すなどして対応するしかなく、大手行の自己資本は大きく目減りすることになる。今期も、金融再生プログラムの実施によって処理損失は大きく膨らむとみられる」
「それでも、大手行はBIS規制の8%を維持しなければならない。それには自己資本比率を計算する際の分母である(リスク)資産を減らし、分子の自己資本を増やすしかない。リスク資産の代表である融資や保有株式を減らす一方、税効果資本を過大に計上しているのはそのためだ」
ちなみに、4大銀行グループの中核的自己資本(Tier1)に占める繰り延べ税金資産の割合は、昨年9月末時点で、こうなっている。
三井住友が58.1%、UFJ54.1%、みずほ50.8%、三菱東京34.9%。三菱東京を除く3グループは、中核的な自己資本の半分が税効果資本になっているのだ。
金融再生プログラムでは、自己資本の「水ぶくれ」「カサ上げ」状態を改善するため、税効果資本の自己資本への算入上限を速やかに検討することが盛り込まれた。
監査法人についても、銀行への厳正な会計監査に加え、主要行で税効果資本が厳正に計上されているか厳しくチェックするよう求めている。
みずほが監査法人から資本の充実を迫られ、自己資本計上見送りに至ったのは、プログラムの趣旨が監査法人に浸透した結果である。監査法人の動きについて、金融庁幹部がこう指摘する。
「企業破綻で監査法人が責任追及を受ける可能性も高い。監査法人としては、やみくもな生き残り策を模索する銀行と命運をともにする気はないということだ。監査法人も狭い世界だから、他の監査法人も同じような行動に出て、税効果資本の計上見送りに追い込まれるメガバンクが出てくる可能性が高い」
税効果資本による自己資本のカサ上げが難しい状況になれば、自力で資本調達するしかない。各メガバンクが外資系金融機関からの増資に動いたのもそのためである。
三井住友が米ゴールドマンサックスから約1500億円の増資を受け、UFJは新設する不良債権分離会社に対して米メリルリンチに約1000億円出資してもらう。
みずほも内外の投資家に計1兆円ほどの増資を要請。海外の要請先としては「JPモルガンやシティバンクといった名前が取りざたされている」(永田町関係者)。
最大の注目点は、外資系金融機関から資本を受け入れた後、経営の主導権がどうなるか。
金融庁幹部は「外資に主導権を奪われる可能性が最も高いのは、みずほとみている。三井住友は、まあ大丈夫だろう(経営の主導権を奪われずに済むのでは)という見立てだ」と指摘する。
監査法人に強く背中を押され、いち早く資本充実に動き出したみずほだが、正念場はまだ続く。