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米国によるイラク攻撃が始まれば、石油の供給が細り、値段が跳ね上がることはないのか。70年代の2度にわたる石油危機は、日本の高度成長にブレーキをかけた。しかし、政府は「第3次石油危機はあり得ない」と言い切る。過去の危機時と異なり、消費国で作る国際エネルギー機関(IEA)による石油安定の枠組みが出来上がり、国内の石油備蓄も整っているからだ。
■「湾岸」で実績
「IEAの声明案は、備蓄石油の放出量と期間の空欄を埋めるだけになっているのでは」。ある政府関係者は推測する。
第1次危機後に設立されたIEAは、第2次危機後の84年に、緊急時の初期段階で各国が協調して石油備蓄を放出する仕組みを整えた。実際に発動されたのは、91年1月の湾岸戦争時。1日あたり250万バレル分の備蓄放出や需要抑制を約1カ月間実施し、原油価格の急騰を抑え込んだ。昨年の米英のアフガニスタン攻撃時にも発動が検討された。
関係者によると、イラク攻撃時にはIEA事務局が加盟国と電話連絡を取り、空欄を埋める。迅速に対処するため、理事会を開かなくても対応を決めることができるよう、合意済みという。
1日あたりの石油備蓄放出量は、イラクの原油輸出量150万バレルを上回り200万バレル程度になる見込みだ。放出のタイミングや期間は、500万〜600万バレルの生産余力がある石油輸出国機構(OPEC)の増産状況や市場、戦況を見極めた上で決定する。
■全国に92日分
「首相を本部長とする対策本部を設置する」。政府内ではすでに、イラク攻撃時の石油問題への対応が文書化され始めている。
IEAが備蓄放出を決めれば、日本は初の国家備蓄放出に踏み切る。湾岸戦争時には民間備蓄を4日分削減し、市場に回した。しかし今回は、国家備蓄放出の方が市場への石油供給が確実で政府の強い意志も示せると判断している。
石油公団による国家石油備蓄は78年にスタート。今年10月末現在で、青森県のむつ小川原など全国10基地に92日分が蓄えられている。経済産業相が石油公団に放出を指示すれば、2週間後には石油元売り会社などを対象とした入札で市場に供給される。
備蓄量は湾岸戦争時よりも増えており、資源エネルギー庁は「万全だ」と言い切る。
12日の日本、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)のエネルギー担当省・局長級会議では、フィリピン代表がイラク攻撃直後に各国が国民に対し、冷静な対応を呼びかけるよう提案。各国とも賛同した。パニックに陥った1次危機時の日本の反省を踏まえたものだ。国際的な備えで残る懸念は、消費者の過敏な動きだけだ。
■調達先を拡大
11月にサウジアラビアを視察した経産省幹部は「原油の積み出し港の上空には米国の戦闘機がビュンビュン飛んでいる」と語る。「ペルシャ湾が長期間封鎖される状況にはならない」(外務省関係者)というのが政府内の一般的な見方だ。
日本は2度の石油危機後、原子力発電への傾斜や省エネルギー対策で、1次エネルギーに占める石油の割合を減らしている。ただし、インドネシアやマレーシアなどアジア産油国の輸出余力の低下もあって、中東依存度はむしろ上昇しており、課題は残る。
新日本石油は、中東依存度を下げるため、西アフリカやロシアなどに調達先を拡大している。ほかの石油元売り各社も、ペルシャ湾の外にあるオマーンやイエメンからの調達可能性を探っている。「万一、ペルシャ湾が封鎖されても調達先はある」と一歩先の目配りを続けている。
◇
■「危機」時の日本の石油状況■
第1次 第2次 湾 岸 今度は
時 期(年) 73〜74 78〜82 90〜91 ?
油価上昇幅(倍) 3.9 3.3 2.2 ?
石油依存度(%) 77 72 58 52
中東依存度(%) 78 76 72 87
年輸入量(億kl)2.9 2.8 2.4 2.4
国家備蓄 (日) なし 7 54 92
民間備蓄 (日) 67 85 88 82
IEA備蓄放出量 設立前 なし 250 200?
(万バレル/日)
(08:48)