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「生活の堕落は精神の自由を殺す」(夏目漱石『それから』より)
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英誌『エコノミスト』03年1月18日号に「日本にニュースなし/欧州同盟が抗議」との論評が載った。まず、この記事の要旨を紹介する。
「日本ほど沈滞した民主主義国なら、新聞が鼓舞しようとするだろう。が、日本のメディアの多くは、メディアの中心的存在であるトップの新聞が、政治家、官僚とクラブ生活を共有しているため、変化に抵抗。より先進的な週刊誌記者は、外国人記者とともに、トップ政策担当者へのアクセスが否定されていると抗議。欧州同盟は改革を求める。欧州は経済抗議のリストの中に日本のメディア慣行を入れ、『情報の自由貿易を制限している」と言う」。
「小泉首相が北朝鮮に行った時、飛行機の座席のほとんどすべてが日本人記者によって占められた。外国人記者の割り当てられた8席のうち、欧州にはただ一つ。これが外国人記者に対する通常の扱いだ。日本政府に公認されているものの、外国人記者はしばしば記者会見から閉め出される。それは、会見を運営する『記者クラブ』が外国人記者を入れないためだ。……欧州同盟は、政府の情報リースとしての記者クラブを廃止すべきだと主張する」。
「外国人記者よりも、日本の政治システムの方がこれによって害を受ける。主要新聞は日本が直面する大半の問題、とくに10年の経済不況に関して薄っぺらな報道しかしていない。衆議院議員の河野太郎は、記者クラブがニュースを支配することで、海外の日本に対する興味が薄れていると心配している。この結果、多くの海外の新聞が東京事務所を閉鎖している。おそらく、それでもなお日本について書こうとしている外国人記者を困らせないのが得策だろう」。
日本のマスコミに対する痛烈な批判だ。このような批判を受ける日本のマスコミ――まことに情けない話である。私はかねてから、日本の危機の元凶は日本のマスコミの高慢にして堕落した体質にある、と指摘してきた。最大の原因の一つは特権的な記者クラブ制度の上にあぐらをかき続けてきたことにある。政治家、官僚と癒着し、政官財と特権を分け合ってきたのである。この結果、ジャーナリズムにとって最も大切な批判精神も喪失した。
特権を共有する仲間である特権階級から与えられた情報だけを報道しているうちに自分自身の取材能力が退化してしまっている。シェイクスピアの言葉に「高慢には必ず墜落がある」というのがある。大新聞、大マスコミは長い間にわたって特権の上で高慢をむさぼってきたのだ。
さらに、新聞社の時代遅れの縦割り構造がある。政治部にいったん所属すれば政治部だけを通す。経済部も同様だ。外信部もそうである。ところが、いまや、政治と経済と外交は密接に結びついている。経済問題は政府の最重要事項である。経済を知らなければ政治記事は書けない時代になっているのである。逆もまた真なり、である。外交についても同じことが言える。
いまの日本の深刻な不況の最大の元凶は米国の巨大金融資本とその圧力のもとで動くブッシュ政権、その手先となった小泉内閣にあることは、日米関係を少し調べてみればすぐにわかることだ。この程度のことは少し勉強している人なら、誰でも知っている。しかし新聞は書かない。
ブッシュ大統領の最大の願望は2004年大統領選挙で再選を果たすことである。このためブッシュ政権はイラクへの武力行使をやろうとしている。他方で、米巨大金融資本が日本での不良債権ビジネスを通じて大儲けできるように、小泉政権に圧力をかけて不良債権処理の加速化に踏み切らせた。巨大金融資本の大儲けの一部はブッシュ再選のための共和党の大統領選挙資金として使われることになると私は思っている。
日本の大新聞がこの程度のことを知らないとすれば、新聞としての存在価値がない。またもし知っていて報道しないとしたら、そのような新聞社は国民の敵である。
最近、海外の新聞・雑誌で日本の問題があまり取り上げられなくなった。数年前までは日本についてかなり熱心に書いていた英国の新聞も例外ではない。この原因の一つは、海外メディアの東京支局が廃止され、北京支局に統合されていることにある。世界の関心は日本から中国に移っているのである。
もう一つ気になることがある。米国と英国には優れた日本研究者が数多くいる。とくに英国の日本分析は優れている。英国の日本研究者は、不況下で構造改革に踏み切ったため不況をさらに悪化させた橋本龍太郎内閣の政策をきびしく批判した。当時、日本経済を「流動性の罠に落ちた」と最初に指摘したのは英国の代表的論客カレツキーだった。小泉構造改革一本槍路線に対してもきびしい批判が寄せられた。
しかし、最近このような友情ある忠告が激減した。
日本国内には海外から批判されることを嫌う傾向がある。政官界も新聞界も。海外からの批判を締め出したいとの願望の結果だとすれば、これこそ「日本の自殺」である。