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(回答先: ■5割超企業が金利引き上げ要請を経験 東京商工会議所 8月8日【金融経済新聞】 投稿者 hou 日時 2002 年 12 月 31 日 20:14:04)
プライベート・エクィティ・ファンドのリップルウッドが多額の公的資金をもらった上で、破たんした日本長銀を買収し、新生銀行が誕生した。同行のビジネスのやり方は、その後一八〇度変わったと言ってもよい。
効率を考えない経営から効率重視の経営へと、矢継ぎ早に施策が実行され、そうした中で重要なターゲットとなったのが貸出政策である。
新しい経営陣が米国的に計算すると、貸倒コストに見合わない金利で貸し出している案件が次々と出てくる。そこで、貸出金利の引き上げを借入先に要請するが、不況の中サッサと払える先は少ない。そこで、結果的に貸出資金を続々と引き揚げることになる。破たんする企業も出てくる。
金融庁が改善命令
少なからぬ企業が政治家の下に駆け込む中、新生銀行が業績不振の企業から短期融資を回収していることについて、他の銀行から批判が高まり、「新生銀行はわが国の美しい金融秩序を乱している」というタレコミが相次ぎ、ナショナリズムに燃える政治家の先生方の頭に血が上ったのは予測するに難くない。
野中広務元自民党幹事長は「国民の血税でできた生い立ちを忘れ、貸し渋りや貸しはがしをしている」と厳しく批判し、柳澤伯夫金融担当大臣も「融資計画を達成するための体制を敷いたとは認められない」と断罪した。
あおぞら銀行と東洋信託銀行も中小企業に対する融資計画の数字を達成できなかったが、新生銀行の落ち込み幅が突出していたため、それが致命傷になったのである。「今年度は増やす」という新生銀行の説明に、金融庁は「真剣に増やそうとしていない」と一蹴した。
そして、昨年十月、新生銀行は金融庁から業務改善命令を受けた。同銀行の二〇〇一年三月末における中小企業向け融資が、健全化計画で政府と約束した二兆七千億円より13・5%少ない二兆三千三百五十億円にとどまったため、その未達成を問題視されたのである。
国内に存在する六百十八万事業所のうち、中小事業所は99・3%の六百十四事業所を占めている。就業者数では80・6%(事業所・企業統計調査一九九九年)。中小企業は、日本経済そのものと言っても過言ではなく、永田町の先生たちの関心も高い。
「外資」への総攻撃
米国資本主義に対する正義の鉄ついとして、永田町は沸き立った。新生銀行の八城政基会長は「国の命令であり、今年度は損失覚悟で必ず目標を達成する」と声明。貸し倒れの危険をカバーできない低金利でも融資を拡大する方針を明らかにする。
こういう経緯の中で、新生銀行の株主であるリップルウッドは「ハゲタカファンド」の代名詞となり、企業の切り売りで短期的な利益を狙うイメージが定着する。閉塞感の中で高まるナショナリズムが、仮想敵を「外資」に狙いを定めて総攻撃を仕掛け、そして新生銀行やリップルウッドは第一の標的になった。こうなると、理屈もへったくれもない。
無論、「郷に入らば郷に従え」ということわざは英語にもある(In Rome, do as Romans do)から、新生銀行も考えたのだろう。本年五月二十三日、三月末の中小企業向け融資が政府との約束の金額を達成したことを明らかにした。
目標の二兆三千五百三十二億円をわずかに上回る二兆五千億円に達する見込みという。業務改善命令を受けていたので、貸し倒れの危険をカバーできないような低い金利でも融資したという。
ところが今度は、大手邦銀のほとんどは中小企業向け融資の計画金額を達成できなかった。合計すると五兆円を超える未達。公的資金の注入を受けた銀行は、貸し渋り是正のために中小企業向け融資を増やすことを厳しく義務付けられていたはずなのに、無視した格好となった。
「メガバンクリスク」
しかも、中小企業に対する貸出金利はものすごい引き上げだ。0・1−0・2%どころではない。1・0−2・0%の引き上げ要請が来る。払えないところからは貸出を引き揚げるだけだ。一部ではあるが、詐欺紛いの手でだまして貸金を引き揚げていく輩もいると聞く。
ある信金の理事長が「メガバンクリスク」と呟いてボヤいていた。
「一昔前なら、都銀とお付き合いのある中小企業なら審査もしないで安心して貸せました。でも最近は、いつ貸金を引き揚げられるか分かりませんから、メガバンクとお付き合いのあるところは、かえって怖くて貸し出せません」
こういう実態があるなら、昨秋の新生銀行と同じ立場のはずだ。否、新生銀行よりもヒドイかもしれない。ならば今度は、邦銀に対して、業務改善命令が下されることになるはずである。
ところが金融庁は、邦銀に優しい。「行内の体制整備など計画達成に向けた努力が認められれば、未達成もやむを得ない面がある」として、新生銀行のときとは一八〇度違うスタンスを打ち出し、業務改善命令を出すことには慎重だという。この態度の違いは何なのだろうか。
要するに「外資は嫌いだ」ということか。米国資本は駄目だが、日本資本なら貸しはがしをしてもおとがめなしということなのだろうか。こういう偏狭なナショナリズムが「正義」を振り回し始めると、世の中はおかしくなってしまうであろう。(KPMGフィナンシャル=KFi=代表)
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