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第2次大戦後のめざましい経済復興で、世界の成長を主導してきた日本、ドイツの経済がともに疲弊している。改革が進まず、成長が止まってデフレの淵に立つドイツは、周辺国から「欧州の日本」とお荷物扱いだ。前独連銀総裁のティートマイヤー氏に、病める2つの経済について聞いた。【スイス・バーゼルで福本容子】
――日独経済の類似が、最近話題になります。
◆日本の問題は3つある。1つは金融機関が抱えた不良債権。2番目が構造改革の遅れ、3番目が国際競争、特にアジアとの競争激化だ。
このうち、不良債権は日本特有の問題だ。ドイツはバブルが起きず、銀行は不良債権の負担がなく、経営状態ははるかに健全だ。こうした違いもあるが、共通点も多い。ドイツも構造改革が急務で、ユーロ圏や東欧との競争にますますさらされる環境にある。
――ともに政治の意思が不十分なため、構造改革が進まないようです。
◆政治の意思決定が「コンセンサス(合意)重視」であることが改革の遅れの原因だ。コンセンサス型は、外国に追いつくことが大事な経済の発展段階では機能する。しかし、既存の恩恵を削り、個人の自己責任を要求することになる改革時には、難しい。
――ドイツの場合、特に社会保障制度の改革について顕著です。
◆1世紀以上もかけて作り上げた「福祉国家」が行き詰まっている。企業と個人の社会保険料負担の総額は国内総生産(GDP)の42%に達し、高齢化もあって手厚い制度の維持は困難だ。重い負担は労働コストを引き上げ、寛大な手当は職に就く動機を奪っている。
――改革に向う兆しはあるようですが。
◆スピードがとても遅い。政権内に、変えなければいけないとの認識は生まれているが、明確な政策は打ち出していない。シュレーダー首相の社会民主党内で「福祉国家」を維持しようという勢力が大きく、連立内の改革派政党との対立が解けないからだ。
今、政治家に求められているのは、国家がめざす将来像をきちんと描くことだ。問題解決のためもっと政治が勇気を持つ必要がある。
――日本は、危機意識が足りないとの指摘があります、ドイツは?
◆日本に比べ、「過去20年間通してきたやり方ではもうダメだ」との意識がより高まっている気がする。かつて、常にトップクラスの成績を誇っていたが、毎日のように新聞が「ドイツは一体どうしたんだ」と問いかけ、「イタリアのような地中海諸国やアイルランド、スカンジナビア諸国に抜かれてどうする」といった意識が強まっている。「落ちぶれてしまう」という危機感は、改革に必要な政治の意思を生み出すのに役立つ。
――日本ではデフレを食い止めるため、日銀がインフレ目標策を導入すべき、との要請があります。
◆日銀は、すでにやるべきことはやったと思う。問われているのは政府と金融分野だ。インフレ目標さえ導入すれば、それで人々を納得させられるのか、わかりかねる。やるべきことはほかにたくさんある。
――日独とも、製造業、特に輸出産業を重視してきました。今後のあるべき姿は?
◆サービス産業の比重をもっと上げるべきだ。国内の狭い地域を対象とするだけでなく、国境を越えたニーズに対応した広い意味でのサービス産業だ。
将来のグローバル経済を支える新分野を担うのは、巨大企業でなく個人や小規模な企業で、リスクをとる姿勢や起業家精神が問われる。そうした個人や企業が育つような、税制や社会保障制度、高校・大学教育に整える必要がある。
▽ハンス・ティートマイヤー 93〜99年、ドイツ連邦銀行総裁。現在は社会経済制度改革について提言する超党派研究会「新社会市場経済イニシアティブ」を主宰。
[毎日新聞1月18日] ( 2003-01-18-22:26 )