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インフレ目標反対で、「責任逃れの大ウソつき」と批判が高まる日銀の速水優総裁(左上)。野中広務氏(右下)や古賀誠氏ら抵抗勢力の思惑も絡み、政争の具と化す
デフレ不況対策で論議を呼ぶ「インフレ目標」に、速水優総裁自ら強硬反対の日銀。エコノミストの間で「名ばかりの『通貨の番人』。責任逃れの大ウソつき」と批判が高まる。ホンネは金融政策の誤りを認めることになり、財務省の尻拭(ぬぐ)いもイヤなのだという。反対の狼煙(のろし)を上げる自民党の抵抗勢力の狙いも積極財政にあり、政争の具と化す。失業と給与カットにあえぐ庶民の悲鳴が聞こえないのか、問題を先送りすると、1ドル=100円割れの超円高で日本崩壊も絵空事ではない。
「副作用が大きく、無謀な賭けだ」と速水総裁が導入を否定し続けるインフレ目標策だが、意外に知られていない事実を紹介しよう。
深刻なデフレ下での初導入になるかどうかはともかく、先進国でインフレ目標を金融政策の基本に置いていないのは、日本と米国だけである。
英国やニュージーランド、スウェーデン、韓国などで消費者物価指数の上昇率を一定の幅に押さえ込むことが中央銀行に義務付けられている。
ユーロ圏でも、ECB(欧州中央銀行)が採用している。
米国も、FRB(連邦準備制度理事会)のグリーンスパン議長らが「デフレ懸念が払拭(ふっしょく)できないなら、量的緩和を行う。日本のようにはならない」と明言する。
米格付け会社ムーディーズは「インフレ政策は長期的に格付けにプラス」とコメント。インフレ目標は奇策ではなく、『日本の常識は世界の非常識』というのである。
エコノミストの間で有力なのが、1−3%のインフレ目標を設定し、日銀は長期国債を買ってインフレ率を上昇させるやり方だ。量的緩和の結果、円安も期待できる。
クレディスイスファーストボストン証券チーフエコノミストの岡田靖氏はこう説明する。
「デフレ下では企業業績が低迷して失業が増え、消費も伸びない。景気が一層低迷する悪循環となる。ゆるやかなインフレに戻す必要がある」
速水総裁は、すでにゼロ%の物価上昇率を目標に量的緩和していると豪語する。「できるだけのことはしており、これ以上の手段はない」というのが持論である。
岡田氏は「統計の歪(ゆが)みでゼロインフレを達成しても、実際には1%程度のデフレとなるという実証がある。日銀のエコノミスト自身も発表していること」と否定する。
「日銀がこれ以上やることがないとは、全くの大ウソ。毎月3兆円の新発国債が出ているが、日銀が買っている国債は毎月1.2兆円。まだ買う余地はある」とも。
反対派はインフレなど起こせないとする一方、インフレが止められなくなるとも主張する。
だが、岡田氏は「ハイパーインフレが起きるのは、終戦直後のように生産力が破壊されたり、南米のようにマネーが地下に流れて徴税できない場合のみ。インフレが進めば、日銀は国債を売ったり、預金準備率を上げるなど金融の引き締めを行えばいい」と断じる。
それでは、日銀がかたくなにインフレ目標導入を拒むのはなぜか。ある金融関係者が語る。
「インフレ目標で景気が回復すれば、バブルをつぶして90年代の不況をもたらしたことや、平成12年8月のゼロ金利解除など、過去の金融政策の失敗が白日の下にさらされる。財政政策を失敗した財務省の尻拭いをしたくない−というのもホンネではないか」
自民党内でもここにきて、抵抗勢力の野中広務元幹事長や古賀誠前幹事長、麻生太郎政調会長、堀内光雄総務会長、宮沢喜一元首相らから反対論が広がり始める。
市場では「金融政策ではなく、積極的な財政政策で公共事業をバンバンやりたいのがホンネでは」との見方も広がる。
狙いは180度違う自民党と日銀の利害が一致したのか…。
インフレ目標賛成派の中心は、自民党の山崎拓幹事長である。
昨年末、任期切れを3月に迎える日銀総裁の次期候補に、インフレ目標推進派の中原伸之元東燃会長が急浮上するなどムードが盛り上がった。
背後には、国債乱発でこれ以上借金を増やしたくない財務省の思惑も透けてみえるが、市場は「本気でやる気があるのか」と懐疑的である。
メガバンクのみずほが1兆円増資に踏み切り、三井住友も配当利回り4・5%の優先株を米ゴールドマン・サックスに引き受けてもらうなど、国有化回避で資本増強に躍起となる銀行の厳しい経営状況は変わらない。企業の業績も伸び悩む。
「結局は3月末の株価対策。平均株価9000円、うまくいけば1万円まで上げて年度末を乗り切れば、ウヤムヤにする気では」(市場筋)と、口先介入が本音とみる。
竹中平蔵金融・経済財政担当相もインフレ目標に積極的だが、「責任を日銀に押し付けている」と批判もある。
経済オンチの『丸投げの殿』小泉純一郎首相は、賛成か反対かの以前に、問題を理解しているのか大いに疑問が残る。
思惑が交錯し「政争の具」と化すインフレ目標策。問題先送りで何とかなるのならいいが、深刻なのは米国経済だ。
イラク攻撃も絡み、前出の岡田氏は「4月以降、急速に悪化する懸念も捨てきれない」とする。
景気悪化の兆しが見えれば、米国は前述の通り、思い切った金融緩和に踏み切るとみられる。
「円が吹っ飛び、1ドル=100円を割り込むこともありうる。そうなれば、今度こそ『日銀は株でも土地でも何でも買え』ということになりかねない」(大手銀幹部)
皮肉にも、インフレ反対論者が恐れる最悪の事態を招くことになる。
次期総裁に有力候補の1人で日銀OBの福井俊彦氏が就任した場合、速水路線が踏襲され、とてもインフレ政策など取りそうにない。岡田氏は「だからこそインフレ目標政策をやらせる必要がある。最大懸案のデフレ克服ができない場合、ニュージーランドでは中央銀行総裁は国会に辞表を提出しなければならない」と言う。
財務省が高いインフレ率で国の借金をチャラにするつもりでは、との危惧(きぐ)もある。
「『インフレ連動国債』を大量に発行させれば、インフレ率が高まると配当負担も大きくなるので、歯止めがかけられる」
政治判断で実現は可能だとも指摘する。
「極端な話、インフレ目標は家の床下に何億円も現金を貯(た)めこんでいるような大金持ちにカネを使わせようという政策で、全部の物価が上がるわけではない。デフレのままでいいというのは、失業者を切り捨てた利己的な考え方だ」
デフレ下で得をするのは、大金持ちや原則的に給料が下がらずクビにもならない役人だけ。庶民のための政策は何か。小泉さん、新日銀総裁になる方、よく考えて。