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ＢＮＰパリバ証券会社・経済調査部チ−フ・エコノミストの河野龍太郎さんは、 「 近い将来にデフレを取り 除く政策が本当に行われるかどうか疑問」として、こう語る。「多くの政策当局者は、資産デフレの害悪は理解できているようだが、わずか1-2％のデフレがこれほど大きな害悪を日本経済にもたらしているとは理解できていない」
＜わずか1-2％物価下落で、実質債務負担が5-10兆円増加＞　デフレは成長の担い手である企業（=債務者） から預金者である家計に強制的な所得移転を引き起こす。企業の債務が名目で500兆円だとすると、「1-2％の物価下落で、実質債務負担の5-10兆円の増加が生じ ている」。同時に、これは家計の保有する預金の実質価値を5-10兆円増加させる。 特に、「金融資産の大半を持つ高齢者に所得が移転される」。「企業→家計」だけ でなく、家計の中でも年金制度や住宅ローン等を通じて「中堅層→高齢者」とデフレによる強制的な所得移転が生じており、デフレは経済の活力を大きく損なっている。つまり、「高齢者はデフレによって大きなメリットを得ている」わけだ。
＜デフレでメ リットを受ける既得権益層は「支持基盤」＞　日本人の年齢のメディアン（中央値）は49歳だが、実際に投票所に足を運ぶの は、もっと年配の方々。「政治家のターゲットは高齢者になる」。当然、支持基盤の利益に反するような政策が積極的に採用されるとは思われない。仮に 「デフレの害悪が政治家に認識された場合でも、デフレを取り除く政策が、政治的イシューに上ってこないメカニズムがここで働いている」わけだ。「デフレでメ リットを受ける既得権益層」が存在するから、デフレ除去策が採用されないと言う。
＜デフ レの既得権益をぶち壊す人を日銀総裁に期待＞　小泉首相は自民党の道路族を敵に回しているようにも見える。「既得権益構造をぶち壊す」とよく言うが、高齢者を敵に回すことは政治的に難 しく、「高齢者層の既得権益をぶち壊す」とはやはり言えない。年金の物価スラ イド制の復活で、来年に1％の年金支給額を減額するが、来年も物価は1％下落 する見込みなので、来年の年金支給額は実質ベースでは高止まりとなる。雇用者所 得がこれほど大きく落ち込み、勤労者世帯の苦境が続く中でも、小泉内閣の支持 率が下がったとはいっても高水準を保っている理由の一つには、「こうした背景が あるのかもしれない」。小泉首相は、速水日銀総裁の後任について「デフレ克服 に向けて、積極的な意向を持っている人が望ましい」と発言しているが、「デフ レによる既得権益をぶち壊す人を日銀総裁に是非期待したいもの」と言う。

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