現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産19 > 531.html ★阿修羅♪ |
|
● 日本経済は輸出の鈍化だけでなく、鉱工業生産、設備投資、さらに個人消費までも低迷し、物価は下落するなどデフレに歯止めがかからない。小泉首相も今年の政治の最重要課題にデフレ克服をあげた●
昨年1〜5月の輸出数量指数が前年比24%の大幅な増加となったことを受け、政府は景気が回復したとの見方から、昨年5月には「景気回復宣言」をした。この時点で、当橘田レポートは政府の景気回復宣言は「おかしいよ」と指摘したことをご記憶の方もあろうかと思う。「たとえ景気に回復感が出たとしても、それはアフガン戦に備えた米国の一時的な在庫調整の積み増しに過ぎず、輸出は6月以降大幅に減少していくため、景気回復があったとしてもごく短命に終ってしまう」とも指摘した。
果たせるかな、輸出は6月以降急激に落ち込み、輸出数量指数は6〜9月の4ヵ月間で前年比9%も減少し、いまだに緩やかながら減少の気配を続けている。政府は17日に1月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出したが、その中で景気の総合判断を昨年12月の「おおむね横ばい」から3ヵ月連続で下方修正した。
政府の景気判断は輸出の落ち込みだけでなく、ついに鉱工業生産の低迷、個人消費の低下、設備投資の回復が見込めないなど、内需の後退色が強まってきたことを示す内容となっている。
月例報告の景気基調判断は、2002年3月降は上方修正が続いたものの、その後は据え置き状態となり、11月からは3ヵ月連続の下方修正となった。基調判断を3ヵ月連続で下方修正するのは、2001年4〜6月以来のことである。
竹中経済財政・金融相は1月の月例経済報告の下方修正について「流れは持ち直し状態にあるが、短期的には踊り場にあるとみており、景気は腰折れではない」と発言している。ただ、市場では輸出に回復感が出ないこと、鉱工業生産では企業が在庫を積み増す動きがみられないこと、設備投資は企業の不安感から投資が萎縮していることを考えると、先行きの景気判断は悪化こそすれ上昇の気配は弱いとの見方が多い。
政府内では景気は一時的には下向きとの見方は多いものの、一部には先行き景気後退懸念が強まるとの心配も強い。こうした弱含みの状態が一時的ではなく定着すれば、景気が先行き後退局面に入ることも考えられる。
今回、景気がこのように後退局面に入った原因は、昨年前半の一時的な輸出の拡大を長期的な景気回復のシナリオの中に強く組み込んでしまったこと、輸出拡大によって鉱工業生産は大きく伸びるであろうと景気拡大の柱に組み入れてしまったこと、さらには生産の拡大によって設備投資も拡大するであろうと判断したものの、これも本格的な回復につながらなかったことなどが景気の総合判断を誤らせる大きな要因になったところにあると言えよう。
考えてみれば、一昨年から米国経済はバブル崩壊の渦中にあり、株価は暴落するなど景気後退の最中にあった。そうした時にアフガン戦が発生し、米国ではアフガン戦に備えての在庫積み増しが強まって、日・欧・アジア諸国から資材を一時的に急速に輸入した。これによって昨年春には世界的に景気回復感が強まった。
こうした一時的な景気回復を、日本政府は長期的景気回復場面とみて「景気回復宣言」をしてしまったわけだ。この回復はあくまで米国に「おんぶに抱っこ」のものであって、日本の内需拡大によるものではない。
昔から貿易の動向は6ヵ月後の経済に大きな影響を与えると言われているが、昨年6月からの輸出の減少は、昨年末あたりから日本経済の縮小となって影響が出てきている。今後、米国経済の減速は日本からの輸出の減退という形になって表われてこよう。日本の外貨準備高は徐々に減少していくであろう。
1月13日、スイスの国際決済銀行(BIS)で開かれた主要国中央銀行総裁会議では、今年の日本経済について「不良債権処理に長い時間を要したことで、一応プラス成長になるだろうが、回復は鈍い。日本は不良債権処理とデフレ対策をきちんとやるべきだ」という厳しい注文が各国から出たと言われている。
ところで、これからの日本経済にはイラク攻撃による米経済の減速、不良債権処理に伴う失業増などのデフレ圧力、株価下落といった不安材料が集中することが考えられる。現状、日本経済は方向感を失っているため、このような不安材料が加わると景気を一段と下押す恐れが出てくることも考えられる。
政府の景気判断が3ヵ月連続で下方修正となったことから、場合によっては景気が後退局面に入る可能性も高いとの懸念を強く抱き始めた政財界人が多くなってきている。
