現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
【道路民営化推進委・最終報告全文】
http://www.sankei.co.jp/news/021206/1206sei113.htm
道路関係4公団民営化推進委員会が決定した最終報告の全文は次の通り。
日本国民は、戦後、廃虚の中から立ち上がった。戦争によってもたらされた惨禍を乗り越え、乏しい資金を元手に努力と勤勉を積み重ねて世界第二位の経済大国としての地位を得るに至った。努力が報われる、勤勉は富をもたらす、そう信じて働いた結果である。また日本国民は優れた製品を輸出することで、国際社会における評価を大いに高め、誇りを持つことができた。戦後の復興と経済成長は日本国民一人ひとりの力の集積であったが、官僚機構もまたよくそれを陰で支えたといえる。
しかし、バブル経済崩壊後、日本国は「失われた十年」と呼ばれる空回りの停滞期に突入するようになる。原因を探れば、官僚機構の変質と肥大化と向き合わざるを得ない。官僚機構は縄張り争いをしつつ、天下りをはじめとする利権を拡張し民間の自由な経済活動を阻害するさまざまな規制を張りめぐらせた。特殊法人、認可法人、その傘下に群がる社団・財団法人、さらにはファミリー企業をつぎつぎと自己増殖させ、国民の利益をむしりとりはじめていたのだった。
そういう中、国民の危機の認識を背景に小泉内閣が誕生し、歴史的使命として構造改革が宣言された。その大きな柱の一つが「民間にできることは民間に」という、小さな政府を実現しながら市場の活力を回復させるための特殊法人等の改革である。約四十兆円もの巨額な負債を抱え込んだ道路関係四公団、すなわち日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団の民営化は特殊法人等改革の天王山として位置づけられた。
道路関係四公団民営化推進委員会は、国民に対して開かれた委員会にすべきと考え、審議のプロセスを原則公開した。約四十兆円もの債務の中心となっている郵便貯金等は国民から借りたものであり、高い通行料金を支払って高速道路を利用するのは国民なのだから当然である。東京湾アクアライン、本州と四国を結ぶ三本の橋、その通行料金は常軌を逸しているが、それだけではなく多くの不採算路線の建設はいずれも密室で作成された非科学的で無責任な需要予測と高コストの建設費がもたらした。
われわれはこうした過ちの原因を審議の過程でできる限り示してきた。そして二度と同じ失敗を犯さないために、国民負担が少なくなるような債務の返済方式と必要性の乏しい道路はつくらない仕組みを考察した。
今後の道路関係四公団は、競争原理を導入するために五つの分割民営化会社(以下、「新会社」という)として再生し、より地域に根ざした、地方に住む人びとの意思が反映される存在に近づく。産業道路として、観光資源として、医療や福祉のために、国民経済的な観点からも高額な通行料金を是正しその引き下げも提案した。
国民が望む国民のための高速道路とは、安い通行料金、顧客に対するサービスの向上、低いコストと採算性に見合った建設である。道路関係四公団の改革は国民に元気をもたらす改革でなければならない。虚偽と不正は常に厳しく糾弾され、まじめに働く者の努力が報いられ、未来に希望を抱くことのできる日本国にするための改革である。
道路関係四公団民営化推進委員会は、存在そのもの、その審議の在り方、その他あらゆる面で民意を代弁する政策意思決定の新しい一つの形を示すべく努めた。
われわれは内閣総理大臣に以下の「意見」を具申する。「意見」に至るまでの具体的な経緯等は以下のとおりである。本委員会は、道路関係四公団民営化推進委員会設置法に基づき、日本道路公団等に代わる民営化を前提とした新たな組織およびその採算性の確保に関する事項について調査審議することとされ、本年六月の設置以来、計三十五回にわたり議論を重ねた。意見は、昨年十二月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」を前提として、それを具体化したものである。
