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産業再生機構のトップ人事で浮上する藤井義弘・日立造船相談役、片田哲也・コマツ相談役、渡辺正太郎・花王特別顧問(左から)。財界がソッポを向き、なり手がいない
デフレ不況下、虫の息の不振企業の再生を目指す「産業再生機構」と、機構内の「産業再生委員会」のトップ人事が難航している。政府・与党は企業再生の経験がある財界人を据えたいが、財界側はソッポを向き、トップ兼任論まで出る始末。『51社リスト』企業の生殺与奪を握る『閻魔(えんま)大王』の憎まれ役を、「好んで引き受ける財界人はいない」という。船頭のなり手のいない再生機構は機能するのか。政治の介入を招き、情実で救済され、事実上、空中分解するとの懸念もある。
産業再生機構は来春、借金漬けでもがく問題企業を再生させ、日本経済再生のために新設される。10月に発表された政府の総合デフレ対策に設置が盛り込まれた。
来年1月からの通常国会に運営方針などを定めた産業再生機構法案が提出され、官民共同出資で来春にも発足する。
まず、持ち込まれた不振企業が再生可能かどうか一定の基準をもとに選別する。再生可能と判断した企業については、非主力銀行から債権を買い取り、主力銀行とともに再建を進めていく。
選別にあたり、買い取り申請時に提出される再建計画(期間3年程度)の終了時点で、(1)株主資本利益率(ROE)の2%以上の上昇(2)抱えている負債が年間キャッシュフローの10倍以内−となるなど、生産性、財務改善が判断基準となる。
買い取り価格は「適正な時価」。買い取った債権は3年以内に売却することになり、その際に再生機構の損失が膨らまないようにする−というのが目下の構想である。
その再生機構のトップ人事とは、(1)再生機構を運営する社長(2)買い取るかどうかを選別するため、再生機構内に設けられる産業再生委員会の委員長−の2つである。
法案の原案では、「再生委員会は再生機構の取締役の中から7人以内で組織」とされ、取締役の頂点に立つ再生機構社長が全体の「元締め」、つまり『閻魔大王』ということになりそうだ。
永田町有力筋はこう説明する。
「『51社リスト』や『30社リスト』など不振企業のうち、再生機構に買い取られたところはセーフ、買い取りを突っぱねられたところは再生不能の烙印(らくいん)を押されたも同じで、破綻(はたん)に追い込まれる可能性もある」
「再生機構のトップは、買い取ってくれなかったといっては憎まれ、買い取っても再生に失敗すれば非難される。そんな憎まれ役を好き好んで引き受ける人はいない」
トップ人事の難航は必至で、「11月26日に開かれた自民党と日本経団連の首脳会談がそれを象徴している」(財務省関係者)という。
会談の席上、再生機構のトップ人事が話題に上り、経団連の片田哲也副会長(コマツ取締役相談役)は「国務大臣が就くべき」と発言した。
これに対し、自民党の麻生太郎政調会長は「企業再生の経験がある民間人のほうがいい」と主張、互いに押し付け合うような格好になった。
政府も同じ考えのようで、「塩ジイ」こと塩川正十郎財務相も8日の閣議後会見で、トップ人事について「実業界でさんざん苦労した人が望ましい」と明言している。
それでは、財界側の候補を見てみると−。
先の片田経団連副会長(71)は再生機構トップの有力候補者の1人として名前が取りざたされるが、当人がイヤがっているのが実情である。
道路公団民営化委員会の委員長辞任でミソをつけた今井敬経団連名誉会長(新日鉄会長)(72)も、次期日銀総裁や再生機構トップの候補者の1人だった。
その今井氏も6日の記者懇談会の席上、「日銀総裁は絶対ない。再生機構のトップはもっとありえない」とキッパリ。それくらい再生機構トップはイヤな役なのだ。
元三和銀行(現UFJ銀行)副会長で整理回収機構の債権買い取り推進本部アドバイザーの藤井義弘・日立造船相談役(76)、経済同友会副代表幹事で産業再生に詳しい渡辺正太郎・花王特別顧問(66)…。
「名前が挙がる人たちは、企業再生などに実績のある方ばかりだが、だれもイヤがっているというのが本当のところだろう」(財界首脳)
人選の難航に、政府は産業再生機構の社長が産業再生委員長も兼任する方向で検討に入った。
そもそも、永田町には「トップ人事以前に、産業再生機構という組織の位置付け自体が不透明だ」(与党ベテラン議員)との声もある。
どんな買い取り基準を設け、どんな方針で運営するか−などを定める産業再生機構法案は、自民党側とのすり合わせが終了し、年明けの通常国会に出される。
「自民党とのすり合せ自体が久間章生プロジェクトチームと、若手改革派の塩崎恭久・渡辺喜美チームで考え方が違い、すったもんだの末、久間チームが押し切って指針をまとめた」(同)
ゼネコン、流通、ノンバンクの不況3業種のうち、最大の問題は、会社分割(分社化)したうえでハザマとの経営統合話の観測が永田町や霞が関で強まる熊谷組など、借金棒引き組の準大手ゼネコンの扱いである。
このベテラン議員によると、久間チームはゼネコンなどを中心に救済する方向なのに、塩崎・渡辺チームは退場させるべきは退場させるのがスタンスだったという。
「ただでさえ、再生機構トップは『憎まれ役』で、閻魔大王になりたがらないのに、組織自体の位置付けが迷走し、経済産業、国土交通、財務の各大臣が企業選別などに口出しするとなれば、ますますなり手はいなくなってしまう」とも。
永田町では最近、極端な見方も出始める。
「小泉純一郎首相は『1月解散はない』と言明したが、再生機構が設立されるころには、解散・総選挙がチラつき、再生機構のトップ人事どころではなくなる。もうトップは『誰でもいい』となってしまうのではないか」(永田町有力筋)
竹中平蔵金融・経済財政担当相を中心にまとめた総合デフレ対策。金融再生プログラムで銀行を、産業再生機構で過剰債務を抱えた企業を再生させ、日本経済を活性化させるのが目的のはず。
デフレ不況はドロ沼状態で、まだ決定的な処方箋(せん)はない。
勤勉な庶民は失業と給与カットにあえぐ。家族と生活防衛の手段は「消費の手控え」だけ。
それなのに、『丸投げの殿』小泉首相の構造改革はスローガンだけで、再生機構もそれで終わったら、日本経済は永遠に再生できない。