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きったレポート1/14号 景気見通し一転弱気派の勢い増す
投稿者 Ddog 日時 2003 年 1 月 14 日 22:52:52:

内外政治経済・短期金融市場の動向 橘田週間レポート  平成15年1月14日号

●FRBは物価下落の進展でデフレ懸念を強めている。アナリストの2003年の景気見通しは弱気派が勢いを増している。デフレ下の金高騰は世界的な通貨切り下げ競争の前兆かもしれない●

米国では2002年12月の失業率が11月と同じ6.0%にとどまったものの、景気の実態を映すと言われる非農業部門雇用者数は前月の8万8,000人減を大きく上回る10万1,000人減となった。雇用増を見込んでいた市場の予測を大きく下回っており、景況感は大きく悪化する恐れが強まってきた。

米政府高官は雇用統計について「ブッシュ大統領は雇用が失われていることを強く懸念している。議会が早期に景気対策を成立させるよう求めたい」と述べた。一方、失業率と共に米国の景況感を示すと言われる個人消費は懸念を表わすものとなった。米主要小売業82社が発表した昨年12月の売上高伸び率は前年と比較可能な既存店ベースで前年同月比1.0%増にとどまった。消費者心理が上向かないなかで、クリスマス商戦後の大規模な値引きセールも集客力向上や売上げ増にはつながらず力不足だった。

このように、失業率の悪化と個人消費低迷などの懸念材料が発表されたことで、新年からの景況感は急速に弱気に転じてきている。先週の当レポートでは、米国の2003年の景気見通しについて楽観・悲観・中間派などの見方に分かれるものの、楽観派の見通しが主流になっていると申し上げた。しかし、今年に入ってからは中間派から悲観派の景気見通しに変更していくアナリストが多くなってきている。

ブッシュ大統領が7日、議会へ提出した新たな景気対策は、来年の大統領選での再選のため是が非でも米国経済を回復軌道に乗せるという意気込みを示す内容になったことは事実である。しかし、アナリストの間では一定の効果は期待できるとの見方は強いものの、10年間で6,700億ドル(日本円で約80兆円)の財政支出の拡大となるだけに、財政赤字への懸念が効果を相殺するのではないかとの声もあって、評価は分かれている。今回の景気対策は10年間で6,700億ドルにも達するため、大胆な政策であるとの見方が多く、強気の景気回復シナリオを描くブッシュ政権への肯定的な評価は高い。

しかしFRBの不安感は強いようだ。FRBのグリーンスパン議長が懸念するのは、このところ物価が持続的に下落するデフレの顕在化が進んでいる点である。昨年12月、クリスマス商戦後の大規模セールも集客力が弱く売上高が伸びなかった背景には、こうした物価下落の懸念が強まっていたことがある。

グリーンスパンFRB議長(76)の任期は2004年6月に終り、任期の延長はない。従って、このところFRB議長は政治的な配慮をみせず、ずばずばと政策を批判している。昨年11月の議会証言で同議長は「市場は現在実施中の減税を所与とみなしており、恒久化だけでは景気刺激効果はない」と証言している。また、今回の景気対策についても「景気対策の見かけの額は大きいが、果たして効果があるのか」と不安感を表わしている。今回の配当課税撤廃についても、税制の優遇措置がある確定拠出年金401Kを通じて株式を保有する大半の米国民には、実は恩恵は小さいのではないかとも発言している。

FRBは昨年11月6日のFOMC開催頃からデフレ懸念を明確に発言するようになった。デフレ先進国の日本と同じ失敗を繰り返さないように、FRBは昨年から次々と金融政策で手を打ってきたが、このところの景気の実体からFRBの内部では、現在までの財政・金融政策だけでデフレを防げるのかとの懸念が深まってきている。景気対策による楽観シナリオを振りまくブッシュ政権とは対照的な景気見通しの色が濃くなってきている。

FRBは特に@昨年末のクリスマス商戦は盛り上がりを欠いたままで幕を閉じ、11月と12月の2ヵ月間における主要小売業の既存店比較ベースの売上高は前年同月比わずか1.5%増で、過去30年間で最低の伸びにとどまったこと、A中国製品の輸入急増を背景に電気製品、衣料品などの価格が下落し、名目売上高を押し下げたこと、を強く懸念している。今後一段と需要が弱まり、デフレが顕在化する懸念はないのか、強い疑問を持ち始めているようである。

