現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
経済産業省の福田秀敬・IT産業室長は2002年12月20日、パシフィコ横浜で開かれたイベント「オープンソースウェイ」で講演し、「デジタル家電がPC化してゆくというのは日本の競争力にとって最悪のシナリオだ」との見解を示した。また、政府としてオープンソース技術やオープンソースのコミュニティを強力に支援したい考えであることを明らかにした。
福田室長はデジタル家電の“PC化”を「強力なCPUとプロプライエタリ(特定メーカーの)OS、それに支えられたアプリケーションという組み合わせになること」と定義し、「これを崩すには、OSはLinuxやTRONなどのオープン系、半導体の部分はCPUに依存しないアーキテクチャにする必要がある。組み込み系にはLinuxを使って欲しいと各メーカーへ強烈に言っている。はっきり言えばWindowsを使うな、ということだ。そうしないと(日本は)勝てない」と強調した。
●日本が優位なのはデジタル家電のみ
この発言の背景には、現在、IT分野で日本が唯一高い国際競争力を維持できているデジタル家電まで“Wintel”(Windows+Intel)による支配を招くことに対する危機感がある。福田室長は「ソフトウエアや半導体、ネットワークといった分野で欧米にコテンパンに負けている。中国もものすごい勢いでキャッチアップしてきている。ここまでコテンパンにされるとビジネスモデルを変えたくなる」と発言。ビジネスモデルを変える戦略の1つがLinuxなどの“オープンソース技術”というわけだ。
福田室長は携帯電話を例に挙げ、「cdmaOneの携帯電話機は米Qualcommへ高額なロイヤリティを支払っている。ほかのソフトウエアやARMを使うとさらに課金される。これをどうにかしないと話にならない」と指摘。携帯電話機メーカーの付加価値は各種のライセンス料に侵食されているとした。それ故に、デジタル家電では「半導体はx86系やARM系に縛られないように開放しなければならない」とする。
●“電子政府=Linux”論は行き過ぎ
また、同室長は政府がオープンソース技術を支援する理由として、(1)政府のシステム調達を低コストで実現するため、(2)ブラックボックス化している技術のメンテナンスから技術者を解放すること、(3)相互運用性の向上---なども挙げた。
「政府だってROI(投資利益率)を意識する。e-Japan計画のために毎年2兆円もシステム調達をしている。もう少し低コストで使えるシステムを実現したい。儲かっているのはマイクロソフト、インテル、シスコ、ジュニパー、中国のSIerという状況もさみしい」(同室長)。
ただし、「『政府調達はすべてLinuxにせよ』との乱暴な意見もあるがこれには与することができない。やろうとしてもオープンソース系の技術者がまだ不足している。また、Linuxはセキュリティが高いと言われるが、これは科学的に検証する必要がある」と、最近の“電子政府=Linux”という風潮については距離を置いた。また、「NPOやNGOの活動が活発化している時代。政府としてもオープンソース・コミュニティを支援したい。ただ、そういった世界の人々に政府は嫌われているかもしれない。複雑な気持ちだ」と述べた。(武部 健一)
■関連情報
・経済産業省のWebサイト http://www.meti.go.jp/
BizTech編集