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ニューヨーク 12月23日(ブルームバーグ):物価が反転の兆しなく下がり続ける状態「デフレ」が、目下のところ、エコノミストの最大の心配事だ。
それにはいくばくかの理由もあるようだ。1990年代の大半、エコノミストたちは多くの投資家と同様、現実とはならなかったインフレ加速を懸念した。所得の実質価値を目減りさせるインフレが問題にならないとしても、生産を抑えてしまう物価の下落は問題になるだろう。
悲観論者は、米企業は過度の競争に陥っていると指摘する。常に値引きによってビジネスを獲得していれば、ついには顧客が買い渋ることにもなりかねない。1週間、1カ月と待てば価格が下がるのなら、顧客はそうする。消費の先送りは企業の生産の遅れをもたらす。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は約40年ぶり低水準の1.25%で、一層の金融緩和余地は小さい。人員削減もあるかもしれない。実質ベースで、借金返済は困難さを増すことになる。
資本主義の利点
もちろん、何でも起こる可能性はある。90年代の好況期、インフレ加速が起きないとだれが考えただろうか。ただ、デフレは資本主義の失敗と位置付けられることになろう。資本主義の利点は調整が効くことであり、競争価格はそうした柔軟性の証拠だ。例えば、90年代の好況期には、企業は設備稼働率を高め、需要に応じて多くの製品を製造し、顧客をつなぎとめるために値引きを行った。
景気減速に伴い、企業は再び調整に出た。設備投資は2000年半ばに削減が始まり、ここにきてようやく回復しつつある。需要が同水準なら、生産能力の抑制は価格の横ばいもしくは上昇につながる。エコノミストは、生産削減で雇用が失われている場合、特に消費需要の落ち込みを懸念する。ここでのカギは労働生産性だろう。7−9月期の労働生産性は前年同期比5.6%上昇と、ほぼ 30年ぶりの高水準。企業は労働者を酷使せず、値引きによるシェア(市場占有率)維持が可能となる。
しかし、消費需要減退に関しては米国人の心理が最も重要な点かもしれない。「今欲しい商品」に殺到する国民が、購入を先送りするとは思えない。デフレ懸念を標ぼうするエコノミストは、米国やドイツも日本の二の舞いを演じるとみるが、単純に比較はできない。日本経済は競争的ではなく、今の状況は同国政府が銀行破たんを避けた結果だ。ドイツも適切な比較対象ではない。経済の開放はより進んでいるが、米国に比べ福祉支出が大きく、その分効率が悪い。
エコノミストの仕事
一部のエコノミストが現在は行き過ぎだと指摘する競争こそが資本主義の中核だ。競争を擁護したアダム・スミスの「国富論」(1776年)は時代遅れだと言う専門家もいる。アドルフ・バーリとガーディナー・ミーンズは共著「近代株式会社と私有財産」(1932年)で、株主から独立している企業経営者は、スミスの時代に経営者が行ったようなやり方は実践しないと書いた。経済学者のジョン・ガルブレイスは「新しい産業国家」(1967年)で、「管理価格」を批判。力の強い労働組合が賃金を決定し、業界内の有力企業が無力な市場で価格の転嫁を図ると指摘、製品価格と賃金設定に関して政府介入の必要性を説明した。
だが現在、消費者は依然として市場で発言力を持ち、企業は競争を続けている。デフレを懸念してカネをもうけるのはエコノミストだ。われわれの仕事ではない。(デービッド・ポーリー)
(ポーリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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