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国内の航空運賃を上げるかどうかで大手航空会社と国土交通省がもめている。空港の着陸料が上がった分を転嫁せざるをえないとする航空会社に対して、国交省は「企業努力で吸収できる」として、値上げを４月から２カ月間延期させた。値上げをするなら、理由を航空界の競争激化に変更するよう求めている。このデフレ時代、なぜ値上げなのか。（市川裕一）
国交省は０３年度、大阪（伊丹）空港の着陸料を３３％（３０億円）引き上げるほか、羽田着の地方路線や地方の２７空港で実施している着陸料軽減措置を見直し、計８０億円を実質的に引き上げる。着陸料は航空会社にとって、航行援助施設利用料や航空機燃料税と並ぶ公租公課の一つ。０３年度政府予算案では、空港整備特別会計の歳入の２割にあたる９４５億円の着陸料収入を見込んでいる。
当初、国交省は伊丹の値上げを表明、「年１００億円近い騒音対策費を利用者に負担してもらいたい」と説明していた。しかし、航空会社の反発を受けた国交省は、伊丹の値上げ幅を圧縮し、着陸料の値上げ対象を羽田などにも広げた。
値上げの本当の目的は、１兆２０００億円の有利子負債を抱える関西空港支援だといっていい。関空会社には０３年度から、着陸料値上げ分にほぼ相当する年９０億円の補給金が支払われる。扇国交相は「関空救済だけの着陸料値上げではない」と説明するが、国交省幹部は「８月末の政府予算概算要求後に支援策を追加するには、着陸料値上げで財源を確保するしかなかった」と明かす。
成田、関西、中部の国際３空港民営化を検討していた国交省は、３空港の土地を公的法人が横断的に保有する「上下分離案」を推し、成田に関空の借金の一部を肩代わりさせるつもりだった。ところが、航空会社などから「世界一高い成田の着陸料が下がらず、民営化も遅れる」と反対され、昨秋、断念した。関空のツケが成田の代わりに航空会社に回された形だ。
●行政指導も示唆
着陸料値上げによる負担増は、ＪＡＬグループ（日本航空と日本エアシステム）と全日本空輸で、それぞれ年約４０億円。ともに「合理化は限界」として、利用者に転嫁する考えだ。
昨年末、全日空は普通運賃のみを５％（平均１２００円）値上げする方針を打ち出した。扇国交相は「着陸料値上げ分は航空会社の総コストの０．３％。企業努力で吸収できる」と批判。普通運賃だけの値上げには「特定客の差別的取り扱いの可能性がある」と行政指導もちらつかせた。
●約束がネックに
これを見たＪＡＬは年明け、割引運賃も含む広範な運賃を平均１００〜２００円値上げする方針を固めた。しかし、ＪＡＬは経営統合の際、普通運賃１割値下げと３年間据え置きを公正取引委員会に約束したことが足かせになっている。
今月２０日、ＪＡＬは値上げを６月に延期し、２カ月間は自助努力でコスト増を吸収すると譲歩。全日空も追随する方針を明らかにした。国交省幹部は「着陸料のコスト増より、運賃値下げ競争による減収の方が経営を圧迫している」と指摘する。０２年度上期の大手３社の平均運賃は１万３８８３円で、前年同期を８４０円下回った。減収分は３社で年約７００億円。
米国のイラク攻撃が始まれば、国際線を中心に客離れが起き、それを値上げ理由にするのではないかとの観測もある。
◆競争が進んでも着陸料は世界一
認可制だった国内航空運賃は、００年から届け出制になった。航空会社は原則自由に運賃を決められる。例外的に、特定客を優遇、冷遇する運賃などには、国交相が変更命令を出せる。全日空の普通運賃だけの値上げ方針に扇国交相がかみついたのも、そのためだ。
規制緩和に詳しい中条潮慶応大教授は「欧米では規制緩和の結果、普通運賃と割引運賃の格差は広がった。国交省が口を挟むべきではない」と批判する。
内閣府の調査によると、日本の国内線普通運賃は欧米に比べ安いが、最も安い割引運賃で比較すると日本の方がまだ高い。
一方、着陸料の高さは恐らく世界一だ。航空会社でつくる定期航空協会によると、平均運賃に占める公租公課の負担割合は日本の羽田−札幌便が２３％。米国の首都ワシントン−アトランタ便の約２倍だ。
この１０年間の公共料金の推移をみると、競争が進んだ固定電話通話料は１７％下がったが、ダム建設などの公共事業費の影響を受けがちな水道料は２６％上がった。航空運賃はほぼ横ばいだ。規制緩和で競争はそれなりに進んだが、着陸料などの公租公課が航空会社には重荷になっている。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。