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政府は4日、急速な少子化に歯止めをかけるため、子育て支援策の財源とサービスを一体として拡充する「育児保険」(次世代育成支援事業基金)制度の創設について本格的な検討を始めた。〈1〉育児支援策の財源に年金保険料の一部などを追加し、現在の年間約2兆5000億円から3兆―4兆円規模に拡大する〈2〉児童手当や保育サービスなど別々の制度を、市町村が総合的に実施し、利用者が選択できる仕組みに再編する――ことが柱。2004年の次期年金制度改正に合わせて内容を詰め、2006年度ごろの導入を目指す。
新制度の検討は、急速な少子化が将来の経済競争力や、年金など社会保障制度に悪影響を及ぼすと懸念されているのを踏まえたもの。政府は、育児支援を少子化対策の中核と位置付けているが、年間約75兆円の社会保障費のうち育児支援費は約3%の約2兆5000億円で、先進諸国に比べて不十分だとの指摘がある。
新制度では、保険料と国庫補助を財源とする公的年金財政から5000億―1兆円程度を育児保険に拠出する。少子化を緩和し、年金を将来負担する世代を育成することが、長期的に年金制度の維持に役立つとの判断からだ。保険料など新たな国民負担は求めない。さらに、所得税の扶養控除見直しなどの増税で5000億円前後の財源を工面する。
これに合わせて政府は、厚生保険特別会計の「児童手当勘定」を「次世代育成支援事業勘定」に改組し、市町村に財源を交付する。
一方、給付面では、児童手当などの「現金給付」と、保育所やベビーシッターなどの「サービス給付」について一体的に運営する。
現行では、〈1〉未就学児が対象の児童手当の財源は公費と事業主が負担〈2〉出産育児一時金は医療保険から支出〈3〉保育所は公費補助を受けて利用者が負担――などと別々の制度になっている。新制度では、給付を一体化し、各家庭に適したサービスを選択できるようにする。
ただ、年金制度は本来、老後の所得保障が目的で、趣旨の異なる育児支援に財源の一部を活用することには、政府・与党内に否定的な意見もある。
◆社会全体で子育て支援、年金財政厳しく異論も◆
政府が検討を始めた育児保険制度は、公的年金からの拠出により、広く国民が負担する社会保険的な制度とすることで、社会全体で子育てを支える「育児の社会化」の具体化を図るものだ。また、低所得者層などが対象の従来の児童福祉政策を、すべての子供が対象の総合的な少子化対策へ転換する狙いもある。
政府は昨年1月、1人の女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)が2050年に1・39に落ち込むとの推計を公表した。同年には65歳以上の高齢化率は35・7%に達し、2・8人に1人が高齢者の時代を迎える。こうした少子化の流れを変えるため、政府は昨年9月、男女別の育児休業取得率の目標値などを盛り込んだ包括的な少子化対策を打ち出した。さらに、少子化対策の行動計画作成を大企業と都道府県に義務づける「次世代育成支援対策推進法案」(仮称)を20日召集の通常国会に提出する方針だ。
こうした施策の一環である育児保険制度は、子育て支援策の充実に、幅広く社会の負担を求める社会保険制度を導入する発想で、厚生労働省の「少子化社会を考える懇談会」委員の山崎泰彦・上智大教授が提案した。具体例として〈1〉市町村が保険者となり、保育サービスなどを提供する介護保険タイプ〈2〉国が保険料を徴収し、育児費用など現金給付を行う年金保険タイプ〈3〉両者を一体化した総合的タイプ――の3案を示した。
政府が検討している育児保険は、現金給付とサービス給付を一体化し、国が財源を拠出して市町村がサービスを提供する形式で、〈3〉案に近い。大半を公費で賄うため、「基金」的な性格が強い。それでも「育児保険」と呼ぶのは、年金財政からの拠出の際、保険料を払う現役世代だけでなく、年金給付額の削減という形で高齢者にも広く負担を求めるためだ。
ただ、今後の収支見通しが極めて厳しい年金財政から育児保険に財源を拠出することには異論が出る可能性もある。国民の理解を得るには、どんな魅力的かつ効率的な子育てサービスを提供するのか、政府はその具体像を示す必要がある。
(政治部 川島三恵子)
(1月5日03:02)