政府においては、この意見を尊重して早急に実施に必要な措置を講じ、遅くとも、二○○四年の通常国会までに関係法律を提出し、二○○五年四月一日に新たな組織を発足させるとともに、政府における施策の具体化に当たっては、本委員会は、委員会設置法に基づき適切に監視機能を発揮する。今後とも、政府および関係四公団に対しては、本委員会に対して積極的な協力を行うよう求める。
このたびの改革の推進に当たっては、これまでの高速道路整備のあり方を抜本的に見直す必要がある。国が取り組むべきことは言うまでもないが、高速道路整備について地方が責任を持ってかかわる必要があり、地方の理解と協力が不可欠である。
1 改革の意義と目的
道路関係四公団改革は、小泉構造改革の大きな柱として昨年から取り組まれている百六十三の特殊法人等改革の範として位置づけられなくてはならない。
甘い交通需要の見通しと建設費の増加等によって膨らんだ約四十兆円に達する道路関係四公団の債務を国民負担ができる限り少なくなるよう返済していくためには、必要性の乏しい道路を造らない仕組みを考える必要がある。
必要性の乏しい道路を造らない。国民が負う債務をできる限り少なくする。道路関係四公団改革のいわば基本理念といえるこの二点を実現する解として、昨年十二月、特殊法人等整理合理化計画において民営化方針が決まったのである。
必要性の乏しい道路建設をストップし、現在の約四十兆円に達する道路関係四公団の債務を国民負担ができる限り少なくなるよう長期固定で確実に返済していくことを第一優先順位とするとともに、民営化の果実を国民に還元するため、民営化と同時に弾力的な料金設定等による料金引き下げやサービスの向上が実現するような、国民全体にメリットのある改革を実現するのが民営化の目的であり、本委員会が達成すべき目標である。
2 基本認識
(1)公団方式による高速道路等の建設は限界
料金のプール制と財投資金等の借入・償還を前提に新規路線を建設する現行公団方式は、もはや限界にきており、道路関係四公団については民営化を行い経営の健全化を図らなければならない。
(2)経営の自律性の欠如
高速自動車国道等の建設は国による施行命令等に基づき実施される仕組みとなっており、組織として自主的な意思決定が行われず、経営責任が不明確となっている。
(3)事業運営の非効率性・不透明性
道路関係四公団は、計画と実績との検証を行わないまま、財投資金等をもとに、次々と新規路線の建設を進めるなど、効率性の観点を著しく欠いた事業運営に陥っている。
また、企業会計原則に基づいた会計処理がなされていないことから、公団内においてコスト意識が働いておらず、とりわけファミリー企業との不透明な取引等により、非効率・不透明な事業運営が行われる結果となっている。
(4)厳しい財務状況
現在の道路関係四公団の財務状況は、本委員会が行った試算の結果、企業として存立していく上では極めて厳しいものとなっている。
3 民営化の基本方針
(1)国民負担の最小化を基本原則とし、五十年を上限としてなるべく早期の債務返済を確実に実施する。
(2)新たな組織は、自らの経営判断に基づき事業経営を行うことにより、自己責任原則の下、民間企業としての自主性を確保する。
(3)民間企業のノウハウの発揮、採算性を重視した事業経営の実施等を実現し、経営の効率化、利用者のニーズに応じた多様なサービスの実現、サービスレベルの向上等を図るとともに、通行料金引き下げ、採算性を確保した上での新規路線の建設に取り組む。また、関連事業を積極的に展開する。
(4) 民間企業としてコスト意識を徹底する。管理コストについては、現在の四公団の維持管理費用を徹底的に見直した上で民営化を行う。
維持・管理の外注業務については、競争を徹底するとともに、新規参入を促進する。現在建設中及び計画中の路線に係る規格構造を見直すとともに、発注・契約方式を改善し、建設コストの縮減を図る。
4 新たな組織のあり方
(1)基本的な考え方
新たな組織は、次の考え方により構築する。