日銀は1月17日、これまでの国内卸売物価指数を大幅に改定した国内企業物価指数(2000年=100)を初めて公表した。これによると、2002年平均(速報)は95. 8となり、前年に比べて1.9%下落した。前年水準を下回ったのは2年連続である。また、2002年12月分の国内企業物価指数は、前年同月に比べ1.2%下落した。これで前年水準を28ヵ月連続で下回ったことになる。
今回の改定では「基準となる時点を1995年から2000年に更新し、時間の経過によって生じた指数のゆがみを修正した。同時に産業構造の変化にあわせ、輸出用機器や電気機器の比重を上げる一方、繊維製品などの比重を下げた。また、IT化や規制緩和に関する品目を新規に採用した。
さらに、これまでは代表的な商品を決めて通常時の価格を調べてきたが、値引き販売価格などを含んだ平均価格を指数に反映させる方式を採り入れた。値引き販売や低価格品の比率増加が指数の低下につながるようになるため、デフレの実態がより的確に反映される」というのが主な内容である。
デフレの進展によって、旧来の卸売物価指数は実際の物価水準を的確に示さなくなってきたため、一昨年あたりから改定の必要性が叫ばれてきた。今回の指数の改定によって、電気機器の価格下落などがより強く影響するようになり、デフレの実態を一段と鮮明に反映するようになったと言えよう。
今回の改定値をみても、デフレが進んでいることを鮮明に示しており、企業物価指数が早期にプラスになる可能性は低いようである。従って、金利のゼロ%時代は相当長期化すると見てよさそうである。日本経済にとってデフレ克服が最大の課題であることは論を待たない。特にインフレ目標論などを導入する際には、物価水準を的確に把握することがこれまで以上に重要になってくる。
[デフレの長期化は市中の余剰資金を国債投資へと走らせている。投資家はいつかはババを引かされるリスクを考えながらも、足元の利益を求めている]
このところ、長期金利の低下が止まらない状態が続いている。1月8日の債券市場では新発10年物国債利回りが前日終値より0.015%低い0.885%に低下したのに続いて、16日には一時前日終値に比べ0.035%低い0.820%まで低下した。これは98年10月以来の低水準である。すさまじいばかりの長期金利の低下である。
長期債の金利低下は10年物国債だけにとどまらず、20〜30年物国債利回りにも及んでいる。10年物国債金利の低下に引きずられるというよりは、むしろ20〜30年物国債利回りの低下に引きずられる形で債券相場全体の金利が低下していると言った方が正しいかもしれない。
10年物国債利回りはすでに1.0%を大きく割って買い尽くされた状態となり、現在1.0%台をつけているのは20〜30年物国債しかない。先行きのリスクはともあれ現状の利益を考えると、20〜30年物国債に投資せざるを得ないというのが現実の姿である。
こうした利回りの低下を演出しているのは、大口の買い手というよりは、売り手不在の中での小口買いで金利が形成されているようである。日本の土地神話が形成されたバブル時代には、売り手不在の中で小口の買いによって価格が上昇したと聞いているが、どうやら全く同じ現象が起こっていると言えよう。
バブル経済は、日本でも米国でもこうして形成されていった。こうしたことを考えると、債券は完全にバブル相場に突入したと考えられる。特に20〜30年物国債はバブル崩壊時には大きなリスクが伴うことになろう。金利の低下は長期金利だけにとどまらず、企業が短期資金を調達するために発行するCPの発行金利にも低下の波が押し寄せている。
また、昨年末から始まった金利低下局面では、すでに割高感の状態にあると言われ一貫して0.3%前後で推移していた5年物国債利回りが低下を始めた。今後は5年物国債と10年物国債が交互に割高感を解消し合いながら相場全体の金利低下が進んでいくものと考えられる。
昨年11月頃、当橘田レポートは新発10年物国債利回りは1.0%を割って0.7〜0.8%台に低下していくであろうと指摘したが、すでにこの水準も現実のものとなった。長期金利が過去最低に近い水準まで下がったことを背景に、企業や特殊法人の債券発行が急増している。販売は好調で売り切れの状態が続いている。投資家は今まで敬遠してきたトリプルB格債にも投資妙味があるとの考えに変化してきた。
改定された企業物価指数の大幅な低下、鉱工業生産指数、個人消費、失業率などの先行きの一段の悪化に加えて、イラク開戦などを考えると日本経済のデフレ長期化は必至のようである。
