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「デフレと生きる」総集編(上):デフレと生きるか、デフレと死すか [ブルームバーグ]
投稿者 あっしら 日時 2003 年 1 月 01 日 20:46:43:


東京 1月1日(ブルームバーグ):デフレ経済は持続可能なのか。可能でないとすれば、どのような選択肢があるのか。過去1年にわたって続いた連載企画「デフレと生きる」は、送信回数51回、インタビューした識者は総勢50人を数えた。この3月には日本銀行の速水優総裁が任期を迎え、新しい総裁次第で金融政策は大きく舵を切る可能性もある。3回に分けてこれまでの論争を振り返り、「デフレの時代」をどのように生き抜いていくべきかを探った。

物価は貨幣的現象であり、インフレと同様、デフレも金融政策で止めることができる−−。このような主張を行うマネタリストが前提にしているのは、MV=PY(M=マネーサプライ、V=貨幣の流通速度、P=物価、Y=実質GDP)で示される恒等式で、左辺を増やし続ければいずれ右辺が増えるという貨幣数量説だ。これに対し、一橋大学の斉藤誠教授は次のように反論する。

「日銀の政策金利が0.5%を下回った1995年ころから、追加的な貨幣供給をすると同時に貨幣の流通速度が低下する現象が繰り返されてきた。流通速度が一定という前提が成立しないもとで、貨幣数量説的な議論に基づいて量的緩和を行い、結果としてインフレ期待が醸成して物価が上昇する、というロジックは、まったく機能していない」−−。マネーを増やしてもデフレから脱することができないのが日本の現状だ。それでは、デフレは甘受すべきなのか。

デフレと生きるか、デフレと死すか

三菱証券の水野和夫チーフエコノミストは、1)20世紀は冷戦を含めて戦争の世紀で、戦時はインフレになる。21世紀は核の存在もあり、大規模な戦争は起こせない、2)20世紀末、IT革命という産業革命に匹敵する技術革新が起きた、3)グローバル化とIT革命で、要素価格均等化定理(貿易できない生産要素の価格も、生産物が貿易されることによって各国間で同一水準に近づく)が現実になった−−と指摘。「21世紀はデフレの時代だ」と言う。

日本経済研究センターの香西泰会長も「予測者として、デフレは簡単に治まらないのではないかという印象を持っている。それならばむしろ、デフレ圧力が強いことを前提に、それとどうやって共存するか、どのようにしのぐかということの方が、わたしには関心がある」と言う。対照的に、慶應義塾大学の深尾光洋教授は「デフレが続く限り不良債権は減らず、金融再生は不可能だ。デフレが悪化すればするほど、より強い薬が必要になる」と警告する。

   朝日ライフ・アセットマネジメント社の高尾義一常務も「デフレと生きることはできない」と断言する。先送りを続ければ「政治的、社会的な体制選択を迫られる新しい局面に入る。長期金利が上昇に向かえば、財政や金融機関に打撃を与えるため、強制的に抑えざるを得ない。必然的に日銀の長期国債購入が増え、金利は統制される。円相場は下がり、1ドル=200円まで行けば物価が上がる。生活必需品の物価は統制され、徐々に市場原理から外れていく」−−。

デフレを止められるのは財政か

「デフレと生きる」ことができないとすれば、どうすればデフレから抜け出せるのか。竹中平蔵経済財政・金融担当相や次期日銀総裁候補として名前が挙がる中原伸之氏(元日銀審議委員)は、インフレ目標の導入を主張する。東京大学の松原隆一郎教授は「そもそも皆がお金を使わないことが問題なのに、お金を使わせるためにインフレにしましょう、そのためにお金を撒いて使わせ、インフレを起こしましょうというのはトートロジー(同義語反復)だ」と語る。

