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『ニューズウイーク日本版12・25』は、「世界経済大予測2003」(デフレと恐慌の不気味な足音 グローバル化の幻)という特集である。
そのなかの一つにヘッジファンドの雄ジョージ・ソロス氏が寄稿したものがあるので紹介させていただく。
P.47「資本のパイプは穴だらけ」
『 当局は認めようとしないが、国際金融システムは破綻している。97〜98年に新興市場が危機に陥って以来、資本を必要とする貧しい国々に資本が流れなくなった。
マーケットは資金を「中心」の先進諸国に吸い上げるばかりで、それを「周辺」の途上国に押し出すことができていない。たとえばブラジルは、政府の経済政策も健全で財政状態もよく、貿易黒字も拡大しているのに、まっとうな金利で債務を借り換えることができない。
〈中略〉
全体として見ると、97年の危機以降、「周辺」から「中心」へ資本が流れるという逆転現象が起きている。
これはあくまでも一時的な異常事態にすぎず、いずれ市場により修正されると、当局は主張している。しかし私に言わせれば、根の深い構造的な問題だ。
〈中略〉
しかし、97〜98年にアジアの通貨危機がやって来る。その原因は、IMF融資による「モラルハザード」にあるとされた。IMFが民間の投資家を全面的に救済したため、無分別な融資が促された可能性があるというわけだ。
そこでIMFはそれまでの方針を改めたが、その結果、民会の債権者も融資を回収できない可能性が出てきた。ロシアやアルゼンチンではデフォルト(債務不履行)が宣言される事態となった。確かにモラルハザードはなくなったが、新興市場に投資するリスクは高まった。
一方、新興市場に投資するうまみも減った。IMFが押しつけた抑制的な経済政策のせいで、融資を受けた国は自由な景気対策を行うことができないのだ。新興市場への投資は、しだいに割が合わなくなっており、資本の逆流が起きている。
好景気の時期は、アメリカが世界の巨大な輸出市場となって、世界経済の牽引車の役割を果たしてきた。とくに97年以降は、アメリカのITバブルが新興市場危機による打撃を救ってくれた。
〈中略〉
いま世界経済は、デフレと不況に陥る瀬戸際に立たされている。ブラジルがデフォルトに陥るような事態になれば、一気に大不況に転落しかねない。
世界経済には新しい牽引車が必要だ。IMFの特別引き出し権(SDR)を活用すべきだと、私は考えている。豊かな国が自国に割り当てられたSDRを提供して、貧しい国の開発援助に活用するというのが、私の提案である。
〈中略〉
2015年までに極度の貧困をなくし、すべての人が初等教育を受けられるようにし、保健と医療の水準を大幅に改善するという国連の目標が実現する可能性も出てくる。
もっとも当局は、私の提案を検討すらしないだろう。現在の国際金融システムが破綻していて、修理を必要としていると認めないからだ。しかしそれでは、怠慢と言われても文句は言えない。』