ア 新会社各社の収益調整を図り、長期債務の返済をできるだけ早期に実現するため、保有・債務返済機構(仮称。以下「機構」という)を設立する。機構は、四公団に係る道路資産(新会社に承継されるものならびに国等に譲渡されるものを除く。以下、同じ)およびそれに対応する長期債務を一括して承継する。新会社は機構から道路資産を借り受け、貸付料を支払う。
イ 機構は、道路資産の所有および長期債務の返済、借り換えのみをその業務とする。
ウ 新会社は、パーキングエリア等の資産を承継して発足する。その際、経営管理面での組織としての適正規模を確保するとともに、競争を通じたコスト意識・増収意識の醸成を図るため、地域分割により五つの新会社を設立する。
エ 新会社は、発足後十年を目途に、機構の所有する道路資産を買い取る。この時、機構は解散する。
オ 新会社は、当初国が全株式を保有する特殊会社として発足するが、機構から道路資産を買い取った後は、早期に上場し、最終的には国が保有する全株式を売却することを目指す。
(2)長期債務の返済
1考え方
機構は、新会社から徴収した貸付料収入を債務の元利返済に充当し、毎期確実に期中債務の平均残高を減少させる。
2長期債務の範囲
ア 新会社および機構は、承継資産(*)にかかる長期債務を承継する。
*新会社および機構が承継しない主な資産は、次のとおり。
・営業損益で赤字が生じていることが明らかな路線に係る道路施設
・建設中の路線または区間に係る道路施設のうち、新会社が残事業を実施しないもの
・「バイパス型」の一般有料道路のうち、新会社発足までの間に国等に譲渡されたもの イ 建設仮勘定に係る長期債務については、すべて機構が承継する。
ウ 本州四国連絡橋公団の負担している長期債務のうち、早期に処理することとされた債務については、国等が承継する。
3債務返済状況の監視
ア 債務返済を確実に進めるため、機構は、移行時に毎年の債務残高の目安を定め、これを順守する責務を負う。とくに、移行から十年後の債務残高については、目標を定め、機構はこれを順守する。
イ 機構は、国に対して、四半期ごとに、債務の期中平均残高等財務状況を報告する。国は、確実に債務返済が進むよう機構に対して指導する。
4本州四国連絡橋公団に係る債務の処理等
ア 料金収入、国の出資、地方自治体の出資(現行よりも十五年延長)および他の道路関係公団の道路料金の活用、ならびに所要の債務切り離しにより、本州四国連絡道路の通行料金の大幅な引き下げ(二分の一程度)と債務の適切な処理を同時に進める。
イ 債務の切り離しの財源は、国の道路特定財源とする。債務の切り離しについては、次の五カ年計画の期間内において早期に処理することとし、その額については二○○三年度予算編成過程において、政府において適切に決定する。
ウ 民間債務の返済条件等の変更については、市場の状況も視野に入れて柔軟に行う。
(3)新会社の具体的内容
1事業
ア 新会社は、自動車道事業(*)およびこれに付帯する事業を経営する。
*現在、四公団が所有する高速自動車国道等についての運営、管理等、ならびに道路建設等をいう。
イ その他の事業については、自動車道事業の遂行に支障のない範囲において、新会社の経営の自由、自主性が発揮し得るよう、事業範囲をできるだけ広げることが必要である。
2資産
ア 新会社は、パーキングエリア等(*)の資産を承継する。
*「パーキングエリア等」のイメージ
・休憩施設(パーキングエリア、サービスエリア等)、給油所等
・有料自動車駐車場
・トラックターミナル
・インターチェンジ等
・管理施設(本社、支社等に係る土地、建物等)
・研修施設、社宅・寮等の福利厚生施設
・巡回用車両等
イ 日本道路公団から関連会社への出資株式については、原則として当該関連会社の事業エリアを管轄する新会社が承継する。
3債務
新会社は、承継資産に係る長期債務を承継する。
4金融・税制措置
ア 資金の円滑な調達を図るため、上場までの間に限り、政府保証等の必要な措置を講ずる。
