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きったレポート1/6号 米国経済は楽観派が大勢
投稿者 Ddog 日時 2003 年 1 月 08 日 00:14:05:


内外政治経済・短期金融市場の動向きった週間レポート  平成15年1月6日号

●2003年の米国経済見通しは楽観派、悲観派が入り交じっているが、楽観派が大勢を占 めている。しかしイラク開戦を控えて、向こう半年は低成長という中間派見通しが勢いを得ている●

2002年の米国景気は二番底懸念を振り切って、どうやら回復軌道を維持したようである。だが、消費動向を占うクリスマス商戦が盛り上がりに欠けたまま幕を閉じたことに みられるように、GDPの7割を占める消費に陰りが出るなど景気の浮揚力は弱い。企業は生き残りをかけたコスト削減のためのリストラを続け、片や家計の借金消費体質は強まる一方であるため、楽観はできない状態である。
2003年の米国経済については、昨年末の調査では二通りの見方があったが、楽観論が大多数を占めた。アナリストの多くは年間成長率を3.0%程度と見込んでおり、緩やかなインフレと企業収益の改善が期待される。
FRBの一部の理事はさらに楽観的で、成長率は3.0〜4.0%に達するとみている。設備投資の緩やかな回復に支えられて、個人消費が引き続き力強く伸びるというのが大方の見方である。一方、少数派の悲観的な見方は、財政政策ではもはや景気浮揚効果は見込めないことや住宅ブームが沈静化したことを挙げて、個人消費の伸びがしばらくは後退するとみている。
そして、再度の株価暴落、あるいは戦争や新たなテロ攻撃の恐れなど、消費者信頼感に衝撃を与えるような事態が発生すれば、米国民はこれ以上負債を増やすのはやめて使い切った貯金を増やそうとするであろう。
少数派の悲観論者が今年の米国経済の中で最も重大な懸念としているのが、これまで米国の個人消費をけん引してきた「住宅ローンの借り替えブーム」問題である。昨年後半には、米国では職場がないのに住宅だけ増えても仕方がないとのムードが高まった。利下げを受け、昨年の住宅ローンの借り替えは1兆3,000億ドル程度となった。
借り替え世帯のほとんどは持ち家の評価額の上昇分を担保に借り入れを増やして現金を手にした。その合計額2,000億ドルが借り替え世帯の懐に入ったと考えられる。自動車メーカーの低金利販売促進キャンペーンに多くの人が財布のひもを緩めたのも、こうした事情があったためだ。
しかし現在、住宅ローン金利が横ばいになり、借り替えの魅力は急速に薄れてきている。昨年の個人消費は株価が暴落する中で、上記のような低金利と不動産価格の上昇が生み出す住宅ローンの借り替え錬金術で拡大させてきた。しかし、住宅ローン金利はすでに底を打ったと考えられる。家計は返済負担増から支出切り詰めを迎える状況へと変わってきつつある。

