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金融政策運営に関する委員会の検討の概要・日銀政策決定会合
<12月16、17日>当面の金融政策運営については、大方の委員が、経済金融情勢に大きな変化はなく、金融市場も全体として落ち着いていることを踏まえ、金融市場調節方針を現状維持とすることが適当である、との見解を示した。多くの委員は、今後、企業金融や金融市場の動きに細心の注意が必要である、と付け加えた。また、ひとりの委員は、これほど短期間に当座預金残高が20兆円程度に到達したのは、短期金融市場が緊張している現れでもあるとして、警戒感を示した。
日々の金融調節については、何人かの委員が、これまで同様、「15〜20兆円程度」というレンジの上限を目指すことでよい、と発言した。さらに何人かの委員は、金融市場において流動性需要が高まる場合には、調節方針の「なお書き」を機動的に活用し、適切に対応することが必要である、との意見を述べた。そのうちひとりの委員は、日本銀行に対する金融機関の担保差し入れ状況から判断しても、機動的な追加資金供給は可能であるとの認識を付け加えた。
今後の金融政策運営についても、いくつかの議論があった。何人かの委員は、先行き、金融市場の大きな変動等を機に、実体経済が悪化に向 かうような場合には、追加緩和の可能性を検討する必要がある、と述べた。このうちのひとりの委員は、短期金融市場の安定化の観点から、具体的手段として、当座預金残高目標の引き上げとともに、国債買入の増額や資金供給オペにおける一段の工夫、補完貸付制度の拡充が考えられる、と発言した。
別のある委員は、長期金利の低位安定を通じた金融緩和効果を狙うという観点から、国債買入の位置付けや国債保有につき銀 行券発行残高を上限とするルールのあり方を再検討するべきではないか、と述べた。この委員は、銀行券発行残高上限を撤廃する際、財政規律や日本銀行の財務の健全性を確保するため、政府との間で何らかの合意が必要になる、と続けた。
もっとも、最初に国債買入増額に言及した委員は、国債イールドカーブを過度にフラット化させることは、金融機関の収益機会確保やリスク管理の観点から問題があると思う、との意見を述べた。これを受け、ある委員は、金融機関のリスクテイク能力が低下している中、アセット・リアロケーションが生じることはなかなか期待できないうえ、国債イールドのさらなる低下が大きな景気刺激効果を持つとは思わないとの見解を述べた。
もうひとりの委員は、長期金利に直接働きかけることは市場機能を歪めることになりかねず、将来、何らかの理由でインフレ期待が生じるような場合には、ある時点で長期金利が非連続的に上昇するリスクがある、との意見を述べた。この委員は、市場機能を活かしつつ長期金利を安定化させるには、量的緩和の枠組みを継続することについての現在のコミットメントの方が有効である、と付け加えた。
他方、別のある委員は、これまで、円滑な資金供給を目的として国債買入を増額してきたが、結果的には、すでに長期金利にある程度影響を及ぼしている、との見方を述べた。こうした議論を踏まえ、何人かの委員は、国債買入増額の是非を検討する際には、国債市場の状況をも十分念頭に置く必要がある、との認識を示した。このうちのひとりの委員は、現在、市場メカニズムが機能するもとで長期金利が低位安定しているのは、財政規律に加え、金融政策運営に対する信認が維持されているからであり、これらを堅持していくことが重要である、と付け加えた。
経済の再生とデフレ克服との関係についても、議論があった。ある委員は、不良債権処理や財政再建は短期的には景気、物価を下押しする方向に働くが、長い目でみた経済の再生のため不可欠であるからこそ、政府は現在これらの政策を進めている、との認識を示した。この委員は、こうしたプロセスを経て、経済が持続的な成長軌道に戻れば、その結果としてデフレ脱却を実現できる、との考えを強調した。
別のある委員も、調整期間においては、ある程度の物価下落圧力は構造改革の当然の帰 結として受け入れるべきなのかもしれない、と同様の意見を述べた。もうひとりの委員は、金融政策は、デフレの加速を回避するうえでこれまで重要な役割を果たしてきたし、今後もそうした努力を続けるべきであると指摘したうえで、同時に、それだけで問題が解決するわけではないとの認識も大事であり、日本経済が本格的に立ち直るには、不良債権処 理や構造改革により実体経済面の前向きの動きを引き出すことが必要である、との見解を示した。