イ 当初機構が、買い取り後は新会社が所有することとなる道路資産に係る固定資産税については、国鉄改革に際して旅客鉄道会社等に適用された特例措置等を参考にしつつ、大幅に軽減することが必要である。
5国による監督規制
新会社の経営者が経営について権限と責任を持ち、経営の自由、自主性を発揮できるよう、人事、財務、事業運営等に対する国の監督規制は、必要最小限にとどめる。また、現行有料道路の新規建設に係る監督業務を担当する部局以外の部局が、新会社を監督する。
6ディスクロージャー
新会社は、上場企業と同程度の財務情報等の公開を行うよう努めるものとする。
7民間企業経験者の登用新会社の経営陣には、民間企業経験者(官庁での管理職経験がない者)等を複数登用する。
(4)機構の具体的内容
1基本的な考え方
新会社の経営に機構が介入することにより、新会社の経営の自主性を阻害し、または経営責任を不明確なものにすることのないよう、機構の業務等を次の考え方に基づき厳格に法定する。
2業務
ア 機構は、営利を目的とせず、法令で定める一定の貸付料を徴収するとともに、債務の返済、借り換えのみをその業務とする。機構による経営介入の排除、新会社の経営の自主性の確立などの観点から、「機構から新会社、国等への新規投資資金の一部の支出」は機構の業務とはしない。
イ 設備投資の決定についての判断は経営の重要な要素であり、新会社の自主的判断と責任の下に行われるべきものであるので、高速自動車国道等の維持更新工事および改良工事については関係する新会社が自ら行う。その場合、維持更新工事等により形成された資産は、新会社に帰属する。なお、大規模な災害復旧の取り扱いについては、危険分散の必要性も含め、新会社の自立性を尊重して政府において検討の上決定する。
ウ 機構は新会社各社から支払われる事務費によって運営される。この事務費は実費相当額とし、機構はこれを他目的に流用できない。長期定額の貸付料は、全額債務の元利返済のみに充当する。
エ 機構は、財務諸表、事業報告書(会計に関する部分に限る)および決算報告書について、会計監査人の監査を受けなければならない。
オ 機構は、必要最小限の職員で運営するため、機構はその所有する資産管理等の事務処理を新会社各社に委託するなどの方策をとる。
3資産
ア 営業損益で赤字が生じていることが明らかな路線(*)に係る道路施設については国等に譲渡(**)し、機構は所有しない。
*中部縦貫自動車道(油坂峠道路)、富津館山道路および深川留萌自動車道をいう(二○○一年度決算による)。
**譲渡の態様(有償・無償の別、有償の場合は譲渡価額等)については、従前の例による。
イ 「ネットワーク型」(*)の一般有料道路については、高速自動車国道と一体として取り扱うこととし、機構が承継する。「バイパス型」(*)の一般有料道路については、原則として、国、地方公共団体等に譲渡する(**)。
*現行の一般有料道路は、高速自動車国道と一体となって機能する路線(ネットワーク型)と、単独に機能する路線(バイパス型)に区分する。
**譲渡の態様(有償・無償の別、有償の場合は譲渡価額等)については、従前の例による。
ウ 新会社発足時に供用されている路線または区間に係る道路施設は機構が承継する。
エ 建設中の路線または区間に係る道路施設については、新会社が残事業を実施するものを機構は承継し、その他は国等に譲渡する。
オ 新会社発足後に新規に建設が開始された路線または区間に係る道路施設については、機構は所有しない。
カ パーキングエリア等については新会社が承継し、機構は所有しない。
キ 機構は、企業会計原則に基づき、減損会計の手法を活用するなど厳格な会計処理を行う。
4債務
ア 機構は承継資産に係る長期債務を承継する。
イ 建設仮勘定に係る長期債務については、すべて機構が承継する。
ウ 出資金の取り扱いについては、別に検討する。
5貸付料
ア 機構が新会社から徴収する貸付料の総計年額は、承継債務の総額を基に、約四十年間(*)の元利均等返済をベースとして算定する。
*返済期間については、新会社発足までの間に、企業会計原則に基づいて適正な前提条件により今後の収支見通しを作成した上で、五十年を上限とし、その短縮を目指して設定する。
