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熊谷組に続き、ハザマと飛島建設も会社分割? 大手銀行への米国流の厳格資産査定が導入され、ゼネコン大再編が始まる
ハザマ、飛島も会社分割? 産業再生機構の基本指針が決まり、経営再建中の準大手ゼネコンを多く抱える三井住友銀行と、みずほグループが水面下で調整に動く。三井住友案件では、過剰債務『51社リスト』の代表格・熊谷組で会社分割(分社化)の調整が進められ、ハザマとの経営統合の観測が強まるのに続き、みずほでは、ハザマや飛島建設の分割案が急浮上し、統合先名も取りざたされる。来春の金融再生プログラム始動を前に、金融庁は26日、大手銀への米国流厳格資産査定の導入を発表。ゼネコン業界は嫌が上にも、年明けに銀行主導の大再編の火ぶたが切られる。
銀行界には、予想外の衝撃だったようだ。
政府の産業再生・雇用対策戦略本部がまとめた、不良債権処理の買い取り基準のことである。
なかでも、国土交通省が個別指針を決めたゼネコンは条件が厳しい。
「事業規模の縮小」か「経営統合・事業再編」を打ち出し、借金棒引き(債務免除)組を中心に、政府が不振企業の『有力候補』を本気で処理する姿勢を明確にした。
再生機構の買い取りは「準主力行の債権」に限るため、主力行の責任がより問われる。銀行系証券アナリストは「最近の慌しい動きは、基本指針が大きな引き金になった」とキッパリ。
慌しい動き…というのは、『51社リスト』に名を連ね、一時9円の株価をつけた熊谷組の分割案である。ハザマとの統合話が永田町や霞が関で流れた直後、分割に向けた調整が明るみに出た。
不良債権処理加速と株価下落で含み損を抱え、大手銀行は従来のように、不振ゼネコンを新たな金融支援で救済する財務体力は残っていない。
国際ルールの自己資本比率8%割れを起こす可能性が高く、株式市場は『8%割れ=公的資金の再注入=国有化』を懸念する。メガバンクの株価は東京三菱を独り勝ちに「1強3弱」が続く。
そこで主力行のメンツも立ち、熊谷組の救済策として登場したのが分割(分社化)である。
三井住友銀主導で5700億円もの有利子負債を圧縮するため、比較的健全な土木建設部門を残し、不良資産の多い不動産・建築部門を切り離して国や外資などに買い取ってもらう案である。
大手民間信用調査機関のゼネコン担当アナリストは「三井住友銀の内部では旧フジタ(今年10月)の分割後、次は熊谷組というシナリオが出来上がっていたようだ」と前置きして、説明する。
「三井住友銀と熊谷組の蜜月は有名で、銀行側が『熊ちゃん』と呼ぶほど。株価が1ケタになっても、絶対に倒産させないと言い続けていた」
「要は人情で助けるということ。ただ過剰債務は簡単に減るはずがない。落しどころとして、分社化を練っている」
シナリオの結末は分割だけでは終わらない。
三井住友銀がメーンのスーパー・準大手ゼネコンだけでも、鹿島を筆頭に、三井建設、住友建設、鴻池組、新フジタなど12社にものぼる。
有利子負債を合計すると、実に2兆7000億円(平成14年3月決算)にも達する。いかにゼネコンが問題企業かがわかり、金融・産業再生プランの成否のカギを握る。
「でも不振ゼネコンが多過ぎ、三井住友銀の許容範囲を超えている。数を減らしても、有利子負債を圧縮しなくては意味がない。そこで分割後の熊谷組とみずほが主力行のハザマの縁組話が出てきた」(大手銀幹部)
銀行の枠を超えた統合策の一方で、三井住友銀では枠内での処理も用意しているという。先のアナリストが続ける。
「分割後の新熊谷組を新フジタとワンセットにさせる案だ。三井、住友両建設が合併後、新フジタが合流する構想はあるが、新フジタが入ると建設分野が得意の三井建設と競合し、補完メリットはない。両建設とも乗り気でなく、本格交渉が始まっていないのが証拠だ」
新熊谷組が別路線を選択すると、縁組相手の観測が流れるハザマも含めて、どうなるのか。
「みずほでも再編に向け、不振ゼネコンの大胆処理が水面下で模索されている」とは、外資系シンクタンクのゼネコン担当研究員の話である。
その筆頭はむろん、ハザマ。12年に旧一勧など4行から1050億円の借金棒引きを受けたが、有利子負債は2700億円(14年3月決算)と高止まりで推移。株価も10円台半ばを続ける。
もう一社は飛島建設。7年から14年の間に旧富士銀などから総額6400億円の借金棒引きと100億円の金融支援を受けたが、有利子負債は1350億円(同)。
株価も20円台をギリギリで保っているが、情勢はいつ10円台に陥落してもおかしくない。
先のゼネコン担当研究員は「みずほも前々から、ハザマと飛島建設をそれぞれグッドとバッドに分割、統合する構想を練っていた」と指摘したうえで、こう解説する。
「みずほの米びつはほとんど底をつき、もう債権放棄はできない。選択の余地は分割のみ。両社は計2000人規模のリストラを断行する。社員数は計約5300人だから、約4割がいなくなる」
「その後に統合させる。事業的には双方が大型ダムなどが得意で相互強化のメリットがある。残ったバッドの方は、時間をかけて消滅させる」
デフレ不況で、容赦なく整理・淘汰(とうた)の嵐が吹き荒れる。
公共事業の縮小で干上がり続ける建設市場。業界全体の供給のパイは急降下の様相を呈する。
建設経済研究所などの試算では、14年の建設市場は約56兆円で、8年の約83億円から27億円も減少。数年後には50兆円も下回ると予測されている。
それでも、ゼネコンの数は一向に減らない。
この6−7年の間に破綻(はたん)した東証一部上場のゼネコンは十数社を数えるが、完全消滅したのは9年8月の大都工業のみである。
小さなパイをめぐり、どこもダンピング合戦に参戦する。その結果、業界全体に「採算割れでも受注する」屈折した経営姿勢がはびこる。
勝ち組の準大手4社(西松建設、戸田建設、前田建設工業、奥村組)でさえ、9月中間決算では西松を除く3社が赤字に転落している。
バブル期に不動産投資にのめり込まず、経営基盤を固めてきたが、スーパーゼネコンがマンション建設並みの価格で高層ビルを受注するようになったいま、「ダンピングの大波」の影響は避けられない。
「構造的欠陥を抱えたゼネコン業界で、資金繰りでも悪化すれば、不振ゼネコンは軽く吹っ飛ぶ。運命共同体の主力行も連鎖クラッシュする」(外資系証券審査部)
銀行主導のゼネコン大再編は、銀行自らのサバイバル策でもある。