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(2003年1月7日 日本経済新聞(夕刊)「十字路」掲載)
ドルの暴落は、長期金利の上昇をうながすが、金利が上昇するほどのドル安は、アジアや欧州を大混乱に陥れる一方、米国経済の改革を進める。結局は、ドル高に戻らざるをえない。
ドルが下落し、金利が上昇するのは、米国の経常赤字に見合うだけの資本の流入がなくなるからだが、この場合、金利に敏感な消費から景気は悪化し、輸入は急減し、経常赤字は縮小していく。とりわけ、住宅ローンの低利借り換えで、バブル化している高額消費への打撃は想像を絶するものになるはずだ。
企業部門がバブル崩壊後のバランスシート調整を余儀なくされ、設備投資を抑制し続けるなかでの消費の低迷は、米国の不況を本格化させ、対米輸出に頼ってきたアジアや欧州の貿易黒字の縮小、不況に加えて、通貨高によるデフレ化を促進する。
米国への資本流入の縮小が、米国景気の悪化の反映だとしても、同じく不況化するアジアや欧州が米国離れする資金の受け皿になりうるであろうか。行き場を失った資金が金買いに向かう、というのは、一つの有力な選択ではあるが、金市場は、その規模があまりに小さい。
仮にドルが下落し、金利が大幅に上昇することを想定した場合、賢明な資金は、そのアジアや欧州の経済への打撃を考えて、ドルの下落はあっても、それは一時的なものでしかない、と見なすはずだ。
経済のデフレ化懸念と株安でリスクのとれなくなった機関投資家の対米投資が一段と落ちても、本来の意味でリスクのとれる個人投資家は、対米投資を増やし続け、結果的にドルを支えるであろう。ドル暴落論の怖さは、米国経済の不安定さよりも、アジアや欧州のもろさを浮かび上がらせ、それによって、市場がドルの相対的な強さを再認識するところにある。
(中前国際経済研究所代表 中前 忠)