新年に入って米国では、景気指標の悪化から2003年の景気見通しに関して楽観派が後退し、中間派から悲観派への転換が多くなっている。米国のエコノミストのなかには、2003年の世界経済についていくつかの不確実性の発生を懸念する声が強くなっている。

その最も大きな懸念は地政学的状況の先行きである。特にイラクに対する戦争に踏み切る可能性とその時期、結末である。現状では早期終結が最善のシナリオとなっている。しかしである。想定が外れて対イラク戦が好ましからざる結末に至れば、状況は大きく悪化して、世界経済の見通しは大幅に下方修正されるであろう。

第二の懸念は、景気が世界的に景気循環上低い状態にあって本格的な回復に至っていない点である。設備投資の低迷は終息したものの、投資は非常に慎重で更新サイクルの域を出ていない。企業はバランスシート修復に熱心で、設備投資が増える可能性は低い。また、個人消費の持続性には個人所得の伸びが鈍化しているため、懸念が強い。今後数ヵ月に渡って上昇するとみられる失業率も足かせとなっている。家計部門は貯蓄を増やす可能性があって、これも消費を圧迫する。

第三の懸念は、公的部門の赤字の再発である。ユーロ圏でも財政赤字が国内総生産(GDP)比3.0%の上限を超えてしまった国がいくつかみられる。米国でも、財政は2000年のGDP比1.2%黒字から2003年には恐らく同3.3%の赤字へと逆戻りしそうであるが、これは過去50年間で2番目の大きな変動である。対イラク戦争が財政に与えるインパクトは予想をはるかに上回るかもしれない。赤字の拡大は金利、利回り曲線、国債発行、投資家のポートフォリオ、生産性の動向、企業収益、さらにはドル相場に非常に大きな影響を与えることになるであろう。

以上の点を考えると、ドルの下落傾向は今後も続くとみられる。ドル相場を左右する最大の要因は、GDP比5.0〜6.0%に達する米国の経常赤字をどうやって手当てするかという問題である。
特に、米国の資本収益率が他国と大差ないレベルに低下し、公社債市場の見通しが政策変更や景気動向によって悪影響を受けたりすれば、赤字のファイナンスはますます難しくなる。以上の点を考えると2003年の世界経済は2002年より大幅に明るくなると確信をもって言うことはできない。

米国のエコノミスト達には、このような世界経済の見方をする人達が多くなってきた。2002年1〜9月累計の対米直接投資は280億ドルと2001年同期間の三分の一から四分の一に急減した。資金先細りの懸念はドル・株式相場を不安定にさせる。イラク情勢の緊迫化で、このところさらに資金流入の減少が止まらない状態になっている。また、各国とも昨年よりデフレ懸念が高まったことから、デフレを回避するため通貨切り下げ競争の動きを強めている。

昨年11月下旬あたりからドルと金の相場は1930年代半ばと同様の動きを始め出した。30年代、米国は物価上昇とドル安を望んでいることを示すために、金に対してドルを70%近く切り下げた。30年代には世界中でデフレが激しくなったため、各国政府は通貨切り下げ競争を余儀なくされた。そんな動きが、現在のデフレ下の金高騰を引き起こしているのかもしれない。

●橘田レポートは今年で46年目を迎え、私の年齢は70歳を超えた。今日まで続けられたのは人生の師と仰ぐ人達や読者の皆様の温かい声援のお蔭である。父は自称高橋亀吉先生の門下生である●

