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未年を決める「2人の総裁」――日経金融スクランブル
「米国株上昇に助けられたよ」(佐藤博コスモ証券商品部長)。2003年最初の取引となった6日の株式市場では、日経平均株価が反発。市場関係者はとりあえず胸をなで下ろした。もっとも佐藤氏がいうように「海外頼み」の面が否めなかった。
取引時間中、年頭記者会見に臨む小泉純一郎首相の発言が市場に伝わった。
「あらゆる政策手段を動員し、デフレ抑制に向け日本銀行と一体となって取り組む」。この言葉が象徴する通り、「今年は国内の経済政策が株式相場の命運を左右する」との見方が市場で強まっている。
コメルツ証券は6日、昨年末までに集約した米欧機関投資家20社への聞き取り調査の結果を公表した。それによると、米欧勢が向こう3カ月の日本株投資に際して重視する要因の上位に、「金融システム安定化」「政府のデフレ対策」などとともに「日銀総裁人事」が入った。
3月に任期が切れる速水優日銀総裁の後任を巡っては、市場で様々な思惑が飛び交っている。小泉首相が「デフレ退治に積極的な人を」と強調していることから、インフレ目標導入が持論の中原伸之前日銀審議委員を有力候補の1人とする見方が根強い。
「海外では、中原氏に限らずインフレ目標導入に前向きな人物を希望する声が多い」と、先の調査をまとめたコメルツ証券の宮島秀直ストラテジストは話す。日本のデフレに対する危機感の裏返しといえる。「もし導入が決まれば海外投資家は金融政策の転換を象徴する決断と受け止め、日本株を買ってくる可能性が大きい」という。
今年の経済政策と株式相場のカギを握るもう1人の「総裁」がいる。9月に任期が切れる自民党総裁、つまり小泉首相だ。
年初の米国株高は、ブッシュ大統領が発表する見通しの向こう10年で6000億ドルの景気対策が手掛かりとなった。国内市場では「緊縮予算にこだわる日本と対照的」と、政策対応のスピード格差にため息を漏らす向きが多い。
もちろん政府が多額の借金を抱える日本と、米国とでは財政状況が大きく異なる。だが「短期的な経済動向を軽視して財政均衡に固執すれば、デフレが税収不足を招き、中長期の構造改革シナリオも狂う」(第一生命経済研究所の嶌峰義清主任研究員)。そうなっては元も子もない。 転機を迎える可能性はある。今年は自民党総裁選だけでなく、4月に統一地方選を控え、衆院解散・総選挙の思惑もくすぶる。「小泉首相は支持率をにらみつつ、早ければ3月までに景気刺激政策に転じる」。コメルツ証券の宮島氏はこう予測する。
「戦前の昭和恐慌当時も、明確な政策転換が不況克服の決め手になった」。クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券の岡田靖チーフエコノミストは強調する。
1930年(昭和5年)前後、株式相場は第一次世界大戦が生んだバブルの崩壊から10年余りを経て、なお低迷が続いていた。浜口雄幸首相・井上準之助蔵相のコンビが強行した緊縮財政や金本位制復帰による円高がデフレに拍車をかけたためだ。
東京証券取引所の前身である東京株式取引所の株価を指数化すると、犬養毅首相・高橋是清蔵相が就任し、金本位制離脱による円安政策や積極財政への転換、日銀の国債引き受けなどを打ち出した1931年以降、ようやく回復に向かっている。くしくも今年と同じ未(ひつじ)年だ。
「2人の総裁」が金融・財政政策の転換に踏み切れば、今年の株式相場は戦後初の4年連続安を回避する望みも出てこよう。前例のない政策には副作用の恐れも指摘されているが、それらへの対処を含め政策の総動員が求められている。
(木村貴)
◇「片翼飛行」見透かす市場――「日経金融スクランブル」
7日の東京株式市場は日経平均株価が反落。この日の市場参加者の関心は日本時間の8日未明に発表される米国の景気対策に集まった。減税規模が6000億ドルを超える規模に膨らむとの見通しから、米国の景気回復が早まるとして、日立、東芝、シャープなど海外依存度の高い輸出関連銘柄をはやす動きが見られた。
大手電機や自動車などを中心に主要製造業の海外依存度は一段と高まる傾向にある。大和総研によると、東証一部上場の主要製造業205社を対象にした調査で、2003年度の海外売上高比率は2002年度に比べ1.1ポイント高い39.8%になる見通し。同比率は1999年度には34.8%だったが、その後一貫して上昇している。
大和総研では非製造業も含めた主要300社(金融は除く)の2002年度の経常利益予想を前年度比73%増、2003年度も同17.5%増と見込むが、そのけん引役が海外部門だ。「デフレ下で内需が極端に低迷しており、海外に活路を見いだすしかない」と成瀬岳史シニア・アナリストは見る。
その典型例が建設機械業界だ。自動車や大手電機のように目立たないものの、コマツ、日立建機など大手建機各社は2003年3月期にリストラ効果と海外需要の伸びをテコにV時回復を果たす見通しだ。
最大手のコマツは今期、建機部門の国内売上高が前期比10%減の2350億円になる一方で、海外売上高は10%増の5200億円となる見通し。90年代初めには約6割あった国内の比率は3割強に低下する。日立建機も今期、海外売上高が初めて国内売上高を上回る。建設ラッシュが続く中国、中東などの市場拡大が寄与する。
コマツは今期の連結営業損益を290億円の黒字と見込み、前期の132億円の赤字から急回復する。この利益の回復分の約75億円分が海外売上高の増加によるものだ。利益率が比較的高く、収益への貢献度も大きい。 「製品への信頼度から価格も高く売れる」とコマツの坂根正弘社長は自信を示す。それが顕著なのが米国や韓国勢がシェアを奪い合うなかで、日本勢がシェアを伸ばす中国市場だ。中核製品の油圧ショベルの価格は国内よりも2割は高いにもかかわらず、シェアは約20%と米キャタピラーの約15%を上回る。
キャタピラーが圧倒的なシェアを占める米国市場でも、コマツは昨年から本格投入している新製品をテコに健闘している。「海外のコマツのシェアはこの1年で軒並み上昇している」(ドイツ証券の星野英彦アナリスト)。
ここから浮かび上がるのは日本のトップ企業の競争力は決して衰えていないことだ。とくに技術の蓄積が必要でアジア各国の追随が難しい機械、精密、自動車などではその傾向が顕著に出る。だが海外市場への依存は危うさも抱える。為替相場の動向に左右されやすく、中国や中東では政治リスクもくすぶる。
内需を欠いたままの「片翼飛行」。外需頼みの不安定な企業業績の行方を見透かすかのように、コマツの株価は400円前後と昨年初めを2割下回る水準で低迷している。
建機の内需は90年代初めまで世界全体の約4割を占めていたが、2002年には2割を切る。財政面の制約から日本がこれからも公共投資を本格的に増やせないとすれば海外シフトは一段と強まらざるを得ない。
主要企業の海外市場での健闘ぶりを見れば日本経済の課題ははっきり浮かび上
がる。個別企業のリストラはもはや限界に近づいており、急務なのは需要サイド
の対応だ。海外頼みの危うさを抜け出し、企業の業績回復を軌道に乗せるには、
円安誘導や財政の追加支出など政府の思い切った内需振興策が必要になる。(橋
本隆祐)