イ 新会社各社が負担する貸付料の額(*)は、収支見通しを見極めた上で各社の収益性に著しい格差が生じないよう検討し、長期定額として設定する。
*新会社各社が支払う貸付料の額は、アにより算定される貸付料の総計年額を、各社の収益力に基づき案分した額とする。この際、貸付料を算定する基となる債務総額は、各公団由来の債務ではなく、四公団の承継債務の合計額とする。
ウ 毎年の貸付料とは別に、新会社が、経営の効率化等によって生じた余裕資金を機構の債務返済に充てることができるような仕組みを検討する必要がある。このため、機構は、債務残高を新会社ごとに管理する(*)こととし、債務返済のための臨時の受け入れ額についても会社別に管理して、買い取り時の価額に反映させるものとする。
*機構は、新会社ごとに債務残高を管理する「区分経理」を行う。具体的には、発足時に新会社ごとに債務額を定め、徴収した貸付料、債務返済のための臨時の受け入れ額、国等の出資金等を、該当する新会社ごとに計上し、買い取り時の価額に反映させる。
6金融・税制措置
ア 借り換え資金の円滑な調達を図り、金利変動による債務返済への影響を最小限にするため、債券に対する政府保証等の措置を講ずる。
イ 債務の返済をできるだけ早期に行わせるため、機構は法人税を負担しない。
ウ 当初機構が所有することとなる道路資産に係る固定資産税については、国鉄改革に際して旅客鉄道会社等に適用された特例措置等を参考にしつつ、大幅に軽減することが必要である。
7機構の解散
ア 新会社は、経営基盤の確立等株式上場に向けた諸条件が整ったと判断し次第、機構が所有する道路施設を買い取るものとし、その時点で機構は解散する。
イ 資産の買取りは、十年を目途にこれを行う。
ウ 買い取りの具体的条件等はあらかじめ法定する。
・買い取りの手続き−新会社の申請により開始される
・買い取り価額−新会社ごとの債務残高を基準に決定する
・買い取り方法−対象資産の買い取り価額として同額の債務を承継する
5 地域分割について
(1)基本的な考え方
経営管理面で組織の適正規模を確保すること、地域の実情に即した運営が行われること、競争を通じコスト意識や増収意識の醸成、サービスの向上を図ることなどを総合的に考慮し、日本全国を五つの地域に分割して新会社を設立する。その際、キャッシュフローをベースに、利益率等について新会社各社で極端な差が生じないようにする。
(2)日本道路公団
日本道路公団については、県境等を考慮し、三つの事業エリアに分割して新会社を設立する。
(3)全国5分割の概要具体的な地域分割のイメージは、次の通り。
東日本−北海道、東北、新潟、関東
拡大首都高速−首都高速、第三京浜道路、横浜新道、京葉道路、東京湾アクアライン等
中日本−東海四県(東名、名神、中央道全線)
拡大阪神高速−阪神高速、近畿道、阪和道、関空道、名神の一部等
西日本−近畿、北陸三県、中国、本四道路、四国、九州、沖縄
6 通行料金について
(1)民営化の成果としての通行料金引き下げについて
(2)通行料金の在り方について
ア 新会社が徴収する通行料金については、能率的な経営の下における適正な原価を償い、かつ適正な利潤を含むものとし、新会社の経営者が自主的に決定することを基本とする。
イ 「ネットワーク型」の一般有料道路については、高速自動車国道と一体として取り扱うこととし、通行料金については、料金水準や徴収期間等について、高速自動車国道と同様に取り扱う。
ウ 新会社に効率化インセンティブを働かせるため、料金に対する規制については、上限価格制の導入などを検討する。
(3)首都高速道路公団および阪神高速道路公団
首都圏エリアおよび阪神圏エリアにおいては、現在の首都高速道路公団、阪神高速道路公団の管轄する路線を核として、それぞれのエリアにおける都市高速道路等のネットワークが機能的に維持・発展できるよう配慮して決定した事業エリアを有する新会社を、それぞれ設立する。
(4)本州四国連絡橋公団
本州四国連絡橋公団については、日本道路公団を分割した新会社のうち近接の新会社と統合する。
