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外資頼みの増資や地銀との合併など奇策も駆使して、国有化回避に奔走するメガバンク。再編・淘汰の激流に沈みそうなゼネコンなど不況3業種。安易な救済が予想される産業再生機構…。深刻なデフレ不況に庶民が悲鳴を上げるなか、3月期決算がヒタヒタと迫る。銀行は国有化され、大型倒産はあるのか。大手民間信用調査機関の論客2人が混迷を極める日本経済の現状を分析する。
熊谷勝行氏
●銀行国有化の第1号は出るか
論客とは帝国データバンク情報部部長の熊谷勝行氏と、東京商工リサーチ情報事業統括本部本部長補佐の荒谷紘毅氏。
日本再生の最大のカギを握る「銀行の行方」から分析を始めると−。
金融庁が来月から大手銀行への特別検査に入る。流通、ノンバンクも含めた不況3業種や過剰債務企業への大アマ査定が発覚する恐れがある。
みずほグループの1兆円増資などにみられるように、不良債権処理の増額や、米国流の厳格査定も一部導入され、資本増強で引当金の大幅積み増しも計画されている。
荒谷紘毅氏
メガバンクは自己資本比率を10〜9%台で維持し、国際業務に必要な8%割れはないとみる。
だが、特別検査で大幅な不良債権処理が発生すれば、「自己資本不足→公的資金注入→実質国有化」という最悪のシナリオが待ち受ける。
国有化銀行第1号は誕生するのかしないのか。熊谷氏はこう見る。
「みずほが持ち株会社の上に持ち株会社の屋上屋を架した。三井住友が地銀のわかしお銀行と合併したり、あおぞら銀行も買収しようとしている。銀行はいま、高配当が経営を圧迫する巨額増資や外資の導入など、やり過ぎなくらい。問題はそれが成功して、公的資金を回避できるかどうか。正直読み切れない」
有力地銀の国有化も十分にあるといわれるなか、荒谷氏も大手銀行に国有化銀行が出るか否かについて、「予想しきれない」との立場をとる。
「3月金融危機説」も流れるなか、直近では特別検査の結果が、次いでゼネコンなどの3月期決算がそのカギを握る。
竹中平蔵金融・経財担当相のハードランディング路線によるプログラムが強引に推し進められた場合、両氏とも「国の資金が投入されたり、頭取など役員の解任もありうる」と否定はしない。
「竹中さんは、米国や韓国経済の成功例から同じ手法をやろうとしている。1980年代に米国が行ったハードランディングはものスゴく、七百数十社の中小金融機関をつぶし、背任で1000人規模の経営者を逮捕した」
「ただ、それが日本に当てはめられるかは疑問だ。日本はドラスティックな変化に向かない。影響は米国の比ではなく、立ち直りにも相当な時間を要するだろう」
●産業再生機構は機能するのか
5月から過剰債務を抱える不振企業の再生が目的の産業再生機構が動き出す。適用第1号として西武百貨店などの名が取りざたされる一方、銀行の不良債権「飛ばし機関」との見方も強い。
熊谷氏はズバリ、その危険性を指摘する。
「企業再生は名ばかり。銀行の不良債権を国の財政に移し、銀行の財務健全化が目的ともうかがえる。再生機構という迂(う)回路を通し、何でもかんでも税金で銀行を救済するなら、大変なモラルハザードだ」
荒谷氏のほうは「銀行と企業のナアナア体質を立ち切る役目はある」と一定の効果を認める。
「産業再生機構に行くというのは、いわば手術台に乗るようなもの。いままで銀行と密室の中で救済されてきた問題企業が、みんなの見ているところで治療されるということ。衆人環視で下手なことはできない」
その一方で、「こんな問題もある」とも。
「再生機構行き企業の経営陣は当然、総退陣となるのだろうが、その後を継ぐ者がいるのか。日本に日産のゴーン社長のような人材が何十人もいるとは思えない」
「2つめは再建見通しがたった後で、その企業を買う日本の企業があるとも思えない。となると外資の格好の標的になる。再生機構はいわば、外資に買ってもらうためのショールームとなりかねない」と言い切る。
●激動の再編劇
かつて青函トンネルなどを手掛けた準大手ゼネコンのハザマが、建設部門と不採算部門の不動産部門に会社分割する分社化の道を選択した。
昨年10月にフジタがとったのと同じ手法で、今秋までに「グッド」と「バッド」の2つに分断されるとみられる。熊谷組も同じ方向のようだ。
ハザマに引導を渡したのは、主力行のみずほコーポレート銀行。不良債権処理を加速させ、2867億円(昨年9月中間期決算)もの連結有利子負債を抱えるハザマを見切ったというのが大方の見方である。
三井住友系列の熊谷組も、同じ会社分割の道をたどりそうである。
熊谷氏は「ゼネコンを支えようにも、銀行自体に体力がない。中堅以下のゼネコンはつぶし、準大手組は借金棒引きも含め、銀行主導での分離・分割による救済は今後、一層増えるのでは」
「再編・淘汰の流れはもっと激しくなる」と予測するのは荒谷氏。
「銀行は過去に、借金棒引きなどをして、過剰債務ゼネコンを延命させてきたため、企業数の過剰状態が解消されず産業自体が再生していない。国土交通省も『これではダメだ』と相当な意気込みで、いい部分だけ残し、後はリストラと注文するなど本腰を上げ始めた。今回ばかりは、血を流してでも大胆な再編にもっていくだろう」
●倒産企業は2万件突破しない?
平成14年の全国倒産件数は1万9458件。昭和59年に記録した過去最悪の2万841件に迫った。
市場には「不良債権処理の加速により、銀行の体力いかんで2万件突破も十分ある」(外資系証券)との声も根強い。
だが、荒谷氏は「大企業の破綻(はたん)は起きるかもしれないが、大台突破はない」と断言する。
「大台突破で困るのは政府。世間では『そら見たことか』と小泉純一郎首相の経済政策を非難するだろう。決定的なダメージになりかねず、政権が吹っ飛びかねない」
「1000億円もの有利子負債を抱える大企業と、1億円の負債がある1000社の中小零細企業のどちらかを法的処理(倒産)しなければならないなら、大企業の方を整理するはず。零細でも大企業でも1社は1社だから」
熊谷氏も大台突破を否定する。「企業が手形決済を控えるなど、リスク管理を徹底し始めたせいか、連鎖破綻がさほど起こらなくなった。マイカルの場合も納入業者がバタバタいったりはしなかったのも、それが背景にある」。手形取引の回避が1要因と分析する。
今後の先行き、明るい話題については、両氏とも「探そうにも探せない」。「3月危機」まで、あと2カ月。カギを握るのは特別検査。固唾(かたず)を飲んで見守るしかないのか。
ZAKZAK 2003/01/29