一昨年からの企業による猛烈なリストラが利益回復を演出し始め、緩やかながら企業収益は上向きだした。設備投資も、最悪期は脱したとはいえ主役は省力化投資で、人件費のかからない機械化であるロボットシステムの導入が始まり、今年は「雇用なき業績回復」の様相が高まり始め、年後半失業率は7%台に突入しそうである。
FRBの金融政策の運営方法は、まず企業の調整に始まって、次に家計の調整へと進める意向のようだが、このままだと企業部門の調整が終らないうちに家計の調整が早々に始まりかねない。クリスマス商戦は、商戦期を含む11〜12月の2ヵ月間における主要小売業の既存店売上高が前年同期比1.5%増と、過去30年で最低の伸び率にとどまりそうなことから、年初には2002年10〜12月期の実質経済成長率は1%台割れもあり得るという少数派の悲観的な見方が力を得てきている。
値引き慣れした消費者はクリスマスセール期間中、小売各社の低価格攻勢にも踊らず買い控えを続けてきた。クリスマスセールが終った12月26日以降、小売各社はクリスマス後に始めた安売りを5割引き、6割引きで実施したが、これには消費者は飛びついているという状況である。クリスマスセールに消費者が消極的行動をとったのは、消費を支えてきた要因が剥がれ落ちているからである。
その第一点はブッシュ政権が2001年7月に実施した所得税減税効果が薄れ始めてきたこと、第二点は低金利と不動産価格の伸びが鈍化してきたこと、第三点は金利低下の底打ち感から自動車販売の息切れ懸念が出てきたことである。米国では昨年後半のクリスマスセールが落ち込んだことから、今年の景気への悲観論が高まり始めている。年末年初には少数の悲観派の景気見通しが幅を利かせてきた。
しかし、こうした悲観論者の見通しも、一つの景気悪化の要因が次々と芋蔓式に悪い指標を生んでいく議論であって、景気見通しの正当性に欠けるものである。特に債務が及ぼす悪影響は誇張されがちな状況となっている。
米国アナリスト達の2003年の平均的な見通しは概ね楽観的である。堅調な個人消費と設備投資のなだらかな回復を追い風に、景気は安定的に拡大していくという見方が大勢を占めている。2002年10〜12月期の実質経済成長率は1.0%程度とみており、2003年1〜3月期は2.0%強、2003年10〜12月期にかけては3.5%程度へ高まっていくというものである。
予想通り景気が回復してくれば、2003年末にかけて金融政策は引き締めに転じ、FF金利誘導目標は2.25%になるであろう。そして2003年半ばには景気は緩やかな回復基調をたどり、二番底転落の恐れは完全に消える。そうなれば短期金利を中心に市場金利が上昇し始め、長期金利も2003年末には強含み、10年物国債金利は4.8%程度になるであろうとのアナリスト達の見方が一般的のようだ。
こうした見方は対イラク開戦も含めての見方となっているが、戦争は短期間で終ることを前提にしている。その他に有力な見通しとして、米国経済は今後6ヵ月程度は低成長に甘んじ、景気回復が軌道に乗るのはその後になるであろうという楽観派と悲観派の中間的な見通しが最近台頭して同調者が多くなってきている。
この中間派とも言える景気見通しは、2004年の大統領選に向けての力強い成長を確実にするための政策である新たな減税の必要性が中心となっている。減税は続投を望むブッシュ政権にとっては重要な一手である。楽観派、中間派、悲観派のいずれも遅かれ早かれ米国景気が回復することは間違いないとの見方である。
しかし、いずれの見方も景気回復によって、3年続いた株価下落に歯止めがかかるであろうが、大幅な反発は期待できないとしている。株価には依然として割高感が漂っているため、景気の本格的回復がない限り、ダウ平均株価は1万ドル程度までの上昇にとどまるであろうとの見方が多い。イラク開戦というリスクが大きな重しになって、本当の経済の姿が読めないというのが本音のようだ。

● 新年を迎えブッシュ大統領はいよいよ2004年の大統領選を睨んだ経済再生政策を発表する。株価は大きく反応しようが、ただイラク開戦を間近に控えて、これが大きな重しとなろう●

ブッシュ大統領は、2004年の大統領再選を目指して、いよいよ経済再生政策をスタートさせる。懸念であった議会上院議席の過半数割れも昨年11月の中間選挙で解消し、共和党は上下両院で多数を占める議会運営ができるようになった。また、昨年末には減税に消極的であった経済閣僚2名が辞任するなど、減税による景気対応策は進展に弾みがつく状況となった。
ブッシュ大統領は昨年秋まで、外交問題に重点を置いて内政への比重はやや軽いと言われていた。しかし、3年に及ぶ株価の下落は景気にデフレ感を強める状況となった。もし経済問題に手を打たないと、父ブッシュ元大統領の轍を踏んで、経済問題を要因に2004年の大統領再選を危ぶむ声も高まってきた。バブル崩壊による景気の後退で財政赤字が拡大する中での減税にはリスクがあるものの、あえて減税を中心とする景気対策を打ち出そうとする背景には、減税なくして大統領選は勝てないとの判断があった。

11月7日、ブッシュ大統領は景気対策として向こう10年間で6,000億ドル(日本円で約72兆円)規模の案を発表する模様である。減税に加えて失業対策や地方財政向けの支援など歳出措置が膨らむためで、景気刺激の姿勢を鮮明にすることが狙いのようである。
景気対策は従来の減税を中心に向こう10年間で3,000億ドルとしていた規模の2倍に達する見込みのようだ。歳出増は、税収減で財政が苦しくなっている地方政府に対する連邦政府からの支援などが中心となる見通しで、失業手当給付期間の延長、地方の低所得者向け医療保険への支援措置拡大、公共事業上積みなどが候補に挙がっているようである。
また、減税については配当への二重課税の軽減、設備投資促進、教育向け税額控除引き上げ、さらに現在段階的に実施している所得税率の引き下げの前倒し措置などが盛り込まれる見通しである。今回の経済対策は、イラクや北朝鮮への対応に加えて、米景気の早期回復が最大課題との判断を具現化したものである。また、今回の減税の内容は株式市場の活性化を意識した配当課税軽減が柱となっている。要するに株価対策が中心である。
米国では配当・利子所得などを給与所得と合算する総合課税方式を取っているため、配当にかかる所得税率は最高38.6%にのぼっている。ブッシュ政権はこうした配当課税を大幅に軽減する見込みのようである。