民営化の目に見える成果として、通行料金の平均一割引き下げを民営化と同時に実施する。国民にとって大きな負担となっている高額な通行料金は、採算性を無視した野放図な建設が原因である。非効率で無制限な建設のあり方が改められ、その結果として高止まりしている通行料金が引き下げられることこそ、国民が今回の改革に期待している成果なのである。
よって、新しくできる五つの新会社各社は、夜間料金の半額割引や通行台数一万台以下の道路の通行料金の三割引き下げ、ターミナルチャージの撤廃など、実情に応じた弾力的な引き下げ策を講じて、平均で一割の通行料金引き下げを民営化と同時に実現する。通行料金は新会社発足時の水準より引き上げない。なお、本州四国連絡道路の通行料金は、債務の処理と同時に大幅な引き下げ(二分の一程度)を進める。また、東京湾アクアラインの通行料金については大幅な引き下げを検討する。
7 今後の道路建設について
(1)基本認識
甘い交通需要の見通しと建設費の増加等によって膨らんだ約四十兆円(二○○一年度末)に及ぶ長期債務の返済は、新会社による最大限の経営効率化と大幅な租税の軽減措置を前提としても、例えば金利の上ぶれリスクなどを考慮すれば決して容易ではない。そうした現状の厳しさからすれば、既存路線の通行料金に依存して(機構への返済原資を一部流用して)従来通り建設を続けようとするのは容認し得ない。
まして、建設中の路線や建設予定路線の多くが採算性の点で極めて厳しいものばかりであることを考えると、それはいわばガラス細工のような既存債務の返済スキームに新たな負荷をかけるに等しく、そうした考え方は採るべきではない。したがって、今後の道路建設、とりわけ財源問題については、民営化の目的・意義を踏まえた上で、全く新しい仕組みを構築し、その下で当事者間の負担のルールを定めることが必要である。
(2)今後の道路建設について
ア 新会社発足までの間、各公団は、本委員会において取りまとめた基準による個別路線の優先順位に基づき、重点的な予算配分を行う。
イ 新会社発足時における建設中の路線または区間に係る道路施設については、新会社が残事業を実施するものを機構は承継し、その他は国等に譲渡する。建設仮勘定に係る長期債務については、すべて機構が承継する。
ウ 今後の道路建設に関し、新会社は、公益性にも配慮しつつ、採算性の範囲の中で当該自動車道事業(路線または区間ごと)に参画する。その場合、新会社は、当該事業への参画について自社の経営状況、投資採算性等に基づき判断し、自主的に決定する。なお、工事により形成された資産は、新会社に帰属する。
エ 新会社は、その設立目的に照らし、今後の高速道路の建設に関し相応の役割を果たすべきであり、本委員会としては、そうした点を配慮の上で新会社が設備投資の意思決定をすることを希望する。
オ 新会社の採算を超える部分について、その財源は国および地方公共団体が負担する。このため、高速自動車国道や都市高速道路の建設において、合併施行方式による建設など国、地方公共団体等の費用負担等を前提にした新たな制度を、政府において早急に検討する。その際、本委員会での審議経過を踏まえ、新会社に対する新たな税制・納付金制度の導入、貸付料の増額等による機構からの支出またはそれに類する建設資金の拠出方式は行わないこと。また、財投資金の借り入れを前提とした道路建設は行わないこと。
カ 新会社は、国等の委託を受けて建設工事を行うことができる。この場合、新会社は資金負担をしない。
キ 新会社が行う道路建設等の設備投資資金は、新会社が自ら調達する。資金の円滑な調達を図るため、上場までの間に限り、政府保証等の必要な措置を講ずる。ただし、新会社の資金調達には市場規律が働くようにするため、財投資金の活用を認めない。
ク 現行の道路整備特別措置法に基づく施行命令等により高速道路の建設を強制する仕組みは廃止し、これに代わる上記ウおよびオ〜キの内容を満たす新たな制度を、地方公共団体の意見を聴取した上で政府において早急に検討する。