関連して、インフレ・ターゲティングに関して、意見が交換された。ひとりの委員は、(1)十分な政策手段の裏付けがない宣言でインフレ予想を高めることは難しい、(2)インフレ期待の高まりが、中央銀行や日本経済そのものへの信認が損なわれる形で生じる場合には、かえってデ フレ脱却や、ひいては日本経済の持続的発展自体を大きなリスクに晒すことになる、といった理由を挙げて、インフレ・ターゲティングを採用することは「無謀な賭け」であり、適当ではない、との考えを明らかにした。他の多くの委員も、物価目標を設定しても、日本銀行単独ではその実現は困難である、との認識を述べて同調した。
このうち複数の委員は、仮に政府が需給ギャップ縮小に向けて財政支出の拡大や減税を十分に行うのであれば、物価上昇を実現することができるかもしれないが、現状そのような政策は採用されていないし適当でもない、との趣旨を述 べた。
他方、もうひとりの委員は、インフレ・ターゲティングの採用は、政府と日本銀行との共同責任のもとでしかありえないとしたうえで、政府の財政規律維持にかかる明示的・継続的なコミットがあり、かつ、物価目標の達成時期を明示せずに金融政策運営の機動性と自由度が保証されるのであれば、一定の数値で示した物価上昇率を望ましいものとして政府と共有することができるのではないか、との見解を示した。この委員は、量的緩和継続についての現在のコミットメントだけでは、デフレ脱却が相当困難であるとの見方から、むしろ市場のデフレ期待を強めている面があるのではないか、と続けた。
これに対し、別のある委員は、現在のような環境のもとで、狭いレンジの物価目標を定め、無理やりその目標を達成しようとすると、先行き、かえって物価の動きを不安定化する惧れがあると考えられるため、物価目標レンジの設定には慎重であるべき、との意見を述べた。もうひとりの委員も、こうした考え方に同意した。
以上の議論を踏まえ、ひとりの委員は、重要なことは、日本経済がいずれ持続的な成長に復帰できるという明確な道筋を示すことであり、そのもとで人々の成長期待が高まれば、それが家計や企業の支出スタンスや資産価格に好影響を及ぼすことになる、との認識を述べた。そのうえで、この委員は、インフレ予想ではなく成長予想を高めることこそが重要であると強調した。(2003年1月27日発表)
日銀総裁、デフレ克服に最大限努力・支店長会議――インフレ目標は否定
日銀は27日、支店長会議を開いた。会議冒頭であいさつした速水優総裁はデフレ克服に向けて「金融面から中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく」と決意を語った。一方、物価上昇率に一定の数値目標を定めて政策運営に当たるインフレ目標については「採用には市場や経済を著しく不安定化させるリスクがある」と改めて否定的見解を示し た。
総裁は持続的な経済成長に「規制、税制の改革や財政支出配分の見直しといった幅広い分野の構造改革の実効を上げ、民間需要を引き出していくことが不可欠」と強調した。
不良債権問題では、金融再生プログラムで示された論点の検討が始まるなど「制度面での新たな展開がみられる」と指摘。大手銀行グループが資本増強に動き始めたことについて「自助努力が着実に進められることを強く期待している」と述べた。不良債権処理の加速に伴って金融システムが不安定になるような場合は「政府とも連携のうえ、引き続き適切に対応していく」と語った。
景気の現状については「全体として下げ止まっている」との見方を示しながらも「回復に向けての不透明感が強い状態が続いている」と述べ た。
大手銀各行が資本増強や保有株式の早期売却などに乗り出した点は「自助努力が着実に進められることを強く期待している」と評価した。こうした取り組みと呼応し、日銀としても金融システムの安定を図るべく「年度末にかけても金融資本市場の状況を注視しながら、必要に応じ潤沢な資金供給を機動的かつ弾力的に行っていく」方針だ。景気全般については「全体として下げ止まっているが、国際政治情勢や海外経済動向の先行きなどを巡る不確実性から回復に向けての不透明感が強い」との認識を示した。会議ではこの後、各支店長から出される地方経済の実態報告も踏まえて、内外の金融資本市場が景気に与える影響などについて議論する。
日銀は年に4回、東京・日本橋の本店で支店長会議を開いている。今 回も国内32支店長とロンドン、ニューヨーク、香港の各駐在参事が出席した。