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銀行国有化がお望みの竹中平蔵氏(右)。みずほホールディングスの前田晃伸社長は、回避策の資本増強をどう乗り切る?
金融界が激震で揺れた今年もあと10日余り。株式市場がメガバンクを『1強3弱』とするなか、みずほホールディングスは自己資本の増強に必死になっている。『銀行国有化』回避策の一環で、取引先を中心に「すでに3000億−4000億円増資のメドが立った」(金融庁関係者)とされ、「海外の機関投資家にも協力要請をしているようだ」という。来春の金融再生プログラム始動を前に、ひと安心とはいかない。金融庁の特別検査で資産の大アマ査定にメスが入り、追加の資本増強を迫られる可能性があり、年明けに正念場を迎える。
デフレ不況と株価低迷で巨額の含み損を抱えるなか、大手銀行グループが自己資本増強に躍起なのは、先月29日に発表された金融再生プログラムの「作業行程表」が銀行国有化を強く印象づけているためである。
まず、年内に、金融庁内に銀行経営の監視チーム「金融問題タスクフォース」が設置される。
不良債権処理の進展具合を監視するとともに、不良債権処理加速のプロセスで資本不足や経営難に陥り、政府から「特別支援金融機関」の烙印(らくいん)を押された銀行の経営状況を厳しくチェックする。
伊藤達也内閣府副大臣は「特別支援金融機関」の判定条件として、(1)銀行経営者の判断で、新たな公的資金注入を申請(2)過去の公的資金注入で政府が保有する優先株のうち、普通株への転換が一定割合を超えた場合−などを挙げている。
「特別支援金融機関と判定されると、実質的な国有化を意味する。むろん、銀行経営者の責任もキッチリ追及する。この枠組みは、まず国有化ありきの竹中シナリオを見事に反映している」(銀行担当アナリスト)
作業行程表ではこの手順について、「すでに対応可能」とし、国有化の「GOサイン」はいつでも出せる状態にある。
年明け早々にも大手銀行に対する特別検査が実施され、銀行の大アマ査定にメスが入り、その格差が明らかになる。
貸出資産を厳格に査定したうえで、貸出先企業の収益見通しをもとに貸倒引当金を算出する米国流のディスカウント・キャッシュ・フロー方式(CDF)を導入。大手行の不良債権処理損は相当膨らむとみられる。
作業行程表では、来年3月までに銀行の自己資本を厳格チェックする外部監査も導入するほか、過去の公的資金注入で政府が保有する優先株の普通株転換ルールも整備される予定である。
一連の手順は、ぬるま湯にドップリつかっていた銀行にとって、かなり厳しい内容。4大銀行グループの「3弱組」が国有化回避のため、自己資本の増強に走るのも無理からぬことなのだ。
世界最大の資産規模(約150兆円)を誇るみずほの場合はこうだ。
前田晃伸みずほホールディングス社長は「現在は増資の必要はない」と強調したが、年度内の増資検討に方向転換した。
水面下で交渉が行われ、すでに金策のアテが一部付いたという。金融庁関係者が解説する。
「みずほ系の損害保険会社である損保ジャパンなどから、3000億−4000億円調達するメドが立ったと聞く。不良債権処理の進展具合で不十分になることも想定されるため、海外の機関投資家にも資本増強の協力要請をしているようだ」
不良債権処理がどのような形で進んでも耐えられるよう自己資本を増強し、「特別支援=実質国有化」という最悪の事態だけは回避しようとしているというである。
ただ、金融再生プログラムでうたわれている資産査定の厳格化や貸倒引当金の強化、自己資本の充実などがどの程度厳しく実施されるかは、今のところ不透明。なお、追加の資本増強を迫られる可能性がある。
あの『劇薬療法』の竹中平蔵金融・経済財政担当相(51)だけに、フタを開けてみたら、想像を絶する不良債権処理損失を計上する事態に追い込まれ、「現在10・4%の自己資本比率が国際ルールの8%割れ=資本不足=実質国有化」の危機に直面する可能性もある。
市場も、竹中シナリオには疑心暗鬼になっており、ここへ来て「みずほの国有化回避スキーム(枠組み)」なるものがささやかれ始める始末。
外資系アナリストがそれを説明する。
「不良債権処理加速で8%維持が困難になった場合、みずほはまず、みずほコーポレート銀行をグループから分離することになる。大口顧客を扱うコーポレート銀は、それだけ不良債権のボリュームも大きく、処理損失が膨らむためだ」
「コーポレート銀を分離しても、8%を維持できない場合、3度目の公的資金(血税)注入による実質国有化だけは避けるため、国内業務のみ行う4%に甘んじる」
このようなスキームが現実となることは考えにくいが、それでも絵空事と簡単に片付けられないところに、竹中シナリオの怖さがある。
それは、「作業行程表が発表された11月29日以降のみずほのドタバタぶりを見れば一目瞭然(りょうぜん)」(前出の外資系アナリスト)という。
大手銀の9月中間決算が発表された11月25日、みずほはグループ全体の人員削減を従来計画から1000人増の計6300人とし、行員の年収を平均10%カットするリストラ案を発表した。
経営にかかわる重要案件は本来、中間決算発表の席ですべて公表されるはず。だが、4日後の同29日に作業行程表が発表されると、ドタバタで傘下の信託銀行合併や最大5兆円の不良債権を新会社に分離する事業再編策を発表している。
金融再生プログラム始動に伴う「自己資本不足=実質国有化」の恐怖は、ほかの「3弱組」も同じのようである。
UFJホールディングスも、トヨタ自動車など主要取引先に増資受け入れを要請。今年度中に1500億円を新たに資本調達する方針で、メドがつきそうな情勢である。
増資ではないが、三井住友フィナンシャルグループも、ソフトバンク保有のあおぞら銀行株(約49%)の取得に名乗りを上げた。
その後、東京海上火災とオリックス保有の各15%も取得する方針が明らかになり、完全支配を目指している。
自己資本比率が13%と高いあおぞら銀をグループ傘下に収めて、自己資本を強化し、国有化を逃れるのが狙いである。
年明け早々にも予想される金融庁の特別検査に続き、「一寸先は闇」(大手行幹部)と恐れられる金融再生プログラムが本格始動する。
銀行経営者には、オトソ気分にひたる暇は残念ながらなさそうだ。