ケ 上記の条件を踏まえた今後の道路建設の制度設計については、資料2のようなパターンが考えられる。政府において具体的な制度設計を検討する場合に、資料2に示す採用し得るケースに沿うよう提言する。また、採用すべきでないケースについても資料2に示す通りである。
(3)将来交通需要推計について
本委員会の調査等により、国土交通省が作成している将来交通需要推計について一部不適切な部分があったことが判明した。当該推計は、長期にわたる予測を行うものであり、今後は、最新のデータ、知見、科学的な根拠等に基づき、社会経済動向等の変化に対応して逐次見直しを行い、より信頼性や精度の高いものとする必要がある。
8 「ファミリー企業」の改革
(1) 基本認識
本意見において「ファミリー企業」とは、出資関係はないものの、業務上のつながりが極めて強い公団関連企業をいう。実態は公団OBの天下り先であり、公団からの外注業務を独占してきた公団の利益共同体である。
公団本体が巨額の債務を抱え、国民に高額な通行料金と税金の負担を求める一方で、ファミリー企業は道路ビジネスを独占し汗をかかずに利益をあげる構造を作り上げてきた。国民は、公団本体とファミリー企業の両者から負担を強いられてきたのである。ファミリー企業の改革は、公団の高コスト体質の改革そのものであり、新会社の経営資源の確保という観点で極めて重要である。今回の改革にあたっては、ファミリー企業改革は公団改革の根幹を成すという位置づけで、臨む必要がある。
(2)実態調査の結果報告
本委員会はファミリー企業の実態調査を行い、その結果、これまで「民間企業」であることを盾に巧妙に隠ぺいされてきた公団とファミリー企業との構造的な問題点を資料3に示すとおり捕捉することができた。日本道路公団OBが七百社に二千五百人、首都高速道路公団OBが三百社に五百三十人、阪神高速道路公団OBが百五十社に二百八十人、本州四国連絡橋公団OBが九十社に百五十人天下っていることが判明した。ほぼ全社が四公団と取引関係があり、公団OBの受け入れ人数と公団等からの業務受注に明白な相関関係がみられた。OB受け入れ先企業に優先的に業務を発注しており、業務の必要性というよりもOBの雇用の維持という目的から、これら企業が存在していると考えられる。
ファミリー企業間では、相互に株式を持ち合っている実態が確認された。くわえてファミリー企業間での受注業務は複雑に入り組んでおり、この資本と業務が網の目のように絡みあう癒着構造の解消が早急に必要である。
(3)改革の方針
こうした基本認識を踏まえたうえで、以下に示す改革方針を提案する。本委員会は新会社発足までの間、ファミリー企業の改革の監視を継続する。
1維持補修等の業務
ア 新会社は、自動車道事業にかかる原価を最小にすることで通行料金の引き下げに努め利用者の利益を守る公益的な使命を担っている。このため自動車道事業にかかる維持補修、料金収受、交通管理、保全点検などに要する管理費は徹底した合理化を行い最小限にとどめることが求められる。
イ しかし従来はこれら維持補修等の外注業務を、公団本体と利害が一致するファミリー企業が独占していたため、必要以上に高い外注費が支払われファミリー企業に不自然に利益が蓄積される傾向にあることが本委員会の調査等により明らかになった。
ウ よって、維持補修等の業務の外注にあたっては、外注先の選定を厳正な競争条件を確保した上で行い、市場競争原理によってファミリー企業の淘汰(とうた)・再編が図られることを基本とする。
エ 各公団は、高コスト体質の原因であるファミリー企業との不公正な癒着構造をただちに解消する。二○○三年度以降、各公団はOB受け入れを通じて人的つながりの強い企業とは取引関係を極力持たないよう努めることとする。
ただし、子会社等への外注およびインハウス化がより合理的であると新会社が判断する場合はそれを妨げるものではない。なお、子会社化等を行う場合には、ファミリー企業に対する国民の厳しい批判および特殊法人改革の趣旨、現在の四公団の組織・人員規模のスリム化の必要性を踏まえ、厳正に行う。
