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2003年、新しい年。干支は癸未(みずのとひつじ)。
株式市場では、未年は「辛抱の年」になるという。また癸(みずのと)は、「陰の
極、ものの終わり」を表すとされる。その格言と十干(じっかん)の意のとおりと
すると、今年はさしずめ“種蒔きの年”というところか。なかなか底打ち感のでな
い株式市場の参加者にとっては、試練の時代が続いている。その中で逆に金市場の
方は、活況を呈している。ここまでは、まさに「金は資産の保険」、教科書どおり
の展開である。
年始1月2日から取引が始まっている欧米市場では、3日(金)のNY市場で指標
となっている取引が351.6ドルと終値ベースでも350ドルを超え、新値を更
新、心理的な節目を突破してきた。
国際商品である金の取引は、日本の正月休み中も続いていた。休場となるのは、1
月1日のみである。そこで2002年の主要株式市場の指数と金価格を最終取引日
を基に騰落率を調べてみた。結果は以下のようになっている。
《2002年騰落率》
国内店頭小売価格(住友金属鉱山ベース)
1220円(1/4) ⇒ 1374円( 12/26) +13%
NYコメックス(商品取引所)
278.1ドル(1/2) ⇒ 348.2ドル(12/31) +25%
ロンドン市場(午前の値決め)
278.1ドル (1/2) ⇒ 342.75ドル(12/31) +23%
金銀鉱山株指数(XAU:フィラデルフィア証券取引所)
54.8(1/2) ⇒ 77.23(12/31) +41%
ダウ工業株30種平均
10073.40ドル(1/2)⇒8578.95ドル(12/31) −17%
ナスダック総合株指数
1979.25(1/2)⇒1335.51(12/31) −33%
DAX(独)
5107.36(1/2) ⇒ 2892.63(12/30) −43%
FTSE100(英)
5218.30(1/2)⇒ 3940.40(12/31) −24%
国内価格は10%以上の上昇率となったが、為替市場でドル安が進んだ関係(円高)
でドル建て価格の上昇率の方が高かった。金市場のここに来ての快進撃は、NY市
場ベースで見て12月単月で21営業日中、前日比上昇が16日、下落が5日とい
う結果からも明らかだ。過熱状態であるのは否めないが、“勢い”とはこういうも
のである。12月は傷も癒え、目覚めた“ガメラ”が大暴れ状態だったのだ(参照
2001年6月12日配信号)。
株式市場の方は、ご覧のような状況だが、ナスダックおよびドイツ市場の下げが目
立っている。以前、ヨーロッパの保険会社など金融株の下げについて取り上げたが
(2002年10月3日、11日配信号)、同様にフランス市場(CAC40)の
方も33%の下落となっている。
当欄では、以前から米国株バブルの崩壊は「世界バブルの崩壊」でもあり、今は
「清算の時代」であり、その調整に時間が掛かるとしてきたが、株式市場の結果は
それを示すものである。そしてそれは、(上昇下落を繰り返しながら)いまなお続
いている。
さて金市場の方だが、完全にイラク開戦モードに突入している。クリスマス休暇前
後と年末年始の薄商いのなか前日比4〜5ドル程度の乱高下を繰り返しながらも、
下値を切り上げているのは、イラク・プレミアムが積み重ねられていると理解して
いいだろう。北朝鮮の核問題もそれに拍車を掛ける。
値を上げている原油市場の状況も金をサポートしている。
こちらの方もイラク開戦を織り込みつつあるわけだが、イラク開戦、35ドル程度
までの原油価格急騰、(待ってましたと言わんばかりの)利食い売り急増、価格急
落、というシナリオがある。いまのところの多数意見であるが、果たして事はそれ
ほど簡単に済むのだろうか。右往左往する投資マネーの存在を考えると、その矛先
がこれから更に原油そして金に向けられる可能性があり、その波乱の程度は多くが
予想している程度を超えるのではないか。専門的には、ナイメックス(NY商品取
引所)の原油のファンドのポジション(取引状態)を見て思うし、金も確かに“買
い(ロング)”が多く、セオリーからは調整入りとの判断ができるが、下げたとこ
ろはすかさず買われていること、また“回転が効いている(利食い売りをこなす新規
買いが入っている状況の意)”ことを考えると、値動きが早まる可能性もある。「株
がダメなら住宅を」という流れを以前書いたが、「原油を」、「金を」、という図
式もあるのである。それだけ世界的にリスク係数が上がっていることを示すのだか
ら、「金が新値・ん(謹賀新年)」などとシャレている場合ではないのだが、明る
い気持ちで行こうということでどうかお許しあれ。
来週は、金市場と株式市場を見に、上海へ行く予定です。(1月6日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