また、小泉首相が「デフレ克服が最大の政治課題になった」と述べたこと債券買いの大きな要因となっている。債券市場では金利下げの蚊帳の外に置かれた5年債の利回りが低下してきたことで、今度は10年債とか20年債の割高感が解消されるという連鎖反応が起こっている。
リスクは多くなってきたものの、現状では投資するものは債券しかないというムードが生まれている。こうした市場の動きは、理屈抜きで市場の流れに逆らわないで、乗っていこうというムードとなっている。
新発10年債利回りが98年10月につけた過去最低の0.775%を割り込む日もそう遠くなくなってきたようである。投資家の間では、こうなったら行くところまで行くしかないというバブル時代の投資姿勢が強まってきている。債券バブルが崩壊すれば誰かがババを引くことは間違いないのだが、歴史は繰り返されるようである。
[小泉首相がデフレ克服政策実行派に変身した。次期日銀総裁人事ともからんでインフレ目標論の導入の声が高まっているが、果たして日本経済に導入の恩恵はあるのだろうか]
政府の1月の月例経済報告で景気判断が3ヵ月連続して下方修正されたことを受けてかどうかは定かでないが、小泉首相は年明けからデフレ克服に向けて政策を総動員する考えを強調した。自民党を中心とする政権与党内には「財政の構造改革ばかりを口にしていた昨年までとは変わってきた」との声が高まって、期待感が広がっている。
ただ、政策を総動員するといっても、財政面では来年度予算が成立するまでは税制面も含めて、現状、新たな対策は打ち出しにくいのが実情である。金融政策でも、首相の主張するデフレ対策が具体的に何を指しているのか解からない状況である。
小泉首相を始めとする与党政治家が期待している金融政策によるデフレ克服策も、3月19日まで速水日銀総裁が就任している間は打ち出せない状況にある。金融政策が具体化するのは、速水総裁の任期切れとなる3月後半になるのではないか。
一部の政治家の間には、速水日銀総裁さえ代われば日本のデフレは解消するかのような極端な発言をする人もいる。金融政策以外に規制の緩和など、政治家がなすべきデフレ対応策はまだまだある。日本の為政者には責任を他人になすりつけてしまう悪い癖がある。
自民党を中心とする与党では現在、日銀にインフレ目標の導入を求める声が強まっている。インフレ目標の導入とは、政府や中央銀行が物価の目標を決めて、中央銀行が金融政策でその実行を目指すというものである。導入論者は、インフレ期待を高めればデフレは解消するという単純な考えのようである。
金融というものはそんな単純なものではない。ついこの間までは、「日銀は外債を買って円安政策をとれ、そうすればデフレは一気に解消する」と政治家を中心に猫も杓子も唱えていたが、世界的なデフレ下、各国とも通貨を安くしたいという状況の中では日本だけの円安主張は受け入れられないことがわかって、円安誘導説は影を潜めた。
先般来言われているインフレ目標値は、1年目に1.0%、その後2年で2.0〜3.0%という数字をあげている。もし、この通りにインフレ目標値を上げると、中長期の金利が間違いなく上昇する。具体的には、1年物金利が0.7〜1.0%、2〜3年物国債金利が1.0〜1.5%程度まで上昇する。
日銀は現在、インフレ率をゼロ%目標とすることで中長期金利を抑えている。インフレ率目標が2.0%程度になれば、中長期金利は1.0〜2.0%程度に上昇しよう。銀行が企業へ貸し出す金利も現状よりは上昇する。さらに政府が発行する10年物国債利回りも1.5〜2.0%程度に上昇し、政府の年間利払いは1兆5,000億円前後増えていくことになる。
インフレ目標を設けて、これを確実に実行していくと上記のように金利が上昇することは必至である。景気とか国の財政に大きな影響を及ぼすことが考えられる。ただ単に、みんなが言うからインフレ目標を設けろというのではなく、政治家はもっと金融を研究することが必要ではなかろうか。
現在、政府与党内では次期日銀総裁人事ともからんで、インフレ目標論の導入が急速に盛り上がりをみせている。考えている通りに導入が進み、インフレ目標値が上が ってくれば、債券市場から資金が流出して債券バブルは崩壊し、長期金利は上昇することになる。
長期金利が上昇して困るのは、日銀ではなく財務省である。なぜならば、長期金利の上昇は国の年間の利払い負担増を招くからである。しかし、世間でこれだけインフレ目標の導入が叫ばれていて、しかもこれが実施されれば、景気とか財政への悪影響が必至であると言われているにもかかわらず、債券市場は我関せずとばかりに、利回りが急低下して動じないのは「日銀には物価を上昇させる手段が現状ないとみているからではないか」との意見が多い。