年末の取引は閑散だったが、ダウ平均株価は2003年1月2日には米供給管理協会(ISM)が発表した12月の製造業景気指数が好不況の分かれ目とされる50%を4ヵ月ぶりに上回ったことが好感され、8,600ドル強に急伸した。
今週7日、ブッシュ大統領は上記したような株式市場の活性化を意識した配当課税軽減を柱とする株価対策を発表する予定である。景気下支えに全力を挙げる政府の姿勢は株式市場にとって好材料になるとみられ、株価は上昇するものと考えられる。
しかし、決算発表シーズン直前とあって業績予想の下方修正などもあり、減税案と業績との綱引き相場となろう。すでにイラクとの開戦は避けて通れない秒読み段階に入ってきた。これが株式市場にとっては最大の重しとなるであろう。
3日には業績見通しの下方修正があったわりには相場全体は底堅い動きとなり、昨年大幅に下げたことで市場では相場に下方硬直性が高まったと見ている。あとはイラクとの開戦で急速な下げ場面もあろうが、開戦によって悪材料出尽くし感が強まろう。開戦によって大きく下げた場面が買い場を提供することになるのではなかろうか。ダウ平均株価は8,000ドル台割れで大底をつけることになろう。

● イラク開戦のXデーは1月中旬から2月1日内との見方が強い。今年後半から来年は北朝鮮を中心に東アジアが国際緊張の中心となろう●

イラク問題は重大な局面を迎えている。ブッシュ大統領は27日を期限とする対イラク査察団による国連への報告書提出を受け、攻撃に踏み切るかどうかの判断を下す模様である。イラク査察に関する国連決議に沿ってイラクが先月提出した大量破壊兵器計画についての申告書は、米英両国から重大な決議違反として拒絶され、国連からも多くの疑問点を指摘された。国連査察団はイラク科学者の聴取を進め、米国はイラク攻撃の態勢を大幅に強化している。
米国防省は、すでにイラク周辺に5万人の兵力新規配備を完了していることなどから、2月早々までにイラク攻撃の開始を予想しないわけにはいかなくなった。3日にはブッシュ大統領はイラクが大量破壊兵器の破棄に応じない場合には武力を行使する方針を改めて示し、すでにその準備は整ったことを強調している。
開戦のXデーは、1月17日から2月1日内でほぼ間違いないとの情報も伝わっている。12月後半に米政府は米軍部隊と周辺国に対イラク武力行使の最終準備命令を出したと言われている。英国の新聞の社説では「まだ米国に軍事力行使の正当な理由はみあたらない。
軍事力を行使するにしても、国連決議に従い国連の完全な支持を得なければならない。決断の段階であいまいさは許されない」と戦争への性急な動きを戒める論調が強い。イラク攻撃への米国の決意はほぼ明白であるが、それに至る具体的なシナリオが見えてこないという国際世論も強い。今月中旬以降来月初めにかけて、地政学的リスクの発生は避けられず、場合によっては世界経済の流れが短期間に大きく変化することも避けられないであろう。
一方、東アジアでも国際的な緊張が高まっている。北朝鮮が核施設の再稼動を表明したり、IAEA査察官の追放を決定するなどの核再開発計画を発表した。これに対して米政府は北朝鮮が核開発計画を放棄しない限り、一切の交渉に応じないとの原則姿勢を強調した。さらに、危機を演出することで妥協を引き出そうとする北朝鮮の瀬戸際外交に交渉で応ずる可能性のないことを明らかにした。
また、IAEAは緊急理事会で北朝鮮に1ヵ月間の猶予期間を与え、核兵器開発計画の放棄と核拡散防止条約の遵守を促す方針を固めたことを伝え。北朝鮮の核開発問題は、一応IAEAの査察官の追放でひとまず山場を越えたが、1ヵ月後にIAEAにどのような回答を寄せてくるかである。あるいは電力不足のために核開発に成功したとの発表をするかもしれず、今年の大きな波乱要因として国際緊張をもたらすであろう。
米国ではイラクの次に北朝鮮という考えが次第に高まってきているようだ。来年は東アジアが戦火に包まれる可能性も否定できず、日本も無軍備の状況に大きな変化を迫られることになろう。
● 2003年の日本経済の行方は。改革の一番痛みの大きい時期を迎える。自然体として円安となる金融政策が日銀に求められる。日銀新総裁ポストは、元大蔵官僚S氏とG氏の線も強まってきた●