ポール・サムエルソンMIT名誉教授も「インフレ目標は、宣言するだけでは何も意味しない。短期金利がゼロ%になったとき、中央銀行はその影響力の大半を失う。米国がもし、深刻なデフレと流動性の罠に陥れば、非常に大掛かりな財政支出の拡大を行うべきだ」と主張する。日銀の植田和男審議委員も同教授の指摘に「言われてみれば当然のことだ」と同意する。しかし、日本の財政は、危機的な状況にあると言われて久しい。

来年度予算も2年連続で緊縮型になる方向だ。野村総合研究所の富田俊基研究理事は「財政赤字が膨らみ過ぎると、いずれ増税されるとの懸念から、消費を抑制する非ケインズ効果が働く」として、野放図な財政支出に警告を発する。一方で、大阪大学の小野善康教授は「歳出を減らす方向で財政改革をやれば、縮小均衡になる。増やす方向でやれば経済が回りだし、税収も入ってくる。歳入を一律に減らすことだけが構造改革ではない」と反論する。

財政政策と金融政策の一体化

足元では1%前後の低水準で推移する長期金利だが、財政規律喪失への懸念が広がれば、国債が暴落して長期金利が急騰しかねない。日銀OBである大和総研の賀来景英副理事長は「総需要を喚起するという意味では、金融政策単独でやれることはもうない。日本経済が停滞を脱するのに必要なのは、規制緩和など意味のあるミクロ構造政策と、それと整合的な財政政策の組み合わせだ。その場合、日銀の国債引受も完全なタブーと考える必要はない」と言う。

日銀の植田審議委員も「経済情勢が一段と悪化する兆しが出たとき、もしかしたら財政当局が今議論している以上のことをやる決断をするかもしれない。われわれとしてもそういう事態になれば、あらためて何か一段とできることがないか考えさせていただく、ということだと思う」と述べ、財政政策と組み合わせた金融政策の可能性を示唆した。しかし、財政政策と金融政策の一体化は、一つ間違えば劇薬になる。一橋大の斉藤教授は次のような懸念を示す。

「政府支出や減税の財源を貨幣の印刷で賄うマネーファイナンスをある程度の規模で行えば、必ず物価は上がるだろう。裏付けのない購買力を政府や個人が有するわけだから、それをずっと維持できるはずはなく、実質的な購買力を減殺するように物価は上昇する。安易にこの手の政策に踏み込めば、もしかするとあらゆる支出や債務を税の裏付けなしにマネーファイナンスし、極端なインフレを起こすのではないか、という懸念が出てくる恐れがある」−−。

デフレの罠

財政政策も金融政策も限界に近づいており、日本経済はデフレの罠に陥って身動きが取れない状態にある。モルガン・スタンレー証券のエコノミスト、佐藤健裕氏は「デフレの罠から抜け出すには、非常に巧妙な仕掛けと政策に対する高い信認が必要であり、極めてナローパスと言わざるを得ない。歳出削減の道筋をきっちり示したうえで、減税などの財政刺激策を打てば、恐らく人々が将来の増税予想から貯蓄に走るのを防ぐことができる」と言う。

帝国製薬の村山昇作社長も「根本的な問題は貯蓄率が高過ぎることだ。不良債権問題や財政赤字問題を全部解決したところで、景気が回復するかというと、それはまったくの別問題だ。高過ぎる貯蓄率を引き下げる方法を皆で考えなければならない」と語る。東大の松原教授は「お金を持つ以上に消費を魅力的にするしか、この異常事態から抜け出す道はない。それには、信頼と安心に足る制度を10年がかりで作るしかない」と言う。

村山氏は言う。「このまま行けばどんどん所得が落ちていく。財政も出せず、輸出も伸びないとなれば、われわれの所得水準はどこかの段階で一銭も貯蓄ができず、すべて飲食代に消えてしまうという状態まで行き着く。そこが均衡点だ。日本はこれまで、ほとんどがそういう時代だった。江戸時代の庶民はお金を貯めることに熱心でなかったわけではない。必死になって貯めようとしたが、貯まらない。それが現実だった。それと同じ状況に戻るということだ」−−。

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