確かにインフレ目標が導入されてもこれが実際に稼動しなければ、「絵に書いた餅」であることは間違いない。最近、円安によって恩恵を受ける企業の割合は小さくなり、円高の恩恵の方が大きいとの意見もあって、円高がどうして悪いのかというムードが生まれ始めてきた。
●米国経済も緩やかなデフレ時代に突入か。富を維持しようとする投資家の安全な逃避先は金しかない。今年は通貨切り下げ競争の懸念も。モノ重視時代のリフレ時代に突入か●
デフレ問題は日本だけでなく、米国、ドイツでも顕在化の懸念が強まってきている。FRBのグリーンスパン議長は、物価が持続的に下落するデフレの顕在化を懸念し始めてきた。米国の消費者はクリスマス商戦の不振、イラク開戦とテロに対する懸念、歯止めがかからない株価の下落、さらなるレイオフの不安などの要因を背景に、ついに支出を切り詰め始めた。消費の減退と企業業績の回復不振などで景気は二番底に向かいつつあり、後退局面は恐らく今年の夏頃まで長引きそうである。
クリスマス後も物価は年率2%のペースで下落する動きを示している。どうやら米国にも長期にわたる緩やかなデフレ時代が到来しそうである。ここ1、2年間でデフレ感は世界中に広がった。世界各国が自国通貨安でデフレを凌ごうと考えている。
そんな時に日本だけが円安政策でデフレを解消するなどの行動は受け入れられないであろう。
中国でさえ元の切り上げに反対し、中国の中央銀行はデフレファイター的行動をとっている。
昨年11月下旬あたりから、ドルと金相場は1930年代半ばと同様の動きを始めた。当時のルーズベルト大統領は、米国が物価上昇とドル安を望んでいることを世界に示すために、金に対してドルを70%近く切り下げた。
30年代には世界中でデフレが激しくなったため、各国政府は通貨の切り下げ競争を余儀なくされた。自国の通貨安でデフレを輸出しようとした。
現在の世界経済の環境とよく似ている。デフレの世界において、市場優先の為替政策は富を維持しようとする投資家にとって、どこの通貨も資金の安全な逃避先にはならないというのは経済の原則である。
こうした中で、金が金融資産の代替として浮上してきた。70年代のようなインフレの時代に金価格が上昇するのは容易に理解できるが、デフレの世界で金が魅力的というのは矛盾するように感じられる。昨年末から新年にかけて、国際商品市場では原油が一時1バレル=33ドル台に、金は1トロイオンス=350ドル台までそれぞれ上昇した。
米国のイラク攻撃という緊張感が投機人気を高めて、金高騰の背景となっている。12年前の湾岸戦争では、有事のドル買いで一時的に金は買われた。
しかし、当時と状況が違うのは、米国内でもテロが発生する可能性もあることや、米国経済はバブルの崩壊でデフレ懸念が起り、ドルの信頼感がなくなったことで、有事のドル売りに変わってきていることだ。
現在の投資家による金買いの裏には、世界経済のデフレが進展しているために、あらゆる国の通貨が信頼できない状況となり、その一環として今年は各国の通貨切り下げ競争が起こるであろうことを読み取り始めたことがあるのではないか。
今回の金価格の上昇は湾岸戦争の時とは違って長期化するのではなかろうか。以前ご紹介申し上げた日中投資・貿易促進会のブルチン会報を主宰する古賀文三氏によれば、金相場は先行き、1トロイオンス=470〜500ドルになると予測している。古賀氏は250ドル時代から一貫して買いを推奨していた。
デフレ時代で物価は下がってはいるが、ブッシュ政権発足時に言われた「モノ重視」の時代が着々と進展している。金を始めとする国際商品価格が着々と上昇しており、今年後半はデフレ時代から「リフレ時代」へと変化が起こるであろう。世界経済はモノ重視の時代に入っていくようである。(終)
(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次 記 )
本資料は情報提供を目的としてのみ作成されたものであり、お取引の最終決定は御自身 の判断でなされますよう御願い致します。本資料に記載されている内容は、信頼できる 情報源に基づき作成されたものですが、弊社はその正確性および確実性を保証するもの ではありません。また、本資料を無断で転送・引用・複製することを固く禁じます
みなさん、東短リサーチ社に橘田レポート申し込んで下さいね。いつまでもこうやって載せられないかもしれません。最も信頼できるレポートです。
私もこのレポートのように マーケット現場の視点でレポートが書けるようになりたいと日々精進しています。