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「年明け減益」映す株価――日経金融新聞スクランブル
しょせんはハイテク株と銀行株の買い戻しによるアヤ戻し。17日の東京株式相場は10日ぶりに反発したが、多くの市場関係者は胸をなでおろしながらも、上値の重さにはうんざりした様子だ。
「買い手もいないし買い手掛かりもない」（日興コーディアル証券の西エクイティ・マーケティング部部長）。年末に掉尾（とうび）の一振を期待するどころか、どうにかこの程度の水準を維持して年を越してほしいと願わずにはいられないほど、寂しい年の瀬の相場だ。
日経平均株価の年足は今年、3年連続の陰線となるのが確実だが、東証再開以来、4年連続で陰線を引いたことはない。2002年が投資家にとって散々の年だったせいもあるだろう、来年の相場には強気の見方をする市場関係者が少なくない。根拠は様々ありそうだが、その一つが企業業績の回復ぶりだろう。
大和総研の集計では、上場企業の2003年3月期の連結経常利益は73％増え、2004年3月期も18％の増益となる見通し。金利と業績という株価を決める大きな要因のうち、長期金利は1％そこそこの状態が恒常化し、株価の金利感応度は極端に低下している。ならば株価は業績との相関が強まるはず。そもそも企業業績がこれだけの経常増益となりながら、相場が下げ続けるのは理にかなわない、というわけだ。
業績予想が正しければ、今の株価の位置が間違っていることになる。
業績急回復の内容と先行きについて、改めて点検してみる必要がある。
まず、7割増益という今期のＶ字回復は「数字のマジック」とも言える一面がある。大手電機など米国会計基準を採用する企業では、「税引き前利益」を経常利益とみなす集計上の問題である。
大和総研によると、米国会計基準の採用企業が2002年3月期に税引き前利益の段階で計上したリストラ損などを日本基準の特別損益に推計し直すと、ネット損益は約2兆8000億円の損失になる。この巨額損失が比較の基準となる前期の実績数字を押し下げている。
一方、今期予想のネット損益は約7000億円の損失。この数字を除き、つまり米国会計基準の採用企業の決算を日本基準に置き換えて計算すると、上場企業の今期経常増益率は38％とほぼ半減、「実感に近い数字になる」（大和総研投資調査本部）。では先行きはどうか。三菱証券チーフエコノミストの水野和夫氏は「増益率に急ブレーキがかかりつつある」という。
法人企業統計で大企業製造業の経常増益率（季節調整済み）を四半期ベースでみると、7―9月期は前期比5％増と前の四半期の29％増から大幅にペースダウンしている。固定費の削減効果が一巡、売り上げの伸びも鈍ってきたためだ。鉱工業生産統計などでは企業の売上高予想は下方修正が続いており、水野氏は「来年1―3月期には経常利益の前期比伸び率はマイナスに転じる」と予想する。
利益の伸び悩みは13日発表の日銀短観（12月調査）でも見て取れる。
大企業製造業の2003年3月期の経常利益は、上期が9月調査に比べて12ポ イントの上方修正となったのに対し、下期予想は7ポイントの下方修正。
また、業況判断で3カ月後の予想ＤＩ（「良い」―「悪い」）から現状のＤＩ（同）を引いた数値は、輸出環境の急速な悪化などを背景に7.四半期ぶりにマイナスに転じた。
この数値のマイナス圏入りは「経験則から不況期入りのシグナル」（水野氏）という。メリルリンチ日本証券シニアストラテジストの菊地正俊氏が予想する上場企業の来期経常増益率は「ゼロからマイナス15％の間」。今の段階では、株価は来期の減益を見通している。景気と業績が下向きで迎える年明け相場は、持ち合い解消売りなどの需給悪、決算期末を控えた金融機関の経営問題などに揺さぶられる公算が大きい。2003年が悲観相場を修正する年になるとしても、これまで以上に厳しい局面を経験してからになりそうだ。
（編集委員 北沢千秋）
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