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ロンドン 12月16日(ブルームバーグ):欧州の大銀行であるドイツ銀行のオフィスは、向こう数カ月で少しみすぼらしくなるかもしれない。絶望に駆られた投資銀行家が壁に頭を打ちつけるために壁紙がはがれ落ち、悩めるトレーダーが小さな円を描いて歩き回るので、じゅうたんはすり切れる。
みすぼらしくても構わない。コスト削減に追われるアッカーマン最高経営責任者(CEO)は、新しいオフィスへの移転はしないと宣言した。もうコンサルタントも雇わないし、出張も収益に直結したもの以外は認めない。コスト意識の高まりは同CEOに限った話ではない。最近では多くの投資銀行家が、1日の終わりにオフィスの電気を消して歩いている。
クレディ・スイス・グループのグルーベル次期共同CEOも、自分の部屋に飾る花やスイス国内の交通費は自己負担と管理職に言い渡した。昨年は、打ち上げパーティの費用を1万ドル(約120万円)までとしていた同じ銀行の話である。
世界で最も浪費の激しい業界が、コスト削減に知恵を絞っている。どんなオフィスにも、コストを削減するちょっとした方法はある。コーヒーを薄くする、小さいメモ用紙を使う、電球は100ワットから60ワットに取り換える、事務用品置き場には新しい鉛筆の代わりに鉛筆削りを置く、デスクの下にペダルを設置して従業員に電気を起こさせる・・・。
最後の1つは冗談としても、だれもが考えつくこんな節約策は無意味とは言わないが、つましい家計のやり繰りでしかない。問題は、投資銀行のコスト削減の中心が今までのところ、このようなやり繰りにとどまっている点だ。彼らは、コスト削減ということを本当に理解しているのだろうか。
金融機関のコスト削減に難しさがあるのは確かだ。病気持ちの医者にかかりたい人はいないし、刑務所に入っている弁護士に相談する人もいない。それと同様に、だれも貧乏な銀行家と取引したいとは思わないだろう。貧乏な銀行家が顧客を金持ちにしてくれることなどあるだろうか。
他業界をお手本に
投資銀行がすべきことは、事業を根本的に再編し、同じ質のサービスをより低価格で提供できるようになることだ。それにはまず、他の業界を手本にするのがいい。自動車、鉄鋼、繊維、そのほか何でも製造業を営む会社に聞いてみることだ。これがコスト削減だと教えてくれるだろう。
製品改良、物流、マーケティング、どれも大切なことだが、製造各社の精力の大半は常に、同じ製品をより安くしかもより良く作り続けることに費やされる。成熟した市場で容赦ない世界的競争にさらされる企業が生き残る道は、それしかない。
人員削減の効果に限界
人員削減は、節約よりも真剣なコスト削減の手段だ。だが部門を閉鎖し、結果として質の劣る商品を提供するだけならば、効果よりも害の方が大きい。フォルクスワーゲンは、車のエアコンを外して、エアコン取り付けの従業員を解雇することによってコストを節減しはしない。製造の各工程を何度も何度も見直し、そのたびに1%の何分の1かのコストを削ることで、低コストを実現している。それは地味で大変な作業だが、成果を生んでいる。
より低コストで、同じ質のサービスを提供できるように業務を再編することは、投資銀行にも不可能ではないはずだ。低成長の環境に最初に適応した銀行が、競争上は優位に立つ。株価は上昇し利益は増大するだろう。体力が劣り、ぜい肉の多いライバルを買収することもできる。
それまでは、銀行の応接室に通されてもミネラルウォーターやランチが出てくることは期待しない方がいい。彼らはコスト削減中なのだから。(マシュー・リン)
(リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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