平成14年6月17日号の当橘田レポートに「田舎のおじさん達の柔軟な投資の考え方がこれからの投資の道だと思ったこと」との見出しで山梨の実家に出入りする植木職人の話を載せたが、先日その職人から新年の挨拶を兼ねて近況の電話を頂いた。その話によると、昨年は春が早く来て暖かくなるのが早かった分、秋が短く、寒さの訪れが早かったということのようだ。今年も1月以降、比較的暖かく春の訪れは昨年より早く、桜は3月10日頃咲くのではないかとのご託宣を頂いた。昨年の桜の開花は3月16日であったが、それより今年は1週間位早まるようである。そう言えば、今年、北海道への流氷の接岸は昨年より1週間早いようだ。彼は米国で同時テロのあった年末に、テロの焼跡から金塊だけがそのままの形で掘り出されたのをみて、仲間数人で1トロイオンス'0〜280ドル程度の時に金に投資した人である。その金はどうしたかと尋ねると「今年1〜3月頃が売るタイミングであろう」との返事が返ってきた。どうやら手仕舞いのタイミングを心得ているようである。田舎のこういう人達の投資は、色々理屈を並べずに単純に売り買いを実行することで利を得ているようで、我々も見習うべきであると感心した。今日この頃である。これもひとえにレポートをご愛読頂いている方々と、情報の提供をして頂いている方々の温かいご協力の賜物と深く感謝している次第である。橘田レポートの生い立ちは昨年1月7日号の当レポートで詳細に記してあるので、ご覧頂ければと思う。そこで、2001年9月27日の日経金融新聞に橘田レポートの誕生秘話やレポートを支えてくれる方々などを紹介した朋友録が「人生とレポートのおやじ」と題して掲載されたのでご紹介しよう。[朋友録 東短リサーチ(株) 橘田昭次特別顧問]

<人生とリポートのおやじ>
金融界での付き合いも長く、私の人生の指南役となった恩人も数多いが、なかでもすでに鬼籍に入られた元東京短資取締役会長の柳田友生氏は忘れられない。私の青春時代の「おやじ」であるとともに、私が長年発行している「橘田レポート」の生みの親でもある。「市場のうわさで動いたら駄目だ。取引先に行って話を聞いてこい」とよくしかられた。自分の目で見て、体で感じた情報を集めることの大切さを教えられた。忘れられないのは1960年頃によく言っていた「経済は70年周期で大恐慌が、35年周期で小恐慌が訪れる」という言葉だ。65年のミニ・クライシス、90年代後半のビッグ・クライシスでその教えは現実のものとなった。おやじは「インフレ時代の運用は金利商品に。モノへの投資はするな」という信念を持ち、世の中が土地神話に酔いしれていたバブル時代も会社の内部資本の蓄積に努めた。

私は57年から金融市場やマクロ経済の動きをまとめたリポートを毎週発行している。当時は東京の金融市場の動きが地方の投資家にわかりにくく、中央とは大きな情報格差があった。おやじは「これからは情報の時代だ」と言って、地方投資家向けのリポート作成を私に命じ、「橘田レポート」の誕生となった。一枚の便箋に一週間分の金利予測と市場情勢をまとめ、土曜日に速達で発送する。市場が始まる月曜日には届く仕組みだ。インターネットどころかファクスすらない当時では、それが最も速かった。最初は10件程度だった発送先は1年後には100件、今では数千部の発行となっている。現在のレポートを支えてくれるのは全国の読者だ。太陽インベストメント代表取締役の田中義博氏、アルママターファンド投資顧問社長の坂本軍治氏、ワカバヤシ・エフエックス・アソシエイツ代表取締役の若林栄四氏、高知信用金庫理事長の山本正男氏の「四人衆」には特にお世話になっている。私の「人の輪」がこれほど広がったのも、おやじの一言のおかげである。――― 以上が朋友録の内容である。

