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行き過ぎた円高、是正――塩川財務相が日経に寄稿
塩川正十郎財務相は19日、「デフレ不況克服のためにも構造改革を」と題し円高是正に決意を示す論文を日本経済新聞に寄稿した。
ここのところ短期間の間に、為替が大幅に動く展開がみられる。
元来、為替相場は様々な要因により市場で決定されるものと考えているが、さはさりながら、為替政策は日本の経済政策の中でも重要な位置付けであり、当局としては、市場を注視し、必要に応じて適切な措置をとる考えである。
為替(かわせ)とは、もともと、「遠隔地間の取引を交わす(かわす)手段」という意味であり、外国との間で物々交換を行う際の取引レートという本来の姿(購買力平価)に立ち返って為替相場を考えてみると、国際機関によれば1ドルは150円程度と試算されている。
しかるに足元の為替相場は120円台となっている。
この意味で最近の円高には行き過ぎの面があり、こうした行き過ぎた円高は是正されるべきであると私はかねて主張している。
他方、購買力平価よりも円高という為替相場が絶えず続いていることについて裏面から見てみると、輸出能力が高く、その結果としての4000億ドルを超える外貨準備高にみられるような日本の競争力に対する世界からの高い評価としての側面もある。
また、そのようなレートでも日本経済が世界における重要な地位を占めつづけていることを踏まえれば、日本経済について我々はもっと自信と責任を持ってよいはずである。
自信を回復し、今後も持ち続けることができるようにするためには、構造改革を進め、経済の足腰を強くし、競争力をさらに高めていくことが重要である。
そこで、政府としては、金融システム改革、税制改正、歳出改革、規制改革の四本柱を中心に総合的な対策を盛り込み、特に、足元の不良債権問題については、処理の加速を強力に進めるとともに、セーフティーネットの拡充、産業・金融一体となった対応を推進しているところであり、こうした政府の措置に呼応して、国民1人1人が、自らの改革を積極的に進めることを期待している。
このような中で、構造改革の進展に伴う痛みをより大きくし、国民の努力を一層困難にさせているのが、現在のデフレ状況(物価の持続的な下落)である。
しかし、デフレは、中国の市場経済参入などグローバル化の進展する世界経済全体のバランス調整という側面もある。私は、中国については、デフレの元凶としていたずらに非難するのではなく、中国に世界経済の中での相応の責任を果たしてもらいつつ、共存を図っていきたいと考えている。
とかく、デフレを日本に固有の問題としてのみ位置付け、デフレ脱却をすべての政策に優先させるべきだとの意見も散見されるが、私は、より積極的な金融緩和政策等によりデフレ対策を講ずる必要性は認めつつも、構造改革にも正面から取り組んでいく必要があると考えている。
デフレは確かに経済の体力を弱め、企業の活動が弛緩(しかん)し、失業が増え、購買力が低下し、こうした連鎖がスパイラルとなって、さらにデフレを悪化させている面がある。
だからこそ、その根源となる産業・金融の再生活性化により一層力を入れるべきである。
小泉純一郎首相も生産力向上が重要と強調しているが、企業の体質改善を図ることが重要であり、そのためには、企業が設備投資や新技術の導入を積極的に行い、国際競争力を高めるべきである。
一時的な需要追加を内容とする安易な財政政策では後ろ向きで消極的な姿勢にすぎず、ましてや経済の本質に触れていないびほう策にすぎない。
政治家はまさに本質にまで踏み込んでこうした問題に取り組むべきである。
官民の区別なく国民1人1人が、地道に構造改革を進め、経済の真の意味での体力を強化していくことこそが、我が国経済に対する国民の自信を回復していくための最も近く確実な道であると考えている。