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近年、日中の企業間でも色々な形で新しい協力関係が模索され始めている。これまで、日中間の企業提携といえば、日本企業が中国企業と合弁企業を作り、中国で生産を行うことが主流であった。その際、日本側は常にブランドや技術を握るなど優位に立っていた。しかし、最近では、国際競争力を身に付けた中国の多くの企業が従来の「来てもらう」ことに特徴付けられる内なる国際化を超えて、「外に出よう」(走出去)を合言葉に、対外直接投資や外国企業との戦略的提携も視野に入れて国際化戦略を推し進めている。
最近の例でいうと、2002年1月に発表された三洋電機とハイアールの包括提携が挙げられる。これは、かつてのように三洋電機が中国の安い労働力を活用して製品を安く作ろうという単純なものではない。WTO加盟を果たした中国の市場環境の改善、さらには巨大な中国市場を視野に入れた三洋電機と、高品質・低価格を武器に日本市場でのシェア獲得を目指すハイアールが、両者の技術、製造力、販売ノウハウなどの経営資源を相互に最大限に活用して、広範な分野での協業関係を築いていこうというものである。日中企業間の初めての本格的な対等なパートナーシップとして注目されている。すでにハイアールブランドの小型冷蔵庫、洗濯機などが新たに設立した三洋ハイアール株式会社を通じて日本市場で販売されている。
ハイアールと三洋の提携をモデルに、その後、TCLと松下、海信と住友商事、上海広電集団と三井物産の提携が相次いで発表された。中には、三井物産と中国の電機メーカー上海広電集団との提携のように、第三国市場での展開をも視野に入れるものもある。上海広電集団は三井物産の商社機能を活用して世界的販売網を構築し、液晶テレビなどの先端的なAV機器を日本のみならず欧米諸国でも販売するなど、海外事業を拡大することを目指している。
中国企業が日本にやってくるという形での日中企業間の提携は、双方にとって潜在的利益は多いが、乗り越えなければならない課題も多い。まず、提携する双方にとって最も重要な問題は、生産・販売チャンネルの統合である。分業のメリットを最大限に活かすためには、それぞれが資源を自分の得意分野に集中させなければならない。これは多くの場合、比較劣位の部門を縮小させ、場合によっては撤退することを意味するため、調整には時間を伴うだろう。また、日本企業はブーメラン効果を恐れているため、カギとなる技術を競争相手に渡す際には躊躇せざるを得ず、中国側が切望する技術を得られるかどうかも不確実である。さらに、メイドインチャイナのイメージが最近急速に改善しているとはいえ、中国製品がブランドや品質、デザインに最もこだわる日本の消費者の心を捕らえるためにはより一層の工夫が求められる。これらは、企業のレベルに留まらず、今後深まると予想される日中経済関係を考える際にも避けて通れない重要な課題である。
企業間の戦略的提携に加え、中国企業による日本企業の買収の動きも活発化し始めている。これは数年前までは考えられないものであったが、日本における長引く景気低迷により、株価や資産価格が大きく下落し、そのような戦略をとりやすいということが背景にあると考えられる。その狙いは、買収の対象となる日本企業が持っているブランド、技術(特許)、設備、そして販路を手に入れることである。
こうした外資の進出は、日本にとっても、今の閉塞感を打破するには有効である。ルノーの傘下に入った日産がカルロス・ゴーン社長のもとで見事に復活したことに象徴されるように、外資の導入を機に企業の活力を取り戻した例がすでにある。中国では市場経済が浸透するにつれて、民営企業を中心に若い世代の企業家が急成長している。その中で、瀕死状態にあった国有企業を生き返らせたものも大勢いる。日本企業が自力で改革できないのであれば、彼らの力を借りることもいい案なのかもしれない。
2003年1月17日掲載