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l 2003年米国市場展望 株高・債券安に――イラク攻撃、短期終結
2003年前半の米国市場ではイラク攻撃が最大の焦点だ。市場の大方の予測通り短期決戦に終われば、下期にかけて景気と企業収益の回復ピッチが速まり、緩やかな株高・債券安になるとみられる。
イラク問題は国連の査察報告の期限である1月27日が節目となりそう。米政府はイラクが国連決議に対し「重大な違反」を犯したと非難しており、年末年始の開戦の可能性もゼロではないが、査察報告を待って国連安全保障理事会や関係国に協力を働きかける公算が大きい。
6週間弱で終わった91年の湾岸戦争のように圧倒的な戦力を投じて短期圧勝を目指すとみられる。供給懸念から原油価格が上昇しても、イラク解放後に同国原油が市場に流れることを考えれば原油相場は高止まりしにくい。
イラク攻撃終了後は景気回復に目が向きそう。低金利を背景とした個人消費が底堅さを維持するうちに、設備投資が回復。年後半に潜在成長力付近まで戻るとの見方が多い。
米債券市場協会が協会加盟エコノミスト27人を対象にした調査では、2003年の実質経済成長率の予想平均は前年比2.8%。内訳は1―3月期が前期比年率2.5%、4―6月期が3.4%、7―9月期が3.5%、10―12月期が3.5%だ。
マイナス成長を予想するエコノミストはいない。
クリスマス商戦の不振やイラク問題の悪化で米連邦準備理事会(FRB)が1―3月期に再利下げに踏み切るとの声もあるが少数派だ。ほとんどが金利据え置きを予想し、年後半の景気回復に伴い、FRBが利上げに向かうとみている。現在1.25%のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は、2003年末には2.00%になるとの声が多い。
議会は11月の中間選挙で共和党が上下両院で多数派となった。スノー新財務長官らの経済チームと協力し、積極財政や配当二重課税の削減・撤廃などの景気刺激策を打ち出すとみられる。景気回復や利上げ見通しと相まって、財政赤字の拡大は債券相場にとっては売り材料となるだろう。
日経QUICKニュースの集計によると、米大手証券10社のS&P500種株価指数の2003年末時点の予想は1250―800となった。
平均的な見通しは2002年12月24日の終値(892.47)比で16%前後の上昇率となる。株価上昇の原動力は企業収益の回復だ。
米調査会社のファースト・コールによると、2003年のS&P500種株価指数構成企業の収益予想(トップダウン方式)は11.5%増と、2002年の4.8%増から増益率が高まる見通しだ。
金融緩和が企業収益の下支えとともに、投資家がリスクをさらに取るようになることが相場上昇見通しの背景にある。2002年7―9月期まで前四半期比で減少していた設備投資が2003年に上向くとの予想も株価の下支え要因だ。
米債券市場協会の調査によると、2003年は1―3月期が3.8%増、4―6月期が5.2%増、7―9月期が6.4%増、10―12月期が7.9%増と尻上がりに回復してくるとみられる。バランスシート調整が一巡し、企業が負債の返済から設備投資に向かうとの見方だ。
バリュエーション(適性株価)の面からも2003年の方が2002年よりも上昇する可能性が高い。
2001年12月末時点の2002年のS&P構成銘柄一株予想(52.71ドル)を基にしたPER(株価収益率)は21倍だったのに対し、2003年予想(52.80ドル)を基にした2002年12月のPERは17倍だ。
歴史的な水準よりは高いが2003年予想の方に割安感がある。またPERの逆数である益回りは2001年末が4.76%と当時の10年債利回り(5.02%)を下回っていたが、2002年12月は5.88%と利回りが24日現在、3.94%の10年債よりも魅力的だ。
ただ懸念材料がまったくないわけではない。構造的な問題を意識する市場関係者も少数派ながら存在し、過剰設備投資や多額の負債は金融緩和のみでは解決できず、価格支配力の低下が収益率を抑えると見ている。
イラク問題もイスラエルへの戦線拡大や生物化学兵器による米兵への被害が出ればシナリオが狂う。米国内で報復テロがあった場合は消費者信頼感への悪影響は計り知れない。高止まりする原油相場も加わり、設備投資が回復しない間に個人消費が失速するという最悪のシナリオも考えられる。
2003年の米国株、主な証券会社の目標一覧 平均で16%上昇
著名な米証券ストラテジストの目標株価と推奨する資産別の配分比率を24日の時点で集計した。
