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国民が納める保険料を原資に将来に備えて蓄えてきた年金積立金の運用が、株式市場の低迷で「八方ふさがり」状態になっている。02年度上期(4〜9月)は2兆円超の損失を計上。01年度末での損失分を含めた累積損失額は、約5兆200億円にまで拡大した。このまま運用不振が続けば給付削減や負担増にもつながりかねない。社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)は来年1月に改善案をまとめるが、妙案はなく、株式運用の是非をめぐって賛否の対立が激化しそうだ。
積立金は高齢化がピークを迎える2025年以降に活用し、保険料負担を軽くするのが目的。厚生年金、国民年金など公的年金の積立金は現在、約147兆円に上る。
このうち市場運用分は約28兆円で、国内外の株式や債券で運用されている。残額は大半が財務省に預託されており、この利息収益で損失を埋めている。しかし、財政投融資改革の一環として、財務省への預託は08年度に廃止されるため、それ以降は147兆円すべてが、市場運用に移行する予定になっている。
社会保障審議会では、元本割れのリスクを伴う株式運用に賛否両論がある。賛成派は(1)株、債券など複数の金融商品に投資する方がリスクを回避できる(2)長期的には株式の方が債券より高い収益が上げられる――などと主張。これに対し、慎重派は「将来に約束した年金債務が数百兆円に膨らんでいる現状で、株式投資のリスクをとる余裕はない」と見直しを求めている。
ただ、国内株式市場には昨年9月末で積立金から6兆8796億円もの巨額資金が流入している。この資金が引き揚げられれば、株価下落に拍車をかける可能性があり、「現実問題として困難」(厚生労働省幹部)という事情がある。
一方で、売買規模が大きく、情報公開を義務付けられた年金資金の動きはすぐに察知されるとのハンディがある。株式に今以上の資金が投入されれば、国民の蓄えとも言える積立金本体が目減りする可能性もあり、株価の回復がなければ「退くも進むもできない」のが実情だ。 【因幡健悦】
[毎日新聞12月29日] ( 2002-12-29-23:58 )