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持ち合い銘柄狙う外国人――日経金融新聞スクランブル
「やはり相場の上値は重そうだ」。みずほフィナンシャルグループの1兆円増資計画を受け日経平均株価が大幅高となった21日の株式市場で、準大手証券の株式担当者がこうつぶやいた。
日経平均は後場に入り8700円台に乗せると、上げの勢いが急に鈍った。「金融機関の売り注文が 増えた」という。みずほが表明した経営改革策のうち、株式相場に対する直接の影響が注目されるのは保有株売却の加速だ。
同グループは当初7000億円としていた今下半期の売却計画に3000億円積み増し、1兆円を処分するとしている。12月までに3000億円を売却済みだが、3月末にかけ残り7000億円の売りが控える。みずほが売却額を上乗せしたことで、1―3月の４大銀行グループの株式売却額は2兆3000億円程度に膨らむ公算が大きい。
他の銀行がみずほに追随して売りを増やす可能性も否定できない。銀行とは別に、生命保険会社の売りも3000億円程度見込まれる。しかし、「金融機関の売りが相場急落を招く」との市場の不安感は一 時に比べ薄れてきたようだ。
「外国人投資家の買いが金融機関の売りを 吸収する」との期待感が徐々に高まっているためだ。実際、主力大型株を中心に外国人の買いが徐々に増えている。もともと1―3月は外国人の買いが増えやすい。３市場の投資主体別売 買動向を集計すると、外国人は過去10年にわたり、1―3月はすべて買い越している。
海外機関投資家の新年の運用開始に重なる季節要因が背景にある。「今年も外国人は買いの機会をうかがっている」。ドイツ証券の下出衛シニアストラテジストは経験則を踏まえたうえでこう指摘する。
米国株に比べた日本株の出遅れ感に加え、「3月末までに日本政府が何らかの景気・株価対策を打ち出すとの観測が海外で強まっている」という。
外国人が買い意欲を強めている傍証はほかにもある。金融機関の株売却に関する情報に関心を深めていることだ。今月、下出氏は銀行の持ち合い解消売りの影響が強いと予想される銘柄の一覧を作成し、投資家に情報提供した。時価総額1000億円以上の銘柄について、昨年9月末時点の四大銀行グループの合計持ち株比率が大きい順にランキングした。
上位にはシマノ、大和ハウス工業などが並んだ。
「過去にも同じ資料を作成したが、最近は海外投資家の関心の中身が細かくなってきた」。持ち合い解消の進み具合を知りたいとの要望が多いため、半年前、1年前の持ち株比率も載せた。公表後、電子メールで毎日のように問い合わせが来るという。メリルリンチ日本証券でも同種の表を作った。
銀行グループ別に保有 額の大きい銘柄をランキングしたものだ。「業績のしっかりした銘柄なら、持ち合い解消売りで下げた時に買うのが得策とアドバイスしている」と菊地正俊シニアストラテジストは話す。
20日時点の時価総額をもとに保有額の大きい銘柄を改めてリストアッ プすると、みずほグループは優先株引き受けを打診したキヤノンがトップ。年初から上値の重さが目立ったトヨタ自動車はＵＦＪ銀行、三井住友銀行でともに最大の保有額となっており、潜在的な売り圧力の強さを印象づける。
少し前なら、こうしたリストは投機筋の格好の売り材料になっていただろう。だが大手銀行がなりふり構わぬ資本増強に乗り出すなど官民挙げての「3月危機封じ込め」が本格化するなか、海外ヘッジファンドなども「さすがに売りにくいと感じている」（欧州系証券幹部）。
外国人は短期のトレーディングと割り切った買いも多いとみられ、イ ラク攻撃という不透明要因も残る。しかし当面は、持ち合い解消売りを吸収する緩衝材となる可能性がある。（木村貴）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。