昭和30年代初めの通信設備の発達していない時代に郵便を使って投資家に情報を送った橘田レポートは「戦後の情報誌の元祖ではなかったか」と言ってくれた方がいらしたが、あるいはそうではないかと思っている。橘田レポートを第1号から現在も毎週送り続けている方が全国で現在10名程度いらっしゃる。橘田レポートを連続して読んでいると、日本とか米国など世界の経済の流れが手に取るように分かるとの年賀状を頂いている。私の青春時代には、すでに鬼籍に入られたが、二人の人生の師がいる。一人は、日銀出身の元千葉銀行玉置頭取。もう一人は、大蔵省出身の元十六銀行清専務である。お二人には人情の機微を教わった。柳田友生元東短会長も加わって、三人で「おまえももう70歳になったか」と言っているような気がしてならない。地方に行って必ず話し合う現役の人達が大勢いるが、なかでも青森銀行の梅内会長と井畑頭取、大分銀行高橋靖周頭取、十八銀行藤原和人頭取、京都銀行池田紘章専務、スルガ銀行岡野光喜社長、高知信用金庫山本正男理事長、十和田信用金庫太田原専務理事、大竹信用金庫作本理事長などの方々には昔からお付き合いを頂いている。高知信用金庫の山本理事長は元官僚のご出身ではあるが、こちらが1を言うと10を知る優れた才能を持たれた方で、高知信金を信金業界業績ナンバーワンの会社へと発展させた方である。次から次へと発想の転換を図り、店内の機械化、店舗の配置など、とても大銀行でも考えられないような改革を進めている。私が最も尊敬している経営者の一人である。また、異色の友人として日中投資・貿易促進会の古賀文三代表がいる。彼はブルチン会報というウィークリーレポートを発行している。ブルチン会報は、10年前に中国が今日のような国になることを信じて、誰も見向きもしなかった中国経済を解説し、中国株投資の情報を流し続けてきた。その結果、昨年の波乱含みの世界株式市場にあっても投資家の富を守ったことは称賛に値しよう。中国経済は2008年のオリンピックに向けて大きく邁進していくであろう。現在の中国の社会環境は日本の昭和35〜36年位の水準であり、中国国民も少し財布が膨らみ始めた。2008年頃には国民の経済的余裕も高まって、中国株式は花形時代を迎えよう。彼はそこを見込んで、今こそ中国株に投資する時だとウィークリーで力説している。貿易促進会の電話番号は03−5275−0434である。以上の方々に支えられながら橘田レポートは毎週発行されている。

橘田レポートは現在3名のスタッフに支援されながら発行が続いている。思い返してみるに、橘田レポートの文章は「間抜け」の文章と思っている。ある著名なジャーナリストが3年前にこんな話を講演会でしたのが耳に残っている。「レポートなどの文章は間抜けと思われる位のものが多いほど読者に長く読み続けられる。それはきれいな文章はおいしい水を飲んだ時に体の中に何の抵抗もなしに入ってしまい、おいしさを忘れるのも早いのと同じであるからだ。しかし、間抜けな文章は体のどこかに抵抗感を生んで、なかなか忘れられないものを残す。間抜けな文章ほど新しい言葉や表現を生む」という内容であったように思う。これは私の己惚れかもしれないが、46年間も橘田レポート を発行できたのも、私の間抜けな文章を常に疑問を持ちながら、それに魅力を感じつつ読んで頂けた読者がいらっしゃったからであると感謝している。私は人生の中で一番感謝しているのが青春時代に柳田友生氏という人生の師に巡り会えたことである。明治生まれの強い気骨を持ったおやじから、人のあるべき道、商売の道を厳しく叩き込まれた。もう、あのような経営者には巡り会えないであろうと思う今日この頃である。私が今日のようなレポートを書くようになった背景には、少年時代にその根があったと思っている。私の父は戦後、村会議員と村会議長を長い間勤め、戦後の農村の環境変化にどのように対応し改善していくかに精力的に取り組んだ人である。子供の教育には厳しい人であった。父は毎月2、3回東京に経済の勉強に来ていた。自ら「高橋亀吉先生の門下生」と称して、毎月数回、先生の研究会に出席し、先生を熱烈に尊敬していた。先生に教わった講義の内容を謄写版で印刷するのが私の役目となっていた。父はその印刷物を議員に配って講義をしていたようである。こうした少年時代の経験が、今日の橘田レポートにつながったと思っている。高橋亀吉先生は生涯経済評論家として現役を貫かれてきた。私もそんなことができればと生意気なことを考えている。しかし、そうしたことが経済の「ケ」の字を教えてくれた父への恩返しになるのかなと思っている。とにかく頑張っていくつもりである。皆様方のご声援を心よりお願い申し上げる。

(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次 記 )

本資料は情報提供を目的としてのみ作成されたものであり、お取引の最終決定は御自身 の判断でなされますよう御願い致します。本資料に記載されている内容は、信頼できる 情報源に基づき作成されたものですが、弊社はその正確性および確実性を保証するもの ではありません。また、本資料を無断で転送・引用・複製することを固く禁じます。

これからも、橘田昭次さんが末永く良質のレポートを執筆していただくことを心から願います。Ddog

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