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ＵＢＳウォ−バ−グ証券会社・経済調査部チ−フエコノミストの白川浩道さんは今日のポイントとして、「首相の日銀総裁選びを考える 」を挙げる。日銀総裁人事の決定が遅れている。３月末の株価対策といった観点から、決定が 意図的に引き延ばされている面もあるが、「首相による人選が固まっていないこと が１つの大きな要因になっていると読むべきであろう」と語る。 日銀総裁人事はかねてから首相の専管事項とされてきた。前回の速水総裁決定の 際も、当時の橋本首相の独断による部分が大きいとされている。小泉首相の場合 、どうであろうか。
＜日銀新総裁選びの「３つの基準」とは？＞ 白川さんは、小泉首相には、３つのキャッチ・フレーズを基準に、日銀総裁の人選について考えてみた。そして、その結論は、「現状では決め手がなく、ダ ークホースが登場する可能性も十分にある」ということになる。さて、３つキャ ッチ・フレーズとは、「構造改革なくして景気回復なし」、「大胆かつ柔軟に」 、「任せてある」、である。従って、日銀新総裁選びの３つの基準とは、「構造改革に前向きであること」（第１基準）、「思い切ったことが決断できる反面、 政府の意見に柔軟であること」（第２基準）、「日銀総裁として安定感があるこ と（任せられること）」（第３基準）、である。 現在、名前が完全には消えていない新総裁候補を挙げるとすれば、中原伸之氏、 福井俊彦氏、尾崎護氏、田中直毅氏、の４人である。この4人を上記の３つの基 準で評価するとどうなるか。
(1)、まず、中原伸之氏は、金融タスクフォースのメンバーとして、銀行改革や不良債権問題に関わっていることからすれば、第１基準はクリアーすると考えられる。そして、これまでの大胆な政策提言からすれば、第２基準もクリアーすると言いたい ところであるが、実はそうではない。なぜなら、同氏は「柔軟」とは目されてい ないからである。従って、第２基準は△である。そして、第３基準については、 日銀内部の強い反対意見を前提にすれば、組織の安定性が確保される保証はなく 、これはクリアーされないとみるべきであろう。要するに同氏は、３つの基準の うち、１つ半をクリアーするイメージである。
(2)、次に福井俊彦氏であるが、同氏は、第１基準、および、第３基準をクリアーすると見 てよいであろう。同氏は構造改革派であると同時に、日銀OBであることから、日銀の組織の統率という点で心配はない。しかし、第２基準をクリアーすることは できないであろう。大胆な金融緩和には消極的であり、かつ、信念の人であるからだ。このように、福井氏は２つの基準をクリアーできそうであるが、３つは無理である。
(3)、財務省OBの尾崎護氏については、おそらくは第３基準のみしか、クリアーできないであろう。財務省OBであるため、改革派のイメージには程遠いほか、これまで金融政策に関する思い切った提言を行ったこともない。政府の意見に柔軟であるこ とは保証できるかもしれないが。従って、中原氏と同様、高々、1つ半の基準を クリアーするに過ぎない。
(4)、田中直毅氏は、第１基準と、第２基準における「柔軟性」はクリアーできる可能性が高い。しかし、同氏は、インフレ・ターゲットにも、思い切った金融の量的 緩和にも消極的であると考えられている。さらに、第３基準については、残念ながら、クリアーすることは困難であろう。再び、1つ半の基準をクリアーするに止まる。
＜日本経団連・奥田会長などに注目すべき・・・＞ このように、上記の４氏を評価すると、福井氏が少しだけリードしているように 見えるが、「決め手はない」としながらも、「ここで、ある人物に思い当たる」と言う。それは、竹中平蔵大臣である。同大臣の場合、おそらく、第１、第２の基準をクリアーすると考えて良い 。そして、第３の基準についても、これまでの大臣としての実績に照らせば、必ずしもクリアーできない基準ではないかもしれない。国会が始まったのに大臣が 替われるのか、などといった見方はしごくもっともであるが、「ダークホースの中 に含める必要がある」。 その他のダークホースについては、産業界や学界を考えることになる。そして、 「上記の３つの基準からすれば、産業界出身者の可能性の方が高い」。なぜなら、学者の場合、第３の基準を満たせないとみられるからである。「改革の意識があり 、大胆かつ柔軟に行動でき、企業経営の手腕も高い人物であること」がダークホースの資質である。日本経団連・奥田会長などに注目すべきかもしれない、と見る。
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