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UBSウォ−バ−グ証券会社・経済調査部チ−フエコノミストの白川浩道さんは今日のポイントとして、「日銀は何を買うのか 」を挙げる。
<政府のスタンス後退の基本的背景は大別して3つ> 「インフレ・ターゲット(物価目標)はほぼ潰れたと言ってよいであろう」と語る。竹中大臣も週末のダボス会議でインフレ・ターゲットの導入が必ずしも必要ではないことを認めた。インフレ・ターゲット導入に関する政府のスタンスが後退した基本的な背景には大きく分けて3つある。第1は、与党内抵抗勢力による反対である 。これは、財務省主導のインフレ・ターゲット論を「財政政策における追加刺激の余地を一方的に排除するものではないか」という警戒感である。第2には、財務省国内派、あるいは政府内の改革派による消極姿勢である。「インフレ・ターゲットの導入をあまり叫び過ぎると、金融緩和と最終物価の関係が必ずしも十分 に安定的ではない状況下、財政出動に対する圧力を高めるリスクがある」という 懸念である。そして第3には、官邸周辺における配慮である。「インフレ・ターゲット論で日銀をあまり刺激すると、日銀が一段と頑なになり、日銀と政府の間 の協調体制が壊れるリスクがある」との配慮である。今後についても、政府が日銀の追加緩和策あるいは奇策を引き出していかなくてはならない局面は多々存在するはずである。現段階で日銀を必要以上に刺激するのは得策ではないという判 断である。
<今後、日銀が「何を買って流動性の拡大を図るのか」に注目> こうした状況を受け、今後の金融政策運営に関しては、日銀が「何を買って流動性の拡大を図るのか」といった点に注目して行かなくてはならない。同社では、 これまでと同様、「ベースマネー伸び率ターゲットへの移行(夏場が目処)の下で、中長期国債買い切りオペの持続的拡大(年末までに月額2兆円へ)が生じる 」との見方を基本シナリオとしている。こうした政策は、イールドカーブのフラット化現象を維持するという効果を通じで円安誘導を演出するものである。しかし、日銀に「より大きな信用リスクを取らせる」という考え方もある。これは、日銀にETFやREITを買わせるということである。「国債買い切りオペ増額→イールドカーブ・フラット化→円安→ネット外需刺激」といったルートではなく、「日銀によるETFやREITの購入→株価や不動産価格の期待値上昇→バランスシート調整圧力の減殺→国内投資のより直接的な刺激」といったルートを志向するということである。この場合には、「為替相場が円安に振れる保証はない」と言う。
<流動性拡大ルートにより、金融環境や最終需要への効果も変化> やや繰り返しになるが、日銀が何を買ってベースマネーを拡大させるか、によって、金融環境や最終需要への効果も変化すると考えられる。前者は、「為替円安 、長期金利低位安定、外需拡大」といった組み合わせが生じる可能性が高い一方 、後者は、「為替円高、長期金利上昇、国内投資回復」という傾向がより強く出るものとみられる。現段階では、財務省は前者を選好していると判断されるため 、同社では基本シナリオを変化させる必要性は感じていないと言う。しかし、竹中大臣が指摘しているように、「日銀にはまだ他に買うものがある」のも事実である。先週に指摘した「財政政策の転換リスク」と合わせ、日銀が何を購入していくのか 、にも注目していかなくてはならないと言う。
<購入資産メニュー広がる可能性高まれば、 株価上昇の可能性> 次期日銀総裁に対して、インフレ・ターゲットの導入といった「大胆性」を要求することは困難な情勢になった。だが、その一方で、購入対象資産をETFやREIT等のリスク資産に柔軟に拡大することができるのか、といった「柔軟性」がより重要になる可能性が出てきている。次期総裁の基準は、「改革性」、「柔軟性」、「 組織統治力」に集約されつつあるのではないか。先週も指摘したように、日銀総裁人事が3月末の株価対策の切り札にならないリスクは十分にある。しかし、総裁人事の過程で、「日銀の購入資産のメニューが広がる可能性が高まってくれば、 株価のアップサイド・リスクは高まる」と見る。「金融緩和だけでデフレは脱却できない 」と市場が判断し、財政の同時出動を迫ることになるのか、あるいは、日銀の購入資産メニューの拡大によって、財政出動まで議論が進展しないのか、「重要な岐路に差し掛かりつつある」