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UBSウォ−バ−グ証券会社・経済調査部チ−フエコノミストの白川浩道さんは今日のポイントとして、@小泉政権の経済政策運営、A日銀総裁人事について(アップデイト)の2点を挙げる。
【1】小泉政権の経済政策運営
<財務省の財政緊縮への思い入れは極めて強い> 支持率が下降を始めた小泉政権の経済政策運営はどのような展開を示すのであろうか。最近の支持率低下は北朝鮮拉致問題の長期化が大きいとみられるが、「今後 、外交等、経済と離れたところで支持率を支える材料がなくなってくれば、国民は、再び、景気低迷の長期化を直視し、さらに支持率を低下させる可能性が高い」と語る 。こうした状況にあって、首相や首相の周囲は、経済政策運営面でどのような策 を打ち出してくるのであろうか。 といっても、財政政策に関しては、今年度補正予算、来年度の税制改革・一般会 計予算、が固まった状況であり、緩やかな引締めスタンスの堅持が確認されたば かりである。財務省の財政緊縮に対する思い入れは極めて強い。財務省の現下の最優先課題は、「中長期的な財政健全化路線を維持しつつ、長期金利の低位安定 を可能な限り長期化すること」にあるとみている。
<企業支援強化と円安誘導が当面の政策に> 従って、「政府が短期的に動かし得る政策は、金融・為替政策と不良債権処理策( 産業再生策)しかない」と言う。そして、現政権が、「支持率のさらなる低下だけは回避 したい」と考えた場合、打ち出される政策は、@借り手企業再生といった名の下 での企業支援強化と、A一段の量的緩和追加による円相場の軟化誘導、の組み合わせであると考えられる。 ここで、@については、銀行の不良債権オフバラ化に伴う損失を最低限に抑えつつ(2次ロスに関する国民負担の発生をある程度認める)、産業再生機構、RCC、政府系金融機関の3つの機関を、全体として「公的バッド・バンク」と位置 付けるとともに、過剰債務企業に対する支援(悪い言葉でいえば延命措置)を講 じていくことになると言う。政府が「自らの介入によって大手企業を潰す」と いったメッセージを国民に発し得る可能性は極めて低い。公的介入による企業の 整理・淘汰が、国民全般の政権支持率を上昇させることはない、とみられるからである。
<円安誘導に関する論理は、ベ ースマネー大量供給による軟化> そうであるとすれば、消去法では、「金融の量的緩和を追加することで為替相場 を円安気味に誘導し、緩やかなデフレ圧力の解消を狙う」しかないのである。国際社会では「ノー・フリーランチ」が常識であり、日本政府は露骨な円安誘導はできないであろう。従って、「積極的な為替介入や日銀の外債購入による円安誘導 は簡単には視野に入らない」と見る。逆に言えば、円安誘導に関する論理は、ベ ースマネーのジャブジャブ供給を加速させることによって日本の実質長期金利を 低下させ(あるいは市場に実質長期金利が低下するという期待を形成させ)、こ れによって円相場に対する下押し圧力を作る、というものしかない。これが、現在の財務省の論理である。
<長期金利低下→円安化→ 株価の小幅上昇> こうしたトランスミッションが実際に成功するかどうか、事前にはなんともいえ ない面がある。なぜなら、実質長期金利の低下が国内株価の上昇期待に繋がれば 、円相場は上昇する可能性すらあるからだ。しかし、「ジャブジャブの資金供 給が基本的に債券市場を介したものとなる以上、株価が短期間のうちに大きく反応する可能性は低い」。そして、そうであれば、ベースマネー供給の一段の拡大は 、基本的に、そして、特に短期的には、「長期金利の低下→為替相場の円安化→ 株価の小幅上昇」と、いった状況をもたらすのではないだろうか。 同社では、「日銀の政策目標が当座預金からベースマネーの伸び率にシフトする 」とともに、「輪番オペのターゲットが年内に月額2兆円〜2.4兆円に増額さ れる」といった見方が、今後半年程度のうちに市場で支配的になる、と予想して いる。「10年債利回りには0.8%割れまでの低下余地が、円ドル相場には132−133 円までの下落余地がある」とみている。(仮にイラク問題や米国経済に対する見方の後退によって円相場が下落しなかった場合、10年債利回りの低下余地は拡大 しよう。)
【2】日銀総裁人事について(アップデイト)
上記のように考えた場合、政府が次期日銀総裁に求めるのは、「ただひたすらベ ースマネーの拡大に努めて欲しい」ということである。消去法で考えれば、次期 総裁候補の最有力候補は、依然として、中原伸之氏(元日銀審議委員、68、首 相官邸・自民党が支持)であると考えざるを得まい。そして、2番手は、尾崎護 氏(元大蔵省事務次官、国民生活金融公庫総裁、67、財務省が支持)であろう 。首相に人事面で進言することができるのは、塩川、竹中の両氏である。「両氏は ともに中原氏を推していると聞いている」。官邸が、日銀総裁人事によって主婦層 の人気取りをしたい、などといった気を起さない限り、同氏に落ち着く確率が依然50%以上はあるとみておきたいと言う。