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雇用増企業にも株安の波――日経金融新聞スクランブル
19日の日経平均株価は大引けにかけて先物買いをきっけに小反発した。
しかし取引時間中はおおむねバブル崩壊後の安値を下回って推移。
市場では「一方的に売り込むわけでも、買い戻しが活発になることもなく、投資家の関心が市場から離れているようだ」との声が聞かれた。
「米国向けを中心とした輸出主導の景気回復は今年8月ごろまでにピ―クアウトし、現在は再び下降局面にある」――。
日本経済新聞社と日本経済研究センターが今月12日に大阪市で開いた景気討論会では参加したエコノミスト4人の見方が一致した。
18日の月例経済報告も景気の基調判断を2カ月連続で下方修正。景気の先行きに対する見方が官民そろって弱気に傾くなかで、株価のトレンドが下値模索から脱せないのはやむをえない。
不況の深刻化の度合いが読み切れず、市場参加者の心理も懐疑的になりがちだ。
2003年3月期の企業業績は全産業ベースで連結経常利益が前期比7割増加し、最終損益も黒字転換する見通し。
だが景気がさらに下降ピッチを速め、金融不安が高まる悲観シナリオが頭をかすめる。
懐疑的なムードの中では、有望分野への経営資源の重点配分といったリストラのうたい文句も「縮小均衡」と受け止める。
電機業界などの「V字回復」シナリオに、それを裏付ける根拠が乏しいのも不透明さを助長する。
日経会社情報2003年新春号に記載されている直近の従業員数(単独ベ―ス)を1年前と比較すると、減少数の大きい企業には日立製作所、東芝、松下電器産業など電機メーカーが並ぶ。
リストラの加速を裏付けるが、それでも電機各社の今期の連結業績は富士通が赤字継続となるほか、日立、東芝、松下、NECもそろって純利益が過去のピークの2割に満たない。
半面、見過ごされがちなのが従業員を増やしたうえで、増益を見込む企業の存在だ。
トヨタ自動車、日産自動車のほか、大東建託や三井不動産といった建設・不動産業の一角にも人員を増やしたうえで、過去のピ―クに近い収益を見込む企業がある。
現在の市場の問題はこうした企業の株価も「人減らし」企業と同様にさえない状態にある点だ。
上場来高値と19日終値の比較ではトヨタ、日産自はかろうじて5割強の水準にあるものの、3割未満にある企業が少なくない。
過去の高値が1980年代末のバブル相場などで割高になっていた面はあるが、利益水準とのバランスからは過小評価されているといえる 。
先の景気討論会でみずほ証券の佐治信行チーフエコノミストは企業の整理・淘汰(とうた)が加速することに、「雇用や賃金の減少で一時的なデフレ要因になるが、成長企業などには良質な人材を安く雇用できる利点もある」と指摘した。
日本の労働市場の硬直性や一段の景気悪化の影響は無視できないが、少なくとも縮小均衡型よりも業容拡大型企業の方に利がある。
「2003年は企業間の優劣が一段とはっきりし、株価もそれを織り込む展開になる」。
野村証券の筒井高志専務はこう指摘する。
現状を歴史的な安値水準として市場の一部には強気の見方が出ているが、小泉政権の政策転換などによる総花的な株価上昇を期待するよりも、銘柄選別という地道な作業に立ち返ることが先決と言えそうだ。(沢田勝)