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「敢えて天下の先とならず」(老子)
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「先頭に立とうとせず、謙虚に生きるべし」という老子の教えである。老子は自分自身には三つの宝がある、と言った。一つは「慈愛」、二つは「倹約」、三つは「天下の人々の先頭に立たないこと」
老子の教えはこうである。「人をいつくしむからこそ、勇気が生まれる。控え目だからこそ、窮まることがない。人の先に立たぬからこそ、人を指導することができる。もし、いつくしみの心を持たずに、ただ勇のみをこころざし、控え目な態度も知らずに、ただ無窮のみを願い、退くことも忘れて、ただ人に先立つことのみを考えるなら、結果は破滅するのみだ」(徳間書店刊『中国の思想Y・老子・列子』p.107 より引用)
小泉構造改革には恵まれざる人々への「いつくしみの心」が欠けている。勝者の利益のための「改革」である。強大国アメリカの巨大金融資本に奉仕する反国民的改革である。
小泉構造改革には控え目な態度がない。ただがむしゃらに突進するのみである。
小泉構造改革は、なにがなんでもアメリカに次ぐ世界第二の経済大国の地位を維持したいという無謀な願望を実現しようとする非現実的な「改革」である。
このことを改めて考えさせてくれたのが、『中央公論』2003年2月号の西村吉正早大教授の「『日本人』を値下げしよう」と題する一文である。西村氏はかつて大蔵省銀行局長として住専国会で野党の追及の矢面に立たされ、毎日のようにテレビの画面に登場した人物である。西村教授はこう書いた。
「『失われた90年代』以降われわれが直面している課題は、せっかく過大評価をしてくれているのならば歯を食いしばってでもそれに見合うよう実力を高めるか、肩の力を抜いて実力相応の経済・社会のあり方を探るか、の選択である。構造改革路線は前者であり、このような考え方は国民を鼓舞する正論である。私がここで付け加えたい視点は後者であるが、読む前に敗北主義と切って捨てられないよう気をつけなければならない」
西村教授の表現はじつにデリケートである。「肩の力を抜いて実力相応の経済・社会のあり方を探る」などといえば「切って捨てられる空気がある」と言っているのである。
しかし、小泉構造改革のねらいが、日本を高度成長によって達成された経済大国の地位をなにがなんでも維持しようとする野心的で無謀な試みであることを、大多数の国民は知らない。知らないまま小泉首相の威勢のよい雄叫びに乗せられている。小泉構造改革は背伸びした非現実的な道である。小泉首相は日本国民を誤った道に導こうとしている。
だが、日本にはもう一つの生き方がある。われわれ日本人は過去の栄光の夢を追うのではなく、現実を冷静に直視し、実力相応の生き方を追求すべきである。この方向への改革が、正しい道なのである。
小泉改革は、日本の経済・社会を強者と弱者、勝者と敗者に二分化し、強者と勝者だけが世界の強者・勝者に互してやっていけるようにしようというのだ。日本国を東京と地方に二分化し、地方の犠牲の上で東京中心の政治経済運営を行おうとしている。弱者と敗者の犠牲の上で、勝者・強者だけがアメリカ的グローバルスタンダードのもとで生きていこうとしているのである。このためには日本型「和」の社会を破壊し、日本を階級社会に再編成しようとしている。これは間違った道である。
安定した経済・社会にとって大切なのは調和である。中央・東京と地方、大企業と中小零細企業、強者と弱者、勝者と敗者の対立ではなく、調和をはかることである。
アメリカ的グローバルスタンダードの信奉者は、日本のことを「敗者天国」「勝者地獄」だというが、これは日本に対する甚だしい誤解である。
日本でも勝者と敗者との差違は存在する。問題は、敗者を切り捨てて正常な社会生活ができないようにするか、敗者に復活のチャンスのある社会か、ということである。
日本の優れた伝統や風土まで捨ててしまうようなアメリカ的グローバリズム万能の小泉改革ではなく、日本全体の「値下げ」によって今日の苦難を乗り切る道を考えるべきであると思う。直接的には円を安くすることである。西村教授の提言に謙虚に耳を傾けたいと思う。
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★ 日本の身の丈と言えば、15兆円もの経常収支黒字を計上し、世界最大の債権国家であることからわかるように、けっこうなものです。
日本は、自分の力を自分のために活用する能力に欠けているだけです。
森田氏の反グローバリズムには同意するが、小泉改革へのアンチテーゼが、「日本全体の「値下げ」によって今日の苦難を乗り切る道を考えるべきであると思う。直接的には円を安くすることである」では、自分の力を自分のために活用することはできません。