S&P500種株価指数の目標値は24日終値(892.47)に対し最高が1250、最低が800。40%の上昇から10%の下落まで強弱感が分かれた。10社を平均すれば1041となり、約16%の上昇を見込んでいる。株式相場の見通しによって、推奨する資産配分にも特色が出た。
慎重派のメリルリンチは株式比率を半分以下の45%に抑えるよう勧めている。
注)カッコ内は根拠となる考え方、ダウ平均はダウ工業株30種平均、ナスダックはナスダック総合株価指数、各ストラテジストの肩書は省略、は今後12―18カ月の目標値で、※※は今後12カ月の目標値、バンク・オブ・アメリカ証券は12月上旬のリポートを引用
S&P500 ダウ平均 ナスダック
l CIBCワールド・マーケッツ※ 1250 10500ドル 2500
<サボド・クマール氏>株75%、債券20%、現金5%「景気のけん引役は個人消費から設備投資に移行。企業収益の回復に伴って投資家はリスクを取るようになる。収益と設備投資の回復に弾みがつき、ハイテク企業が相場上昇のけん引役を担う。リスクはデフレ、過度なドル安、原油価格の上昇」
l ゴールドマン・サックス 1150 10800ドル ――
<アビー・コーエン氏>株75%、債券22%、現金0%、商品3%「米景気は2番底を回避し、企業収益の最悪期は去った。政府が配当課税を見直せば、企業は配当重視へ。鍵は企業不信、イラク情勢、テロ再発懸念などを背景とした投資家のリスク回避姿勢。リスクを避ける動きが広がらなければ、適正株価に向けて回復に向かう」
S&P500 ダウ平均 ナスダック
l ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 1125 10500ドル 1800
<チャールズ・ブラッド氏>株80%、債券20%、現金0%
「金融緩和効果で景気や企業収益が回復。通貨供給量の増大を背景に株価が上昇する『流動性相場』から企業収益の改善を手掛かりとする『業績相場』へ。S&P500採用企業で2002年比13.4%増益を予想。サービス価格は上昇し、デフレの心配はない」
l プルデンシャル証券 1100 10500ドル 1500
<エド・ヤルデニ氏>株65%、債券25%、現金10%
「景気の回復基調が続き、循環的に商品市況は上昇へ。デフレを回避し市況上昇が企業収益の回復にも寄与。企業収益はS&P500採用企業で2002年比10―15%の増益が可能。投資家がデフレ回避に自信を抱き、収益増と予想株価収益率の上昇が株高につながる」
l ソロモン・スミスバーニー 1075 10375ドル ―
<トビアス・レブコビッチ氏>株60%、債券30%、現金10%
「2003年は『政府の年』。配当二重課税の撤廃・削減など財政面からの景気刺激策と金融緩和が、デフレ、過剰設備、対イラク戦争といった懸念を相殺する。ハイテク業界を中心に90年代の楽観論の余韻が上値を抑えるが、ハイテク以外で設備投資は増加に向かう」
l UBSウォーバーグ 1025 ― ―
<エドワード・カーシュナー氏>株89%、債券11%、現金0%
「利下げ効果で景気回復基調は続く。企業収益も緩やかに回復し、S&P500採用企業の継続事業ベースの一株利益は2002年比8%増と予想。インフレ率は限りなくゼロに近い状態が続く。低成長下で、銘柄選別の鍵は利益率から資産の効率的な活用に移行」
S&P500 ダウ平均 ナスダック
l モルガン・スタンレー※ 1000-1050 ― ―
<スティーブ・ガルブレイス氏>株70%、債券25%、現金5%
「バブル期の過剰な収益期待が3年間の相場下落で修正へ。アナリストの収益予想は妥当な水準に落ち着き、株価は割安と言えないまでも上昇余地が勝る。時間はかかるが投資家のリスク回避姿勢は緩む。ただ依然、適正株価はなお上値を抑制」
l バンク・オブ・アメリカ証券※ 1000 ― ―
<トーマス・マクマナス氏>株70%、債券20%、現金10%
「景気の回復基調は続き、株式市場にも一定の恩恵。ブッシュ政権の経済重視の姿勢が明らかになるつれ、株式は好影響を織り込みへ。ただ強気相場入りには対イラク武力行使などのリスクをこなす必要がある」
l メリルリンチ※ 860 ― ―
<リチャード・バーンスタイン氏>株45%、債券35%、現金20%
「強気相場入りへの期待が高い現状から判断して、まだハイテクバブルの思惑から脱しきれていない。投資家は企業の資本活用を好み、依然として変動率が高く、益回りの低い銘柄に高いプレミアムを付けている。むしろ変動率が低く、配当利回り重視の戦略を継続すべきだ」
l JPモルガン・チェース 800 ― ―
<カルロス・アシリス氏>株50%、債券30%、現金20%
「企業収益が伸びにくい状況で現状の株価に割安感はなく、過剰設備、価格競争力の低下、多額の負債といった構造的問題が上値を抑える。デフレの可能性は小さいが、景気が循環的に回復しても企業収益は再び市場の期待を裏切るだろう」