2003年度の政府予算案が12月後半に決定した。一般会計は総額81兆7,891億円と前年度比0.7%増。政策に充てる一般歳出は47兆5,922億円と前年度当初予算比0. 1%の微増で2年連続の緊縮型となった。
米国は財政赤字拡大の中で大幅な財政支出をする模様であるが、日本はデフレが深刻化する中で、歳出を積極的に増やせない状況にある。これは来年度、税収が42兆円を割り込み、16年ぶりの低水準に落ち込むためである。歳入不足を補うため、当初予算としては過去最大となる36兆円超の国債を新たに発行する。
一般会計に対する国債への依存度は44.6%と国の借金体質は一段と悪化していく。予算案の内容を見ると改革は中途半端となっている。デフレ状態が続いていくことから、税収の急激な回復は当面期待しにくい。景気を下支えしながら財政改革の実行も迫られる厳しい状況が来年度以降も続きそうである。

政府の経済財政諮問会議は昨年1月初めに中期展望として向こう5年間の経済・財政運営の道筋を示したが、昨年末には基礎的な財政収支の赤字拡大に歯止めがかからないことを理由に、赤字半減目標を2007年度に1年延ばす改定案を了承した。景気と財政健全化の両立は難しくなっており、当面は景気配慮を優先し、将来的には収支均衡への取り組みを加速するという二段階で財政健全化を目指すことにした。
今回の中期展望の改定案について諮問会議の議員は、デフレ克服を目指し、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組むことを明記したと発言しており、さらにインフレ目標策の導入を含む金融緩和策の実行を日銀に求めたとしている。またデフレ克服の目標については、現行の2003年度中を2005年度以降に延ばした。デフレの進展ですべての改革が先送りとなっている。

日経新聞の総合経済データバンクのマクロ経済予測が発表されたが、それによると「2003年度の経済成長率は物価変動の影響を除いた実質で0.5%にとどまる見込みである。デフレは継続し、名目GDPは0.9%減と3年連続のマイナス成長とみている。また、日本経済に重くのしかかるデフレには解消の道筋がみえず、2003年度の消費者物価指数は前年度比マイナス1.0%と低下幅が拡大する見通しだ。輸出は息切れが鮮明となり、個人消費は0.4%増に減速する。雇用、所得環境は厳しさを増す。
企業の生産活動は停滞する。企業利益は2003年度は2.6%増と伸び率が急速に縮小する。設備投資は2年ぶりにプラスに転ずるものの、伸び率は1.1%増とごくわずかである。鉱工業生産の減少傾向がはっきりする2003年度半ばには、景気は後退局面に入る」などの分析結果が出た。2003年度の日本経済は停滞色が一段と強まり、2003年半ば以降には企業倒産、銀行の破綻、さらには失業の増加など日本経済の負の部分が急速に表面化していきそうだ。
このような経済状態が起るであろうと予測されるなかで、現状円相場がドルに対して強含みとなっている。年央以降には輸出の急減から外貨準備高は縮小方向に転じていきそうだ。
デフレ経済がこのまま続き、景気後退が進展していけば、あと7〜8年後には日本の外貨準備はゼロ近くになる。そうなれば円相場は否応なしに大幅な円安となろう。
日本の円が経済実体以上に買われているのは、外貨準備が高いことが大きな支えとなっている。米国を始め世界各国は、現状デフレに悩まされているので、どこの国も通貨安になりたいところである。
そうした中で日本だけが円安になることはなかなか難しい。日本は内需拡大のための本格的なデフレ対策を打ち出す以外にない。それによる円安だけが海外から認められる。そのためには、インフレ目標の導入とか日銀が国債の発行を全面的に引き受けるなどの非伝統的金融政策の採用しかない。イラク開戦で1ドル=110円程度の円高もある。3月の日銀新総裁ポストは財務省の巻き返しで、民間人より元大蔵官僚のS氏とG氏の線も強まってきたようだ。
(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次 記 )

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