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▼29日のポイント/今後の金融政策シナリオの読み方 [Yen Dokki!!]
投稿者 あっしら 日時 2003 年 1 月 28 日 14:58:07:


UBSウォ−バ−グ証券会社・経済調査部チ−フエコノミストの白川浩道さんは今日のポイントとして、「政策の3つのシナリオ 」を挙げる。明示的なインフレ・ターゲット(物価目標)の導入は、「当面の間、見送られる公算となった」と語る。インフレ・ターゲット導入論が息を吹き返すとすれば、官邸、与党多数派議員、および財務省が「実効性のある財政刺激策の継続的な実施」にコミ ットする場合である。インフレ・ターゲット論で最も重要な点は、「その導入は 財政政策の自由度をかなり長い期間に亘って大きく制約する」ということである 。「この点を忘れてはならない」と言う。

<政策の3つのシナリオを吟味する> さて、こうした状況で、日銀の資金供給を中心に据えた政策運営はどのような方 向に進むのであろうか。この点に関し、同社では、以下の3つのシナリオを並行 して想定する必要があると考えている。3つのシナリオとは、

 1.中長期国債買い切りオペ増額を中心とした量的緩和の一段の推進
 2.追加的な財政刺激策(03年度補正予算)と中長期国債買い切りオペ増額の同 時的な実施
 3.日銀によるETF、REIT等リスク資産購入(購入対象資産メニューの拡大) である。
<第1シナリオの確率は、60%程度まで低下>  まず、第1のシナリオは、「財政の追加出動をせずに、日銀が淡々と中長期国債を買い増す」といったものである。これは、長期金利の低位安定状態をなるべく 長期間に亘って達成するとともに、内外長期金利格差を維持することで円相場の 軟化を狙おうとする政策である。「まさに財務省主導の政策」である。同社では、こ うした政策運営を基本シナリオに据えてきたわけだが、第2、第3のシナリオが登場する中で、その確率は60%程度まで低下したと言う。前日銀審議委員 の中原氏が次期総裁に就任する確率が低下したことも、同シナリオの確率を低下 させる1つの大きな原因となっている。

<第2シナリオは、統一地方選の行方が重要な判断材料>  第2のシナリオは、財政刺激策と量的緩和追加の同時出動である。「量的緩和の 追加のみで円安誘導を狙ったにせよ、世界経済の脆弱性を考えれば、十分な景気 刺激効果は挙げられない」との見方が与党抵抗勢力を中心に盛り上がり、小泉政権もその声を無視できなくなる、という可能性は徐々に無視しえなくなっている 。日銀サイドにも、「デフレ克服の1つの有力な手段に財政・金融の同時出動が ある」との見方があることからすれば、「日銀の協力もそれなりに得られる可能性 がある」と言う。こうしたシナリオについては、「地方経済の悪化が現政権の経済政策運 営に対する不満となって、今後、どの程度噴出するか」にかかっており、「統一地 方選の行方が重要な判断材料となる」と見る。財務省が依然として現政権の政策運営に大 きな影響力を持っていることからすれば、このシナリオの確率は依然として20 %程度であるが、将来、それが上昇してくる可能性も否定しないと言う。
<第3のシナリオは、官邸周辺等が今後推進する可能性>  第3のシナリオは、財政の追加出動を回避する一方で、日銀に「より直接的な株価対策を迫る」というシナリオである。中長期国債の買い切り増額による円安誘導では不十分であるとする一方で、財務省の根強い抵抗や、政治力学からすれば 、「露骨な財政追加出動は現実的ではない、と判断する向き(与党内改革派、官邸周辺)が今後推進してくる可能性のある政策」である。このシナリオの確率も現状では20%程度と見ている。

<福井氏が新総裁就任の場合、購入対象資産拡大へ>  ここで、第2と第3のシナリオ(合わせて確率は40%程度)は、「セットで考えるべきものである」と言う。すなわち、両シナリオは、ともに、これまで財務省が主導してきた、「量的緩和、長期金利低位安定、円安誘導」といった政策(第1のシナリ オ)に疑問、あるいは不満を持っているという点で共通している。そして、景気 、あるいは株価に対し、より直接的な効果を求めているのである。両シナリオの 確率分布がどのようになるかについて、重要な視点は2つあると言う。1つは上記にも指摘したように、地方景気と政治動向(あるいは現政権の安定性 )である。地方からの現政権への反発が強いものとなれば、第2シナリオの確率 が上がる筋合いである。しかし、物事はそう簡単ではない。なぜなら、第2の視 点として、日銀総裁人事を考えなくてはならないからである。ポイントだけ言え ば、(決め手がないとは言え)現在、同社が「有力候補の中で頭1つリードしてい る」とみている福井元日銀副総裁が新総裁に就任した場合、第3シナリオの確率 が上がる可能性がある、ということである。福井氏はかなり強硬な行財政改革論者である一方、「中央銀行は1つの経営体として購入資産の分散を図るべき」と の考え方を持っているからである。  
 つまり、福井氏が新総裁に選ばれ、政治的な不安定性も大きく増さない場合には 、第3シナリオの確率が上昇する一方、同氏が新総裁とならず、政治的な不安定 性が高まる場合には、第2シナリオの確率が上昇することになる。いずれにせよ 、今後の金融政策のシナリオを読む上では、「日銀総裁人事と統一地方選の動向に 注目していく必要がある」

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