オ 四公団は、現在外注している維持補修等の業務について、管理実績等の入札参加資格の要件を二○○二年度内に撤廃する。また、新規参入の目標を設定・公表し、外注業務についての新規参入を促進する。
2 関連事業
自動車道事業との区分経理を明確に行う観点から、関連事業は新会社の子会社において行うことが望ましい。このために必要な諸手続きを、新会社発足までの間に速やかに実施する。
3 財団法人の取り扱い
現在、四公団の業務に関連して財団法人(*)が所有しているパーキングエリア等における建物等については、新会社が実質的に保有することができるよう、所要の手続きをとる。これにより財団法人は解散する。
*日本道路公団−(財)道路サービス機構、(財)ハイウェイ交流センター
首都高速道路公団−(財)首都高速道路協会
阪神高速道路公団−(財)阪神高速道路協会、(財)阪神高速道路利用協会
本州四国連絡橋公団−(財)本州四国連絡橋道路管理協会
(4)民間とのアライアンス
新会社が関連事業や新規事業を展開する上で重要なことは、顧客利便性の向上と収益の最大化という視点である。経営陣に経験者を登用することによって、広く外部の意見を取り入れることは当然行われるべきである。
さらに、新会社発足までの間に、ファミリー企業間および公団との間で相互に利害が絡み合っている癒着構造を素早くスムーズに絶つという観点からも、広く民間から事業アイデア、提携のプランニング提案等を積極的に受け入れ、先入観なしに良い提案は採用していくなど、民間の知恵を存分に利用する。
9 改革の推進の手順及び移行時期等
(1)直ちに取り組むべき措置
1新会社発足までの間の高速自動車国道等建設の計画見直し
道路関係四公団は、新会社発足までの間の工事について、本委員会においてとりまとめた基準による個別路線の優先順位に基づき、建設の計画を見直し、重点的な予算配分を行う。
2民間企業経験者の登用等
直ちに、道路関係四公団の現首脳陣に代わり企業経営について豊かな経験と知見を有する複数の民間人を登用する。また、二○○二年度決算、遅くとも二○○三年度中間決算から公認会計士等の活用による民間企業の会計原則に基づく財務諸表を作成する等、民間企業経験者の知恵を導入し、民営化に備える。
3コスト削減計画の作成
道路関係四公団は、新会社発足までに管理費(人件費等の一般管理費を含む)を、具体的な業務の必要性に立ち返って徹底的に見直し、おおむね三割縮減することを目指す。また、規格構造等の見直し、発注・契約方式の見直しに沿った建設コスト(人件費を含む)の削減計画を策定する。道路関係四公団は、これらを踏まえて、役員退職金の廃止・見直しを含む総額人件費抑制計画を盛り込んだコスト削減のための計画を二○○二年度内に作成する。
4入札資格要件の撤廃
道路関係四公団は、現在外注している維持補修等の業務について、管理実績等の入札参加資格の要件を二○○二年度内に撤廃する。また、新規参入の目標を設定・公表し、外注業務についての新規参入を促進する。
(2)移行までの間に取り組むべき措置
1民営化の成果としての通行料金引き下げ
民営化の目に見える成果として、通行料金の平均一割引き下げを民営化と同時に実施する。
2パーキングエリア等における建物等の移管
現在、道路関係四公団の業務に関連して財団法人が所有しているパーキングエリア等における建物等については、新会社が実質的に保有することができるよう、所要の手続きを進める。これにより財団法人は解散する。
(3)企業会計原則に基づく財務状況の把握
現在、二○○三年九月を目途に道路関係四公団において進められている企業会計原則に基づく財務諸表の作成により、本委員会は、各公団の財務状況を正確に把握し、同時に各公団は、財務諸表等を公表する。
(4)改革関連法案等に対する監視機能の発揮
改革関連法案、関連政令・省令案等の作成に対し、本委員会は、委員会設置法に基づき適切に監視機能を発揮する。
(5)改革の推進体制
この改革を円滑かつ確実に実施するため、政府および道路関係四公団においては、速やかに必要な体制をしく。
(6)移行時期
道路関係4公団の民営化は、2005年4月1日に実施する。