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1985年以降の10年間、日本経済は未曾有の金融大異変に見舞われてきた。その通貨、円はドルやアジア通貨に対して3倍に増価したのである。90年代半ば以降若干の戻りがあったものの、02年夏現在、それども円は依然として85年はじめに比べてほぼ2倍の価値を維持している。比較のためにマルクを見ると、95年半ばには81−85年の対ドル相場の平均水準に対して約2倍に増価したが、現在ではわずか15%高い水準まで戻している。
10年間で通貨が400%も上昇すれば、しかも大きなインフレ格差があったわけでもないとすれば、その国の経済に壊滅的な影響がないはずがないということは、ちょっと考えれば誰にでも100%自明であろう。そのような現象が起こり得るためには、通常なら市場で作用する均衡化メカニズムが甚大な機能不全に陥っていたに相違ないことも明白だ。金融政策にも重大な誤りがあった可能性大である。にもかかわらず、巨大な円バブルのほとんど信じがたい側面だが、当時の人々は何が起こっていたのかについて全く盲目だったのである。
円相場の激変が日本経済に与えた避けがたい破壊行為が誰の目にも明らかになると、近視眼に対する集団攻撃が始まった。官僚、政治家、エコノミスト、それに評論家など全てが一緒になって、いわゆる「失われた10年」の責任を日本経済の「構造問題」になすりつけたのである。
しかし「大・円バブル」の歴史が楽観的な結末を迎えることは、可能かもしれない。模試の本経済の欠陥が主として為替相場における恐ろしく大きな不整合に由来するとすれば、それならば日本経済構造のいたるところに潜んでいる欠陥ではなくて、為替相場にある欠陥にこそ取り組むことによって、大きな改善を引き出すことが必ずや可能であろう。ミルトン・フリードマン教授が50年前に言ったように、みんなが1時間早く起きようとするよりも、時計の針を1時間だけ戻したほうが簡単であろう。
現在の日本経済についてどうしたら時計の針を1時間だけ後戻りさせることが出来るのだろうか。本書には日本からの資本流出を一挙に活性化させて円を下落させるための政策提言が盛り込まれている。中には従来の通念にとらわれない要素(マイナス金利や対外投資に対する補助金など)を含んでいる。日本が被った通貨ショックの甚大さを考えれば、通念にとらわれない斬新さは実施にとって全く障害とはならないはずだ。
1990年代初めに日本のバブル経済が崩壊した時、円相場は大幅に下落してしかるべきであった。それが理論的および歴史的な教訓である。しかし、95年半ばまでの5年間では円はドルに対してほぼ100%上昇してしまった。つまり、最大級の経済バブルの後に、同じく最大級の円バブルが続いたのである。それが、日本経済にとって災難だった。
円相場が180円水準に戻れば、深刻な過大評価があった時期に始まった産業の空洞化でさえ逆転するだろう。労働集約的で技術水準の低い製造業が、東アジアあるいは東南アジア諸国から日本に復帰してくるということではない。しかし技術的に高度で非労働集約的なさまざまな産業では、円安という環境が整えば、日本企業は海外生産を抑制する一方で国内生産を増加させるだろう。
経済成長が加速すれば、政府は財政再建という野心的なプログラムを推進することが可能になる。構造的に膨大な民間の余剰貯蓄は収益性が低いかマイナスの公共投資に流れ込んでゆく代わりに、外貨資産の蓄積に向かうようになるだろう。対外投資収益の受け取りが急増して、人口の高齢化に伴って著増する若年層の年金負担を軽減するのに役立つことだろう。
日本銀行の総裁二人(三重野総裁と速水総裁)は円高ショックが経済改革の引き金になることを期待して、円高のための円高を信奉した。彼らはバブル経済崩壊後に生じた貯蓄超過の拡大が巨額の経常黒字と円安を誘発するはずだということを宣言することはおろか、理解することすら出来なかった。
(ヨーヨー円 序文およびプロローグより要約)
リチャード・ヴェルナー著「円の支配者」は大きな反響を巻き起こしましたが、それに続く著書がありましたので紹介します。「ヨーヨー円」とは乱高下と均衡からの乖離する「円」という意味を表している。著者はロンドンにある東京三菱インターナショナルで長いこと調査部門で働く研究員です。本書はごく近時点までをカバーする「円相場の戦後史」であり、国内外を見回しても最近では類書がない。ベテランの英国人エコノミストがやさしく書いた一般書です。
著者のブレンダン・ブラウン氏は20世紀末における日本経済の「失われた10年」の元凶は円高、ひいては日銀による金融政策の誤りにあると断罪している。基本的に円高が継続しているのは日銀の官僚たちの誤った政策スタンスにあると痛烈な批判を行っている。他の主要通貨に見られぬほど激しい乱高下があったのは、大蔵、日銀当局の経済金融政策の不適切さを糾弾している。
この事は外為相場に精通している有能な関係者ならば誰もが感じていることだ。しかし三重野総裁から速水総裁は円高にこだわり、円高にする事により日本経済の構造改革を進めるという政策が間違っていることを、私もたびたび指摘してきた。そして構造改革が進まないことのみならず日本経済そのものを破壊しようとしている。しかし私は外為の専門家ではない。学術的に解明することはとても無理だ。
「円の支配者」以降、日本の経済学者からもそれに触発された著書が出始めている。しかし日本人学者ではその能力的限界を感じざるを得ない。サラリーマン学者では日銀や財務省当局の逆鱗に触れるようなことは告発できないだろう。むしろ「円の支配者」をとんでも本として葬り去ろうとした。おそらく「ヨーヨー円」もとんでも本として、経済誌の書評では酷評されるだろう。しかし有能な業界関係者には評価されるはずだ。
「ヨーヨー円」の本で書かれている焦点は日銀当局の金融政策の誤謬がその焦点となっている。詳しいことはこの本を買って読んでみてください。業界関係者でなければピンと来ない部分もありますが、「円の支配者」を補完する本として読んでみると面白いと思います。日銀総裁が近々交代しますが外為相場に精通した人材が望ましいのですが、バブルと超円高を巻き起こした福井氏でいいのだろうか。彼の能力に疑問を持っています。
「株式日記と経済展望」
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu43.htm